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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 頑固な私と共に歩んでくれた恩師・小出監督

マラソン指導者・小出義雄監督の逝去によせて

 有森裕子=元マラソンランナー

押しかけ入部で監督を困らせたリクルート時代

 1992年バルセロナ五輪(銀メダル)、1996年アトランタ五輪(銅メダル)と、2度のオリンピックの女子マラソンでメダル獲得へと私を導いてくださった小出監督との出会いは、所属先であったリクルートの陸上部でした。

 日本体育大学時代、陸上選手として芽が出なかった私は、卒業後は教職を目指していました。ところが、急遽出場した大会で思いがけず好タイムを出して優勝したことで、国体や五輪に出場したいという思いが膨らみ、実業団に進路を変更したのです。

 そこで、当時、設立から日が浅かったリクルートの陸上部に入りたいと、指導者を務めていた小出監督に入部を希望する手紙を送りました。小出監督の実績や人となりもよく知らないまま、リクルートに入りたい一心で直訴したのです。1988年の秋のことでした。

 面識のない、無名の選手からの突然のお願いですから、案の定、最初は断られました。800mを走らせても中学生のトップランナーより遅かった私は、確実に他の選手たちの足手まといになるだろうと監督は考えたそうですが、無理もありません。

 しかし私はあきらめきれず、合宿所まで押しかけて直談判を続けました。監督はさぞかし困ったと思いますが、最終的には私のやる気を買って、入部を認めてくださいました。後で聞いたところ、「ダメだったら、マネージャーにすればいいか」と思われていたようです(笑)。

 スピードがなく、他の選手についていけない私に、監督は、「何時間かかってもいいから、出したメニューは全部こなせ」と指示しました。私はそう言われたことがうれしくて、どんなに時間がかかっても、監督のメニューはすべてこなしました。それができたのは、「リクルートという実業団で、小出監督の下で走ると決めたのは自分なのだから、自分の行動には責任を持とう」と決意していたからです。

 夢だけは大きく、ランナーとしての素質はなかった私でしたが、監督は「そんな選手が大きな目標を達成するためには、常識にとらわれた練習法ではダメだ」とおっしゃいました。朝、15km走った後に、50kmを走るといった凄まじい量の練習でしたが、必死にくらいつき、練習量では誰にも負けていないという自信をつけることができました。

練習方針をめぐって衝突したことも

 1万メートルのトラック競技からマラソンに転向し、本格的にマラソン練習を始めてからは、出されたメニューをただこなすのではなく、「何を意識して走ればいいのか」といったトレーニングの意味も監督に聞くようになりました。小出監督は私が納得しないと練習に取り組めない気質だと分かっていたので、丁寧に説明してくれました。

 練習に対して生真面目で頑固だった私は、監督と衝突することもありました。監督はお酒の席で、「高橋はこんな選手だった」「鈴木はあんな選手だった」と、それぞれの選手との思い出をよく話すようでしたが、私については、そうしたケンカのエピソードも冗談交じりに披露していたようです(苦笑)。

 特に覚えているのは、1992年のバルセロナ五輪で銀メダルを獲得した後のことです。同大会で金メダルを獲得したロサ・モタ選手のように力強く走れるようになりたいと思った私は、帰国後、初動負荷のウエイトトレーニング(*1)を始めました。

 当時、小出監督は3カ月ほど現場から離れていたのですが、チームに帰ってきたら、私が勝手に自分のポリシーに反するトレーニングをやっているものですから、怒り出してしまい…。私は自分の考えを伝えて話し合おうとしましたが、どちらも主張を曲げず、平行線のまま言い合いになってしまいました。ムキになった私は思わず「監督、(ウエイトトレーニングについて)もっと勉強してください!」と火に油を注ぐようなことを言ってしまったのです。それから監督は、「あいつはな、俺に『もっと勉強してください』と言ったんだよ!」と周囲に話すようになったそうです(笑)。

*1 ワールドウィングエンタープライズ代表・小山裕史氏が考案した独自のウエイトマシンを使ったトレーニング方法。筋肉を柔らかくし、関節の可動域を広げてケガを防止する効果や、瞬発力の向上などが期待できる。

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