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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 心拍数を上手に利用して「オーバーペース」を防ごう

毎朝の計測習慣が効果的な練習につながる

 有森裕子=元マラソンランナー

プロのトレーニングを安易にまねするのは危険

 といいつつ、実は、私自身は現役時代、走りながら心拍数を測ったことはありません。体にいろいろな機器をつけて走るのが嫌いだったというのもありますが(笑)、それでも、走る前後の心拍数のチェックは行っていました。

 よくやっていたのは、ランの合間に心拍数を計りながら行うインターバルトレーニングです。1本2000mほど走った後に400mのジョグをして、呼吸を整えながら手首の脈を1分間計測します。計測はおよそ5分間に3回くらい行います。

 計測が終わると再びスタート地点に戻り、合計10本ほど走りますが、1本おきに同じように心拍数を計り、何分で平常値に近い脈拍に戻るのかを確かめます。心拍数の回復力が早いほど疲れていないことを示し、日々のトレーニングによる心肺機能の成長度合いが分かります。一方で、負荷が足りないとも捉えられるので、さらに設定スピードを上げるなどして負荷を高める場合もあります。

 特に、レースの準備で心肺機能を上げて追い込まなければいけない時期は、ウォーミングアップとなる60分間ジョグの心拍数が120だとすると、本練習では180ぐらいをキープするような高い負荷をかけたトレーニングを行います。数字だけ見てもつらいことが伝わると思いますが、このようにプロのアスリートは、心肺機能を鍛え、競技力を向上させるための目安として心拍数を使っています。

トップアスリートは心拍数を目安に高い負荷をかけたトレーニングを行う。(©ammentorp-123rf)

 ちなみに、私の現在の安静時心拍数は1分間で55ぐらいですが、現役時代は45ぐらいでした。五輪のメダリストには心拍数30という女子選手もいました。そうした世界で戦うトップランナーの心拍数を知っていれば、トップランナーと全く同じメニューや強度を、市民ランナーである自分たちがそのまままねするのは危険だと分かるはずです。

 プロのトレーニングに安易に倣うのではなく、あくまでも、自分の体や現状に合ったトレーニングを意識することが大事になります。まずは毎朝、心拍数を計って自分の状況を知る習慣をつけることから始めてはいかがでしょうか。

効果的なトレーニングを行うための心拍数活用法
1.毎朝、起床時に心拍数を計測する
安静時の心拍数をより正確に知るために、起床時の心拍数を計ろう。毎朝同じ状態で計れば体調の変化の目安になり、その日のトレーニング内容を考える際の参考になる。

2.トレーニングの強度を決める時の目安にする
「競技力向上」「心肺機能強化」「脂肪燃焼」といった目的別に目標心拍数を設定し、それを目安に走れば効果的なトレーニングが行える。

3.心肺機能の回復度合いを把握する
インターバルトレーニングを行う際、1本走り終えた直後に心拍数を計りつつ、ジョグで息を整えながらスタート地点に戻り、走る直前にも計る。走る前に計った数値が安静時の心拍数に近いほど、心肺機能の回復力が高まっていることが分かる。

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子(ありもり ゆうこ)さん
元マラソンランナー
有森裕子(ありもり ゆうこ)さん

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

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