ゆっくりした動作でフォームの基本を確認し、終盤の崩れを防ぐ
2つ目の目的は、「マラソン終盤のフォームの崩れを防ぐ」ことです。マラソンの終盤になれば、筋肉疲労により腰の位置が落ちてきたり、上下動が大きくなったり、腕の振りが小さくなってきたりと、フォームは自然と崩れます。それを防ぐためには、長い距離を踏むトレーニングでフォームが崩れる状況を作り、その上で正しく手足を動かすことを意識することが効果的です。もちろん、長時間走っても筋肉が疲れにくいよう、体幹トレーニングで体を鍛えることも必要でしょう。
しかし、そもそも正しい動きが身についていなければ、そうした練習をすることもできません。そのためにも、普段から、パーツ(各部位)の動きをしっかり意識・確認しながら、走るための正しい動きを身につけることが重要になります。太ももの上げ下げや、腕の振りといった大きなパーツは、走っている最中でも比較的意識しやすいですが、足首や指先、背筋、姿勢といった細かなパーツの動きは、なかなか意識しにくいものです。
「走の基本」は、ゆっくりとした動きの中で、そうした細かなパーツを一つひとつ確認し、意識できます。毎回走るトレーニングの前に取り入れ、ゆっくりとした動きからリズミカルな動き、そしてスピードのある動きに移行していくような練習をすれば、次第に腰の位置が安定して推進力が増すフォームに近づいていくはずです。また、長距離の終盤にフォームが崩れてきても、修正しやすくなるでしょう。
「走の基本」は、「速く走るために最も効率の良い動き」を身につけることでもあります。ランナー一人ひとりの骨格や筋力は異なるので、その人にとって最も効率のよい動きはこれだ!とは、一概には言えません。しかし、腰の位置を高く保つことや、上下動が少なく、スムーズに重心の移動ができるといったことは、すべてのランナーにとって、速く走るために必要なことです。腰の位置などを意識するちょっとした時間の積み重ねが、自身の限界を超えてタイムを伸ばすカギにもなります。
今回は、「走の基本」の中でも、一般ランナーにぜひ取り入れてほしい最もベーシックな動きをご紹介します。