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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 見ると誰もが驚く!「パラリンピック」の魅力

腕の力だけで疾走する車いすランナー、盲人ランナーと伴走者の“絆”

 有森裕子=元マラソンランナー

具体的な「言葉」で誘導する難しさ

 当日は突風が吹いていて、決してベストコンディションではなかったのですが、「2時間かかってもよいから完走できたらいいですね」と目標を話しながら、一緒にスタートしました。

 伴走の何が難しいかといったら、明確な案内をするための「言葉」です。特に私は走りながらコースを説明するときに、右と左をよく言い間違えてしまいます(苦笑)。盲人ランナーと伴走者の腕をつなぐ、“きずな”と呼ばれる1mほどのロープの輪を引っ張りながら誘導するのですが、「あと〇キロ先を右に曲がりますよ」というナビゲーションは意外に難しいのです。

 例えば、「えーっと、あれです、あっち。左、じゃなかった、右を曲がります」「前方にわだちがありますよ。えっと、もう少し走ったら」などといった具合…。「もう少し」と言われても、盲人ランナーにはどれぐらい先のことなのか、想像できません。レースも終盤にかかれば、ただでさえ疲れているのに、分かりにくい説明をされると、盲人ランナーの方もイライラしますよね。ですから、瞬時に様々な情報を具体的かつ分かりやすく伝えることが大事になります。それも、自身も走り、ペースも調整しながらですから、とにかく大変。頭と体のすべてを使うんです。

 掛ける言葉は、ランナーの障がいの程度によって使い分ける必要もあります。弱視の方はうっすらと見えていますし、後天性の方は、「菜の花」「信号」「自動販売機」などの物体はもちろん、「黄色」といった色もどんな色なのか、ある程度イメージできます。だから「沿道に菜の花がきれいに咲いていますよ。一面黄色できれいですよ~」という説明で情景が伝わります。

 しかし、生まれつき全盲の方は、手で触れることで花の形は想像できますが、色はイメージできません。「黄色」と言ってもどんな色なのかが分からないのです。そうした方には、「菜の花がたくさん咲いていますよ。一面に咲く菜の花のおかげで、景色がとても明るいです」などと、言葉を選んで説明しなければなりません。

伴走者の醍醐味とは「人のために走る」こと

 伴走者は、同じような身長の盲人ランナーにつくとは限りません。体格の異なる相手に歩幅を合わせて、腕振りなどの癖を観察し、さらに、“きずな”を持っているので、相手が左手を出すタイミングで、自分は右手を出さなければなりません。いわば二人三脚をしているような難しさがあります。

 こうした状態でフルマラソンを伴走するのは本当に大変ですが、パラリンピックでは、交代制で2人の伴走者を使うことができます。代表選手になる盲人ランナーはスピードもありますから、伴走者の走力や技量がランナーの安全や記録に大きな影響を与えます。

 今年のパラリンピックでは、代表選手はもちろん、そんな伴走者の姿にも注目してみると面白いかもしれません。伴走者は「人のために走る」ということに徹している人ですから「なぜ伴走者という役割を選んだのかな」と思いを巡らせるのも楽しいでしょう。私も実際に伴走して一緒にゴールし、盲人ランナーの方が喜んでいらっしゃる姿を見て、本当にうれしいなあと実感しましたし、普段のランニングでは得られないたくさんの気づきや達成感がありました。

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突風にも負けず、見事完走しました。

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