日経グッデイ

有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子、引退後初のフルマラソンを走ります!

三日坊主にならないランニング習慣化のコツ

 有森裕子=元マラソンランナー

東京マラソンの人気などを背景に、ランニング人口は2080万人に増加し、各種スポーツの中でも高い関心を集めています。特に20~40代の男性の参加が多い一方で、アスリートのような走りを性急に求めすぎた結果、故障をしてしまう人も少なくありません。そんな状況に危機感を抱くのは、五輪マラソンメダリストの有森裕子さん。トップアスリートならではの深いランニング知識を基に、楽しく長く走り続けるためのコツをお届けします。

 都心では桜のシーズンも終わり、新緑がまぶしい季節になってきました。ゴールデンウイークは、旅先や帰郷先でランニングやウォーキングを楽しもうと思っている読者の方もいるのではないでしょうか。

 前回(「マラソンメダリストが重視する『ウォーキングで脚づくり』」)は、走るためのウォーキングの重要性をご紹介しましたが、今回お話しするのは「ウォーキングからランニングへの移行の仕方」。そして、ランニングを習慣化するために、走ることが楽しくなるような「有森流ランニングコースを選ぶコツ」をご紹介したいと思います。

ランへの移行は「10分走って、10分歩く」のインターバル方式で

 どのような走力レベルであっても、ランニングを始める時は、順を追ってトレーニングすることが大事です。ウォーキングやハイキング、山歩きなどで“脚作り”をしてから、ランニングに少しずつ移行する。この順番こそが故障を防ぎ、ランニングを継続しやすくなるポイントです。今まで運動をしていなかった人がいきなり走り始めると、当然ながら息が上がり、つらい思いしかしませんよね。この「つらさ」が、“三日坊主”を招きます。

 せっかく走り始めても、最初からつらさが先に立ってしまうと、シューズを履くのが億劫になってきます。しかも、6月に入れば“梅雨”という、モチベーションを低下させる大敵が待っています。なるべくつらさを感じずにランニングに移行するために、走るための土台作りは念入りに。そして、最初はウォーキングと組み合わせて、徐々にランへと移行していくことが大事です。

ウォーキングからの移行期は「疲れたら歩き、回復したら走る」が基本。(©maridav-123rf)

 ウォーキングからランニングに移行するときは、最初から30分や60分というまとまった時間を走るのではなく、1時間のうち「10分走って、10分歩く」といったインターバル方式を取り入れるといいでしょう。

 走るスピードは早歩きと同程度か、仲間と談笑できるぐらいの速さでOKです。そのスピードなら呼吸もしっかりできるうえ、体にかかる負荷が小さいため、ランニング初心者でも長時間走れるようになっていきます。疲れては歩き、回復したら走る、というように、速度は上げず、走る時間を延ばしていってください。例えば、30分連続で走ることがつらくなくなってきたら、そのままの速さで、60分、90分と延ばすといいでしょう。

 ウォーキングからランニングに移行すると、運動量が急激に増えますので、脂肪が落ち始めたり、筋肉がついて体が引き締まってきたりと、早い人なら2週間ぐらいで体に変化を感じると思います。そうした変化が目に見えてくるようになれば、走ることがどんどん楽しくなってくるはずです。

目的地までのルートを工夫して新しい発見を楽しもう

 ランニングへの移行がスムーズにいったら、次は、ランニングを習慣化し、モチベーションを維持するために、「走るための動機作り」が大事になってきます。例えば、ただ近所の同じコースを繰り返し走るのではなく、目的地を決めてランニングをしてみてはいかがでしょう。

 私は昔から地図を眺めるのが大好きで、よく自宅付近の地図をじっと見ながらいろいろなルートを散策してきました。自分が住んでいる町の地図を手に入れて、目的地を決めたら、複数のコースを考える。「今日はこのコースで行こう」と決めて出発すれば、途中で「こんな素敵なお店があったのか」「こんな風情のあるお寺が!」など、自分の足で走るからこその発見を楽しめるはずです。

地図を片手にお気に入りのコースを探そう。(©Volodymyr Krasyuk-123rf)

 行きは遠回りのコースを選び、素敵なカフェやベーカリーに寄ってから家に帰るという日があってもいいと思います。目的地まで辿りついたら、電車で帰ったっていいのです。スマートフォンの地図アプリなどを使えば、地図の表示はもちろん、GPS機能でナビゲーションまでしてくれますので、方向音痴の人でも走りやすくなるでしょう。

 行ったことのない場所を探索するのは楽しいものです。こうした、自分だけの“楽しみ”を加えると、ランニングも習慣化しやすくなると思います。

 冒頭でも触れましたが、旅先ランもお勧めです。私のマラソン仲間は、出張先や旅先にランニングシューズを持っていくことが多いそうです(私は旅先では“のんびりしたい派”なので、散歩をかねたウォーキングをすることはあっても、走りません・笑)。

 近年、日本ではランニング人口や外国人の旅行者が増え、周辺地図が書かれたランニングマップを用意しているホテルが増えています。それらを利用しながら、“観光ラン”を楽しむのもいいでしょう。

 ランニング専用の記録アプリやダイエットの記録アプリを利用して、走った経歴が残ることを楽しみに、習慣化につなげている人もいるでしょう。1年後の大会にエントリーしたり、「あのサイズのスーツを着たい!」といった目標を立ててもいいと思います。気の合うランニング仲間を探して、ランニングイベントに参加するのもいいでしょう。

 いずれにせよ、自分が楽しく走れる動機を探すことが大事。もし、続けていくうちにその動機が薄れてやる気がなくなったら、新たな動機を見つけ出せばいいのです。ぜひあなたが楽しいと思える動機を見つけてください!

この秋、引退後初のフルマラソンを走ります!

2007年の引退レースから8年ぶりにフルマラソンを走ります!(写真:日本経済新聞社)

 さて、ここでお知らせがあります。実は私、引退レースとなった2007年の東京マラソン以降、今までフルマラソンを一度も走ったことがありませんでした。プロとして真剣勝負の世界で走ってきたので、趣味で走ることに抵抗がありましたし、古傷が再発する心配もあったためです。

 ですが、今年11月に岡山で初めて開催される「おかやまマラソン」で、8年ぶりにフルマラソンを走ることを決めました。岡山は私の地元であり、今回の大会のコース設定などをお手伝いさせていただきました。正直、走りきれるかどうかちょっと心配ですが(苦笑)、地元・岡山の記念すべき大会ですので、そろそろ準備を初めて、本番を楽しんで走りたいと思います。

 ぜひ一緒に楽しみながら、岡山の町を走りませんか? お会いできるのを楽しみにしています!

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子(ありもり ゆうこ)さん
元マラソンランナー
有森裕子(ありもり ゆうこ)さん

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。