普段やっていないことを突然やらない
5つ目は「本番前に特別なことをやらない」です。普段1人で練習している人ほど、大勢のマラソンランナーに混じって走ると気持ちが高ぶってしまったり、初心者ランナーは不安になったりして、普段やっていないことをやってしまいがちです。
例えば、有名ランナーが使っているレース用の軽量シューズを、練習で試さずにレースでいきなり履いて走ったり、有名ランナーがやっているレース前のウォーミングアップ法を、実力が異なる初心者がそのまま取り入れたり…。それは体がびっくりしますし、「ケガへの道」に一直線です。
今回は本番当日のお話をしましたが、それ以前の練習も同じことが言えます。例えば、マラソンに関する本で、「本番2週間前は、時速〇kmで30km走の練習をしましょう」と書かれていたとします。「そうか、本番前はこの練習をすればいいんだ」と、そのページだけを読んで実践する人がいますが、これは危険です。
大事なのは、“流れ”。つまりそれまでにどんな練習をして、本番2週間前を迎えたのかということの方が重要なのです。もしそれまでの練習が、当初の目標の半分しかできていないなら、「2週間前の30kmの練習」を、スピードも距離も半分にするなど、得た情報を自分の現状に合わせて「アレンジする能力」が大事だと思います。
自分でアレンジしたり、判断できない人は、「ランニング教室」などのランニングの専門家に、フォームや練習状況を見てもらったり、質問したりすればいい。そうして自分に合ったトレーニング法や調整法、当日の過ごし方などを自身で考えていくことが大事になります。
簡単なことではないですが、本やWEBなどでたくさんのランニング情報が出回っている今だからこそ、自分に合った方法を探る力を、市民ランナーはそろそろ身につける段階にきたのではないかなと思います。
- 1:空腹の状態でレースに出ない
エネルギー切れを防ぐためにも、レースの3時間前に朝食を摂り、エナジーゼリーなどを持参し、レース1時間前やレース途中で口にする。
- 2:塩辛いものやカフェインを摂取しない
水をカブカブ飲んでしまうものや、コーヒーなど利尿作用があるカフェイン飲料は控えた方が良い。トイレに並ぶロス時間を減らせる。
- 3:ウォーミングアップをやりすぎない
通常よりも多めに走ってしまうと体力切れになりがち。初心者はレースの序盤はウォーミングアップと考えて走ってみよう。
- 4:体を冷やさない
3月~4月は気温の変動が激しい。風が強かったり、雨天時には、体を冷やさないように気をつける。
- 5:本番前に特別なことをやらない
本番前に焦っていつもと違うことをやると、かえってよくない方向になることも。“いつも通り”を心がけよう。ランニング教室の先生に現状を見てもらってアドバイスをもらうことも大事。
(まとめ:高島三幸=ライター)
元マラソンランナー

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。