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有森裕子の「Coolランニング」

有森裕子 五輪イヤーに考える リアルのマラソン大会は開催されることが奇跡

手探りで行われた奈良マラソンでは、関係者全員の工夫と協力が結集

 有森裕子=元マラソンランナー

 4位以下の選手は、タイムに大きな差はなく団子状態でゴールしました。コロナのために大会が減ってしまい、実戦感覚が薄れて“様子見”だった選手が多かったのかもしれません。あるいは、練習ではスピードトレーニングをしていたけれども、久々の実戦でそのスピードが発揮されなかったことも考えられます。ただそんな中でも、もう少し前で思い切ってスパートし、自分を追い込める選手がいても良かったのではないかとも思います。

 ただ、各選手がこのレースをどういう位置付けにして参加していたかで、結果の受け止め方も変わってきます。例えば、前田選手はこの大会をトレーニングの一環としてとらえていたように思います。増田さんの取材によれば、前田選手は毎年、米・ニューメキシコ州のアルバカーキで合宿を行い、アップダウンの激しいクロスカントリーコースを走り込むことで体幹を鍛えていました。体の大きい彼女がブレのない走りができていたのは、こうしたトレーニングの効果が大きいのだとか。

 しかし2020年は、コロナで海外合宿ができず、近くに適したクロカンコースもないので、クロカントレーニングが減ってしまいました。そこで前田選手は、体幹が弱くならないように、監督の指示で体幹を鍛える筋トレと、鍛えた筋肉を走りにつなげるトレーニングを始めたばかりだったそうです。

 筋トレで強化した筋肉を、走り(スピード)につなげるには時間がかかります。おそらく筋トレを始めたばかりの前田選手は体が重く感じられて、筋トレの成果をまだうまくスピードにつなげられていないのでしょう。そうした背景を知れば、タイムが伸びなかったのは当然とも考えられます。そんな体が重い中でも、レース前の記者会見で「自己ベストを狙います」と発言して大会に挑み、9位に食い込んだことは評価できるように思います。

 実業団レベルの選手だけではなく、市民ランナーにも言えることですが、どんな選手でも出場するすべての大会で最高の結果を出すことは難しいですし、そこをあえて目指す必要もありません。本命の大会により集中して結果を出すためには、他のレースを実戦トレーニングとしてうまく活用することが大事です。例えば「このレースはラストスパートの練習にしよう」など、レース一つひとつの目的をどう定めるかがポイントになってくると思います。タイムや順位だけを見て、「五輪代表選手なのに、この結果で大丈夫なのか?」と心配するのではなく、本番に向けてそれぞれの選手が自分の課題に取り組んでいる過程であることを理解し、応援していただければと思います。

 最後にトラックの話題にも触れておきましょう。2020年12月4日に開催された第104回日本陸上競技選手権大会・長距離種目は、東京五輪代表の選考会も兼ねていたため、選手たちの奮闘が目覚ましく、日本記録ラッシュとなりました。1万メートル男子は相澤晃選手(旭化成)、1万メートル女子は新谷仁美選手(積水化学)、5000メートル女子は田中希実選手(豊田自動織機TC)が、見事な走りで五輪の切符をつかみました。コロナ禍による世の中の変化に心揺さぶられることなく、勝負をかけた本番でしっかり結果を出してきたことに拍手を送りたいです。どのアスリートも今年の東京五輪が実現することを願いながら努力を重ねていることと思いますが、今後、どのような状況になっても、すべてを自分の力に変えてがんばれる強靭な精神と肉体を育んでほしいと思います。心から応援しています。

(まとめ:高島三幸=ライター)

有森裕子(ありもり ゆうこ)さん
元マラソンランナー(五輪メダリスト)
有森裕子(ありもり ゆうこ)さん

1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。公式Instagramアカウントはこちら

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