日経グッデイ

「腰が痛い」ときの対処法 ~この方法で痛み解消

【腰が痛い】知っておきたい「腰痛」受診のコツ

第2回 病院、マッサージ、鍼灸、カイロプラクティック……、どこへ行けばいい?

 梅方久仁子=フリーライター

 前回(長年の「腰痛」から、解放されるかも)は、腰痛の最新治療と、いま受診するメリットについて書いた。しかし、いざ受診する気になっても、いつ、どこへ、どのように行けばいいのだろうか。そこで今回は、日本医科大学病院教授・多摩永山病院整形外科部長 宮本雅史氏のアドバイスを基に、できるだけ失敗しないための受診のコツを紹介する。

こんなときには、直ちに医療機関へ!

宮本雅史氏
日本医科大学病院教授、多摩永山病院整形外科部長
専門は、脊椎脊髄病及び腰痛疾患の診断と治療。『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン』『腰痛診療ガイドライン』の策定に委員として参加

 働き盛りのビジネスパーソンなら、仕事に家庭に趣味にと大忙しだ。痛みに耐えられるのなら、「病院に行くのは、このプロジェクトが終わってから」という判断もあるだろう。しかし、もし腰痛の背後に重大な病気が隠れていたら、大変だ。早く受診しないと一生障害が残ったり、場合によっては命が危うくなることがある。一刻を争って受診したほうがいいケースを、リストアップしてみた。

すぐ受診したほうがいい腰痛
  • 神経障害を伴っている
  • がんと診断されたことがある
  • 骨折を繰り返している
  • アレルギー疾患などで、ステロイド剤を長期間服用している
  • 動作や姿勢によって、痛みに変化がない
  • 38、9度の高熱がある

 それぞれについて、詳しく説明しよう。

排尿や排便に関わるトラブルにも要注意

神経障害

 背骨に異常があると、すぐ近くを通る神経が刺激され痛みがでることがある。脚へ向かう感覚神経や運動神経、それに排尿・排便をコントロールする自律神経は、ちょうど腰のあたりを通っている。腰痛と共にこれらの神経に関わる症状が出ると、危険な状態だ。

 具体的には、脚に麻痺があったり、しびれた感じがする、脚に力が入らないといった症状があると問題だ。また、関連を見過ごしがちだが、頻尿、おしっこがなかなか出ない、便秘、失禁など、排尿や排便に関わるトラブルは自律神経障害の可能性がある。

 神経障害が出ていると、あとになっても障害が残ったり、場合によっては命に関わる可能性がある。もし、腰痛と同時にそういう症状があったら、できるだけ早く受診しよう。

がんの病歴

 がんと診断された経験がある人は、腰痛が起った場合は、できるだけ早く受診するべきだ。がんの再発または転移で、痛みがでてきた可能性がある

 人間は、本当に嫌なことは忘れたいもの。「もし、がんの再発だったら」という恐怖を抑えて、「ただの腰痛」とごまかしていたら、あとで悔やんでも悔やみきれなくなるかもしれない。

 もちろん、この場合はあなたの病歴を知るかかりつけ医に見てもらうか、新しい病院ならきちんと病歴を報告する必要がある。

骨折を繰り返す/ステロイド剤の長期服用

 骨折を繰り返している場合は、骨粗しょう症で骨がもろくなっているのかもしれない。骨粗しょう症は高齢者、特に女性に多いが、若くても栄養の偏りや日光浴不足でなる人もいる。骨がもろくなっているときにマッサージなどで力がかかると、骨折の危険がある。まずは医療機関を受診しよう。

 なお、ステロイド剤を長く服用した場合も、副作用で骨がもろくなっている可能性がある。同様の危険があると考えよう。

動作や姿勢によって、痛みに変化がない

 関節の機能障害や筋肉疲労が原因なら、「かがむと痛い」「寝返りをすると痛い」など、姿勢を変えたり、なんらかの動作をしたときに痛みがでることが多い。じっとしているのにいきなり痛くなったり、何もしないのに急に痛まなくなるなど、動作や姿勢にかかわらず痛むのは、内臓の病気かもしれない。

 腎臓、尿管、卵巣、子宮、大血管、すい臓など、身体の後ろのほうにある臓器の病気は、腰痛の症状が出ることがある。内臓病も、早く受診しないと重大事になりかねない。

発熱

 発熱は、身体の中に炎症がある証拠だ。特に38度以上の高熱は、感染症の疑いがある。重症にならないうちに受診しよう。

最初は、整形外科専門医に診てもらおう

 腰痛は、どこで受診すればいいのだろうか。まず思いつくのは整形外科だが、街のクリニックから大学病院まで、整形外科の看板を掲げる医療機関は多い。長く通うなら近所のクリニックが便利だし、難しい症状なら大病院がいいかもしれない。

 状況にあわせて選べばいいが、最低限、日本整形外科学会が認定した"整形外科専門医"に診てもらうのがお薦めだ。

 専門医・認定医とは、学会などがその分野で一定の知識・技術・経験を持つと認めた医師を認定するものだ。整形外科専門医であれば、整形外科の分野で一定以上のスキルを持つことが、保証されている。

 日本整形外科学会のホームページには、整形外科専門医の名簿が都道府県別に掲載されている。氏名の一覧だけではわかりにくいが、勤務先の住所や名称で検索できる。住所の一部や医療機関名で検索し、確認するとよいだろう。

 整形外科専門医の診察を受ければ、診断や治療方針が、それほどずれることはない。いったん診断を受けた後に、必要なら医師に相談して、近所のかかりつけ内科医に薬の処方を頼んだり、大病院に紹介してもらったりすることもできる。

 腰痛の場合、診察を受けて治療を受けても、すぐには症状が改善しないことがある。数週間経っても効果がないと、「ひょっとしてヤブ医者かも。もっと大きな病院に行った方がいいのかな」などと思いがちだ。しかし、腰痛治療は経過を見ることが大切だ。次々と受診先を変えると、検査も診察も最初からやり直し、経過観察もやり直しということになりかねない。受診先をあまりころころ変えずに、できれば同じ医師にかかったほうが得だ

 もっとも医師も人間なので、相性がよくない人はいる。腰痛治療は長いつきあいになることもある。どうしても性格があわないと思ったら、別の医師にかかるのもやむをえない。

治療の流れはこうなる

 受診した後、どういう流れで診断や治療が行われていくのかを見てみよう。『腰痛ガイドライン2012』の診断手順を元に腰痛の治療の流れを図に示した。

[画像のクリックで拡大表示]

 最初は問診と身体検査で、「危険信号があるか」「神経症状を伴うか」をチェックする。どちらかがあればより詳しい検査を行い、その結果に応じて治療していく。

 どちらもない場合には「非特異的腰痛」として、症状に応じて鎮痛薬や運動療法などの治療を行う。

 非特異的腰痛とは、原因がはっきりしない腰痛全般を指す。原因不明というよりも、あえて徹底的には調べないことが多い。けっして手を抜くわけではなく、時間やお金をかけて検査をしても治療法や治療成績が変わらないため、あえて検査しないほうが患者にとってメリットが大きいということだ。4~6週間経過を観察して効果がなければ、あらためて詳しく原因を探ることになる。

 なお、医師の考え方などで、細かい治療法が違ってくることはある。例えば、日本では問診の後にレントゲンを撮り、それから身体所見を取るのが一般的だが、欧米では最初はレントゲンを撮らないことが多い。「レントゲンを撮らないなんておかしい」と決めつけないで、疑問に思ったら聞いてみるといいだろう。

マッサージに行くのは、医師の診断を受けてから

 「腰痛になったら、まず整体でマッサージ」と考える人は多い。名人のマッサージや針治療で、腰痛がぴたりと治まったという話もときどき耳にする。マッサージ、鍼灸、カイロプラクティックなどの代替療法はどうだろうか。

 宮本氏は、「代替療法をすべて否定はしません。ただ、危険信号を見落としたり、骨がもろくなっているときに力を加えて、重大な障害を起こす可能性があります。まずは、整形外科専門医の診断を受けてください」という。「そのうえで、慢性の腰痛とつきあわなくてはいけないときに、つらさが少しでも和らぐのなら、マッサージなどを受けるのもいいでしょう」とのことだ。

 確かに、腰痛に重大な病気が隠れている可能性があるのなら、危険信号を見分けるのは、医師でなければ難しいだろう。まずは整形外科専門医に見てもらい、それから整体に行くのでも遅くなさそうだ。

 なお、整骨院や接骨院での施療は、「健康保険適用」とあっても、適用になるのは主に捻挫などケガの治療のみ。腰痛は一般的には健康保険の対象外だ。

(写真:中野和志)

この記事は、nikkei BPnetの2014年2月13日付け記事の転載です。