油・脂肪はもっととっていい! ここ数年で激変した“油の常識”
油摂取の5大ポイント! まずはここから実践しよう
村山真由美=フリーエディタ―・ライター
「油・脂肪は太る」「体に悪い」というイメージを持っていないだろうか。揚げ物を控えたり、肉は低脂肪の鶏ささ身を選んでいる人もいるだろう。だが、近年ブームの糖質制限ダイエットでは、糖質を控えれば脂質やたんぱく質はいくらとってもいいという。また「コレステロールが多い卵は1日1個まで」といわれてきたが、気にしなくてもいいとも聞く。どうやら“油の常識”が変わってきているようだ。 われわれは、油やコレステロールとどのようにつき合っていけばいいのか。最新事情を3回にわたってお伝えしていこう。
脂質の摂取量が緩和? コレステロール制限がなくなった?
ここ数年で、油・脂肪(脂質)の常識が大きく変化している。一言でいうと、「脂質は悪者=減らした方がいい」という常識は過去のものになり、「いい脂質を積極的にとる」ことが求められるようになってきたのだ。
一番わかりやすい例が、卵に含まれる脂質の一種「コレステロール」や動物性脂肪の代表「バター」だろう。

コレステロールというと、「“血管を詰まらせる悪い脂質”だから摂取を控えた方がいい」というのがこれまでの常識だった。「コレステロール0」をうたっている食品は多い。しかし、最近の研究で、食品に含まれるコレステロールが必ずしも血中のコレステロール値を上げるわけではないことがわかってきている。個人差が大きいため一概には言えないが、健康な人なら、コレステロールが多い卵は1日1個までと気にする必要はないという。
厚生労働省が5年ごとに発表する「日本人の食事摂取基準」は、2015年版で大きく改訂された。2010年版では、コレステロールの目標量は、成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満だったが、2015年版ではコレステロールの摂取基準(目標量)がなくなったのだ。また、コレステロールの摂取が多い人ほど、脳梗塞による死亡リスクが低いという研究もある(Stroke. 2004;35:1531-1537.)。※コレステロールについては、4月7日公開の記事で詳しく紹介します。

また、ミドル以上の人なら「動物性脂肪のバターはカラダによくないから、植物性のマーガリンの方がいい」と教わって育った人も多いだろう。しかし、今ではバターも悪くないことがわかってきた。バターや肉に多い脂質(飽和脂肪酸)を多く摂取している人の方が脳梗塞による死亡リスクが低いという研究結果も出ている(Am J Clin Nutr. 2010;92:759-765.)。2014年には、米TIME誌が「Eat Butter」、The New York Times紙が「Butter Is Back」などと取り上げて話題になった。
食事摂取基準では、脂質の摂取量についても見直されている。2010年版では、1日の摂取エネルギーに占める脂質の割合の上限は25%だったが、2015年版では30%に引き上げられている。つまり、脂質の摂取はこれまでより増やしてもいいわけだ。
もちろん、闇雲に脂質の摂取を増やしていいというわけではない。とりすぎは体脂肪としてカラダに蓄積される。そして大切なのが「カラダにいい油を選んでとること」。健康情報に詳しい方なら、「魚の油やアマニ油などは積極的にとったほうがいい。一方、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は控えた方がいい」などという話を聞いたことがあるだろう。油の選び方も大きなポイントだ。
このように、近年の研究の結果、ここ数年で脂質のとり方の常識が大きく変わってきている。われわれは、油やコレステロールとどのようにつき合っていけばいいのか―。これら“油の新常識”を、脂質代謝や抗酸化物質に詳しい品川イーストワンメディカルクリニック理事長の板倉弘重さんに3回にわたって話を聞いていく。
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