日経グッデイ

中野ジェームズ修一の「遠回りしない体メンテ術」

毎日続けるだけで筋トレにもなる4つの習慣

椅子から立つとき、靴下を履くときも、片足立ちで!

 松尾直俊=フィットネスライター

 体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。
 今回のテーマは「日常生活の中でできる筋力アップの習慣」。トレーニングの時間が取れなくても、筋量を維持できる習慣を身につけよう。

日常生活の中で筋肉に刺激を与えるような動作を意識して取り入れたい。(c)Andor Bujdoso-123RF

 便利な世の中になったおかげで、我々の日々の「生活活動量」は減ってしまっている。時間通りに来る電車やバス、スマートフォンのアプリで呼び出せるタクシー。そして、エスカレーターやエレベーターのおかげで階段の上り下りをすることも少なくなった。そのうえ、忙しくて運動する時間も取れない…。

 「今では買い物もネットで済ませられますし、交通機関の発達で移動の際に歩くことも少なくなっています。便利になったおかげで、私たちの日常の活動レベルはとても低くなっているのです」と中野さん。そんな生活を続けていたら、40代はおろか、20代でもロコモティブシンドローム予備軍になってしまう。

普段の生活の中で“時短”筋トレ!

 そこで中野さんは、普段の生活の中で、トレーニングにもなるような習慣を身につけることを提案する。「徒歩で10分程度の場所へ行くなら、車に乗るのではなく、少し速めの速度で積極的に歩く。電車の乗り換えやオフィスビルの中では、エスカレーターやエレベーターを使うのではなく、階段で上り下りする。それだけでも筋肉が刺激されるんです」(中野さん)

 このように生活習慣を変えるだけでも、健康の維持・増進の効果は期待できる。また、「時間がないから」という言い訳で何もしていなかった人にとっては、特別なトレーニング時間を作らなくて済むので、まさに“時短”トレーニングになる。

 「移動のときに積極的に歩いたりするほかにも、普段の生活の中で、特に下半身の筋トレ効果が得られる動作がいくつかあります。トレーニングの時間がない、もしくは、これまで運動習慣がなかったという人でも、ぜひ取り入れてみてください。いずれも簡単な動作ですが、体を動かす機会が減っている人にとっては、十分な筋肉への刺激になります」(中野さん)

 下半身は体の中でも大きな筋肉が集中する場所。また、加齢によって衰えやすい部位でもある。下半身の筋肉を刺激して強化することは、全身の血行を良くすることにもつながる。つまり、健康維持にはもってこいなのだ。

 では、どんな動作を行えばいいのだろうか? 中野さんは、次の4つの動作を習慣として取り入れることを勧めている。詳しく見ていこう。

片足立ち、空気椅子、靴下履き… 日常動作が筋トレに

習慣1=毎日、椅子から片足立ち

 「椅子に座ったり、そこから立ち上がったりする動作は、誰もが1日に何回も繰り返すはずです。そのときに両足で立ち上がるのをやめて、片足だけを使うようにしてみてください。おおよそでかまいませんから、そのうち半分は右足だけ、もう半分は左足だけで立ち上がるということを心掛けてください」(中野さん)

 最初はバランスを取るのが難しいかもしれない。その場合は、テーブルや机に手をついてもいい。毎日続けていくうちに筋力やバランス感覚が強化され、必ず手を使わずに立てるようになる。

 「片足で立ち上がれるようになったら、頭の中で“1、2、3”とカウントしながら、反動をつけずにできるだけゆっくりとした動作で立ち上がったり、座ったりするとより効果的に鍛えることができます」と中野さん。いわゆる“スロトレ”の一種だ。

 具体的なやり方については、次ページの動画で中野さんに実演してもらおう。

習慣2=毎日、空気椅子スクワット

 「椅子に完全に座るのではなく、両膝を曲げたまま、スクワットの要領でお尻を浮かせた状態をキープするものです。椅子に座る前の10秒間や、立ち上がる前の10秒間などにやってみましょう。仕事中であれば、メールを返す間は頑張ってやってみる、とかでもいいですね。この動作で十分にお尻から太ももにかけての筋肉に刺激を与えることができます」(中野さん)

 このとき、力み過ぎて呼吸を止めないようにするのがコツ。家のダイニングの椅子などでもできるので、試してみるといい。

習慣3=毎日、靴下を片足履き

 「靴下を履く動作は、出掛ける前や朝起きたときに、毎日必ずやるものです。座って行うのではなく、片足で立って行うことで足の筋肉が鍛えられ、バランス感覚を強化することもできます。靴下を脱ぐときにも、片足でやってみましょう。また、靴を履くときも、置いてある靴に足を通すのではなく、靴を持ち上げて片足立ちでやるのもいいでしょう」(中野さん)

 ただし、片足立ちはふらついて転倒する恐れもあるので、必ずつかまって体を支えられるものがある場所で行うようにしよう。

習慣4=毎日、階段を使う

 「普段から積極的に階段を使っている人は、エスカレーターやエレベーターに頼っている人に比べて、下半身の筋肉量が多い傾向があります。階段の上り下りは、片足で全体重を支えるので、両足で立っているときよりも2倍近くの負荷をかけていることになります。それが大きな筋力アップにつながることが期待できるのです。4階分くらいまでは階段で上り下りすることを習慣にしたいですね」(中野さん)

 3カ月間、階段を使う生活をしていたら、下半身の筋肉が増えて、代謝がアップし、体重と体脂肪率が下がったという人もいる。普段何気なく上り下りしているが、階段は非常に有効な“街中エクササイズ”の場所なのだ。積極的に利用しよう。

◇    ◇    ◇

 それでは、4つの習慣について、中野さんの実演と解説を、動画で見ていこう。

 小さなことでも、意識して積み重ねていけば、後々、大きな差となって表れてくる。普段、運動に縁がない人ほど、その効果が大きい。運動を習慣づけるための入り口としても、こうした動作を日常生活の中に取り入れていこう。

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手や青山学院大学駅伝部など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』、『定年後が180度変わる 大人の運動』(ともに徳間書店)など多数。東京・神楽坂に自身が最高技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。