日経グッデイ

中野ジェームズ修一の「遠回りしない体メンテ術」

毎日筋トレをしているのに筋力が上がらないのはなぜ?

自重筋トレでも細かく負荷を上げていこう

 松尾直俊=フィットネスライター

 体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。
 今回のテーマは「筋トレ」。健康やスタイルを維持するためにジムでマシンやダンベルを使ったり、自宅で自重筋トレに励んだりしている人も多いだろう。しかし、自分では一生懸命にやっているつもりなのに、実際には「一向に成果が出ない」ということもある。一体何が問題なのだろうか?

筋トレを続けていても一向に成果が出ないことがある。何が問題だろう? (c)lanak-123RF

 ダイエットやシェイプアップ、スタイル維持や筋力強化と、筋トレをする目的は人それぞれだ。しかし、毎日、そして何年も続けているのに、筋力が上がらなかったり、筋肉量が増えなかったりという人も多い。

 トレーニングの成果が具体的な数値で表れたり、筋肉の形などが目に見えて変わったりしなければ、モチベーションも下がってしまう。「私たちのもとを訪れるクライアントさんの中には『これまで自分で筋トレをしてきましたが、成果が出ないんです』という方もいますね」と中野さん。そんな人たちには、共通した傾向があるという。

同じことを続けていることが、成果が出ない原因

 「筋トレで成果が出ないという方に、『これまでどんなことをしていましたか』と聞くと、一番多いのが同じメニューで同じ種目、同じセットをやり続けているケースです。これはある意味、十分に体を動かしていることになります。脂肪を燃焼させたり、健康を保ったりするには良いことです。しかし、私たち専門家の目から見ると、筋量を増やしたり筋力を強くしたりという点では、大切な原則が欠けているのです」(中野さん)

 我々日本人は、同じことを習慣としてやり続けることを美徳として捉える傾向がある。しかし、こと筋力トレーニングにおいては、それが成果にはつながらないのだという。「私は筋肉量を増やすために、『3つの原則』が重要だと考えています」と中野さん。その3つの原則を次に挙げよう。

筋トレで成果を上げるための3原則

ある一定以上の負荷(刺激)を与えなければ、筋肉は成長しない

 「普段与えている刺激より強い負荷をかけなければ、筋肉は大きくなりません。例えば、何も運動をしてなかった人が、2kgのダンベルでトレーニングを始めたとしたら、最初は筋肉痛になって、ある程度は筋肉が発達します。しかし負荷に慣れてしまうと、それ以上大きくなりません。有酸素運動も同じで、毎日同じ距離と強度のウォーキングやジョギングを続けていたら、心肺機能はそれ以上、向上することはないんです。逆に、体は同じ動きをより効率的に、なるべくエネルギーを使わないで達成させようとします。ですから筋肉は大きくならないのです」(中野さん)

トレーニングの強度は適時・適切に、段階的に上げていく必要がある

 「過負荷の原則と関連しますが、体力や筋力がついてくると、始めたころのトレーニング強度、負荷は相対的に小さなものになります。つまり“楽”に感じるようになるのです。それは体力や筋力が向上した証しで、一つの成果です。しかし、より高い結果を求めるならば、最初のものより1ランク上の強度にしなくてはいけません。いきなり強度を上げ過ぎるとケガのリスクも高くなりますし、小さすぎても効果が出るのが遅くなってしまいます。この後、動画で解説しますが、同じ自重筋トレ種目でも、やり方によってある程度は負荷を適度に高めていくことができます。参考にしてください」(中野さん)

継続的にトレーニングをしないと、筋肉量の維持・向上はできない

 「トレーニングの成果は1回で表れるものではありません。継続して反復することで初めて得られるものです。通常、筋肉トレーニングは週に2〜3回行うことが基本とされています。しかし自己流ではなく、私たち専門家が指導した場合は、週1回でも効果があることが分かっています。低強度のものから始めて体を慣らし、徐々に負荷を上げていって無理なく継続してください」(中野さん)

負荷、強度はいきなり上げてはいけない

 「過負荷の原則」「漸進性の原則」「継続性の原則」という3つがそろえば、トレーニングの効果は高まっていく。ただし、強度の上げ方を間違ってしまうとケガにつながってしまう。では、どうやって負荷を上げていけばいいのだろうか。

 「一般の多くの方は『強度を高めると早く成果が出る』と勘違いしがちです。例えば、ベンチプレスで60kgしか挙げられないのに、何とか努力して75kgを挙げようとして、仮に1回できたとします。しかし、これを続けていこうとすると、キツくなってしまい、やること自体が嫌になってしまいます。継続性の原則が保てないことになり、関節や腱などのケガにもつながりやすくなります。それを防ぎながら、どの段階で、どれだけ負荷を上げていくかを考えて指導するのが、専門家である私たちフィジカルトレーナーの仕事なんです」(中野さん)

 では、トレーナーがいない場合、どれくらいの負荷が適切なのかを知る「目安」はないのだろうか。

 「自重筋トレの場合はだいたい、『1セット20回を2セット』を目安にすればいいと思います。つまり、あるやり方で『1セット20回を2セット』が楽にできるようになったら、回数を上げるのではなく、強度を少し上げて、同じ『1セット20回を2セット』をやればいいのです」(中野さん)

 では、自重筋トレの代表的な種目である「スクワット」と「プッシュアップ(腕立て伏せ)」で、強度を上げていく方法を、中野さんの実演と解説で紹介していこう。

スクワットの運動強度を調節する方法

 まずはスクワット。最も強度が低いのが、ノーマルの両足で行うスクワットだ。そこから強度を一つ上げるには、足を前後に開いて、「片足スクワット」を行う。前の足に体重を乗せるようにすると、さらに強度が上がっていく。後ろの足を椅子に乗せると、前の足にさらに体重が乗る。なお、片足スクワットは、両方の足を均等に行うことを忘れないように。

 「1セット20回を2セット」が目安だが、筋力に合わせて変更してもいい。回数は、最後の1回が一番キツく感じる回数で行うと成果が出やすい。

プッシュアップ(腕立て伏せ)の運動強度を調節する方法

 続いて、プッシュアップ(腕立て伏せ)。最も強度が低いのが、つま先と膝をついた状態で行うもの。そこから一つ強度を上げるには、膝をついたままつま先を上げる。そしてもう一つ強度を上げるには、膝を上げてつま先をつける通常の腕立て伏せにする。さらに、椅子を使うと強度を上げることができる。椅子を3つ使い、体を座面よりも深く沈み込ませると、かなり負荷が高くなる。

 なお、スクワット、腕立て伏せに共通していえることだが、動作のスピードを遅くすることでも負荷を高くすることができる。

 今回は、自重筋トレを例にして「負荷の高め方」を紹介したが、ジムでのマシンやダンベルを使ったトレーニングでも考え方は同じだ。無理せず、焦らず、急がずに続けていってほしい。

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手や青山学院大学駅伝部など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』、『定年後が180度変わる 大人の運動』(ともに徳間書店)など多数。東京・神楽坂に自身が最高技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。