日経グッデイ

メタボ・肥満解消に効果!「代謝アップ」大作戦

「食べる量を減らさず、内臓脂肪を減らす方法」が分かった!

糖質を減らし過ぎると、太りやすい体に

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

 前回記事「『そんなに食べていないのにやせない』人が、まずやるべきこと」では、「太ることを警戒して食べる量を減らし過ぎると、かえって肥満を招く」という話をした。代謝のいい体をつくるためのステップ1は「食事のリズムを見直す」ことだったが、今回はステップ2の「食事の内容を見直す」と、ステップ3の「不足している栄養素を補う」について解説する。食べる量を減らさずに内臓脂肪を減らすダイエット法に詳しい管理栄養士の小島美和子さんらに話を聞いた。

おやつがやめられない人は栄養バランスを疑って

食事をしっかり食べるようになると、甘いものが欲しくなくなるケースが多い(c)blueskyimage-123rf

 「お菓子を食べたいからごはんは食べない」「お酒を飲む日はごはんを抜く」。こんなふうに、間食や飲酒をごはんと置き換えていないだろうか?

 「これらは、エネルギーだけなら交換できますが、栄養素的には全く交換できません。1日の摂取エネルギーの中で、食事以外の割合が増えるほど、栄養バランスは悪くなり、結果的に内臓脂肪が増えてしまいます。栄養バランスに悪影響を与えないお酒と間食の量は、両者合わせて総摂取エネルギーの1割までです」(小島さん)

 「甘いものがやめられない」という人は、栄養素やエネルギーが不足していることが多いと小島さん。栄養素やエネルギーが不足した状態だと、すぐにエネルギーになる糖を欲するようになるのだという。

 「こういう人には、『甘いものをやめましょう』ではなく、『3食きちんと食べましょう。太らないから心配しないで』とアドバイスします。実際に、食事をきちんと食べるようになると、甘いものが欲しくなくなるケースが多い」という。

 甘いものがやめられないときは体が正常な状態ではないと考えて、それらをがまんしようとするより、食事の量や内容を見直したほうがいいと小島さんは言う。

最優先はエネルギーの確保

 そもそも栄養バランスのいい食事とは何だろう。野菜をたくさん食べること? と思いがちだが、何から改善したらいいのだろうか。

 「栄養バランスを整える際の優先順位は、まず、エネルギーの確保です。エネルギーに変わるのは、たんぱく質、脂質、炭水化物(*1)の三大栄養素だけ。エネルギーがない状態で他の栄養素をとってもうまく機能しません。三大栄養素がバランスよくとれていると、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素が効果的に機能します」(小島さん)

 最近、やせるために糖質を制限している人が多いが、小島さんは、食事の総エネルギーのうち、60%を糖質でとることを勧めている。

*1 炭水化物=糖質+食物繊維(エネルギーになるのは糖質)

糖質をとるべき、これだけの理由

 「食事の糖質を減らし過ぎると、体は筋肉を削ってたんぱく質から糖をつくり出し、エネルギーにします。すると、筋肉が減って基礎代謝が落ち、太りやすい体になってしまいます。糖質制限で体重が減っても、減った中身は脂肪だけでなく筋肉が含まれているので、リバウンドしやすいのです」(小島さん)

 また、人は食事をとって血糖値が上がることで満腹感を得ているため、糖質をとらないと血糖値が上がらず、満腹感が得にくくなるという。それが過食を招く要因にもなると小島さんは指摘する。

 さらに、「糖質の摂取を減らすと、多くの場合、脂質の摂取割合が増えます。特にLDLコレステロール値を上げて動脈硬化を進める飽和脂肪酸が増える傾向があり、別のリスクを生み出してしまいます」(小島さん)

 ごはんを食べると太ると思い込んでいる人が多いが、主食を極端に制限することにはさらなるデメリットがあるという。

 「主食になる穀類には、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの微量栄養素が多く含まれるため、これらの不足が様々な体調不良につながることがあります。主食を減らして糖質を制限するのではなく、主食をとる際は食物繊維とセットでとることが大事です。食物繊維と一緒にとることで腹持ちがよく、血糖値の上昇が緩やかになり、内臓脂肪の合成も抑えられます。食物繊維は1日に男性は20g以上、女性は18g以上とることが目標ですが、全年代で不足しています」(小島さん)

 食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする以外にも、便秘を改善したり体内のコレステロールを減らす働きがあるため、生活習慣病の予防・改善に欠かせない栄養素だ。

 三大栄養素をバランスよくとるために効率的なのが、ごはんをベースに主食、主菜、副菜をそろえることだと小島さん。

 「日本人はもともとごはんをベースに魚や野菜のおかずを食べていましたが、食の欧米化によりごはんの摂取が減り、肉や動物性油脂の摂取が増えました。こうした食事内容の変化が肥満やメタボ、生活習慣病を増やす原因になったといわれています」(小島さん)

主食、主菜、副菜をそろえる

  • 主食(ごはん、パン、麺類)
  • 主菜(肉、魚、卵、大豆製品などのおかず)
  • 副菜(野菜、きのこ、海藻、芋、豆などのおかず)

 「非常に基本的なことですが、3食ともに主食、主菜、副菜がそろった食事をしている人はとても少ないです」(小島さん)

 確かに、3食食べてはいても、「朝はパンとコーヒー」「昼はざるそば」という人もいるだろう。3皿そろえることを100%実現することは無理でも、ちょっとした心がけで栄養バランスをよくすることはできる。例えば、「パンとコーヒー」に卵とプチトマトをプラスしたり、「ざるそば」ではなく月見そばを選び、わかめをトッピングする。これくらいなら、料理をしない人や外食が多い人でも可能だろう。

食材選びを見直す

 主食、主菜、副菜をそろえることができたら、次は、食材の選び方を見直してみてと小島さん。

 「食材には複数の栄養素が含まれているため、選び方によっては、目的とする栄養素以外の栄養素をとってしまう場合があります。例えば、肉にはたんぱく質が含まれていますが、脂質が多い部位もあります。例えば、牛バラ肉(カルビ)はエネルギーの8割が脂質。つまり、たんぱく質をとっているつもりで脂質をとっている場合があるのです」(小島さん)

 また、脂質は肉、魚、植物油、バターなどに含まれているが、脂質を構成している脂肪酸の種類は食品によって違う。「肉の脂に多い飽和脂肪酸は、とり過ぎると内臓脂肪の蓄積や動脈硬化を進行させます。一方、魚の油に多い不飽和脂肪酸・オメガ3のEPAやDHAは、血中脂質のバランスをよくして動脈硬化の予防に役立ちます」(小島さん)。つまり、脂質をとるなら肉の脂よりも魚の油を選んだほうがヘルシーというわけだ。

 「主食を選ぶなら、やはりごはんがお勧めです。パンやパスタ料理は、それ自体に油脂や塩分が含まれていて、組み合わせるおかずも脂質が多くなりがちで、食事全体として脂質が増えやすくなります」(小島さん)

 お勧めのごはんだが、白米に玄米や雑穀を加えると、食物繊維の量を増やすこともできる。「このように食材をトレードすると、食べる量を減らさなくても内臓脂肪を減らせます」(小島さん)

 ここまでが代謝のいい体をつくるためのステップ2(「食事の内容を見直す」)だ。ステップ2が実現できてはじめて、サプリメントなどで足りない栄養素を補うステップ3に進める。食事のバランスをよくしても気になる不調が改善されないときは、サプリメントを試してみるのもいいだろう。そのほうが、効果が出やすくなることを覚えておこう。

内臓脂肪になりにくい食事が分かった

 前回記事「『そんなに食べていないのにやせない』人が、まずやるべきこと」でも触れた通り、花王が内臓脂肪の蓄積と食習慣の関係を幅広く調査したところ、食べる量(摂取エネルギー)は同程度でも内臓脂肪が多い人と少ない人がいて、違うのは食事の「質」だということが分かった。

 内臓脂肪が少ない食事習慣の人が多くとっていたものは、豆類、野菜類、果実類、魚介類で、控えめにとっていたのは肉類、油脂類だった(図1)。穀類は両者に大きな違いはなく、内臓脂肪が少ない食事習慣の人は、多い人よりもわずかに少なくとっていただけだったという。

【図1】内臓脂肪になりにくい食事の「質」と食品摂取の関係
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(a)食事習慣の「質」の得点が低いほうから高いほうまでをQ1からQ4の4つのグループ分け。(b)相関解析による推定 (※高瀬ら、第61回日本栄養改善学会学術総会〔横浜〕2P-109およびスポンサードシンポジウム) 

 「三大栄養素で見ると、内臓脂肪の少ない食事習慣の人は多い人に比べてたんぱく質の摂取が多く、また、脂質の摂取は少ないものの、オメガ3脂肪酸、中でもEPAやDHAを多くとっていることが分かりました。内臓脂肪の多少で炭水化物の摂取量は変わりませんでしたが、内臓脂肪が少ない食事習慣の人は食物繊維を多くとっていました」(花王基盤研究セクターの高瀬秀人さん)

 花王では内臓脂肪が少ない食事習慣の人の食べ方を「スマート和食」と名付け、しっかり食べながらも太りにくい食生活のヒントとして、情報を公開している。その考え方のポイント、具体例は次ページに示す通りだ(図2、図3、図4)。

【しっかり食べても太りにくい食事「スマート和食」のポイント】

  1. 脂質を減らして「たんぱく質」を増やす(内臓脂肪をためない基本)
  2. 脂質をとるなら「オメガ3」(糖質を内臓脂肪にかえない)
  3. 糖質をとるなら「食物繊維」を一緒に(糖質を内臓脂肪にかえない)

【図2】スマート和食3つの「質」のポイント
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 「弊社では、一部の事業場の食堂で、スマート和食に基づいた『花王健康ごはん』を提供する内臓脂肪低減プログラムを実施して効果を検証しているところです。これは最初に内臓脂肪を測り、管理栄養士によるスマート和食のセミナーを聞いて、昼食はできるだけ健康ごはんを食べ、3カ月後に再度内臓脂肪を測定するというものです。スマート和食バランスの実践率が高かった人や、健康ごはんを食べた頻度が高かった人ほど内臓脂肪が減り、平均12~13平方cm減(*2)という結果が出ています」(高瀬さん)

*2 花王が大阪大学と共同開発した内臓脂肪計で測定した内臓脂肪面積

【図3】スマート和食の例

ごはん食の場合
ごはん食にするとバランスを整えやすい
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パン食の場合
パン食の場合は脂質を控えるのがポイント
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丼物の場合
単品料理(丼、麺類など)は具や小鉢でバランスを整える
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カロリーは落とさずに、食事の質を変えたものなので、かなりボリュームがある(写真提供=花王)
【図4】スマート和食のメソッドを理解するためのチェック表(抜粋)
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自分で献立を考えたり、外食時のメニューを選んだりする際に役立つ(※花王考案の食事チェック表より一部抜粋)

 「こんなにたくさん食べて本当にやせられるの?」と思った人は、普段食べる量を減らし過ぎているかもしれない。ダイエットの新常識はエネルギーを減らすことではなく、エネルギーを保ったまま食事の質を上げることだ。この「スモールチェンジ」を実践することで、おいしく食べて内臓脂肪とさよならしよう。

小島美和子(おしま・みわこ)さん
管理栄養士、健康運動指導士、食コンディショニングプロデューサー
小島美和子(おしま・みわこ)さん クオリティライフサービス代表取締役。企業や健康保険組合における食生活改善サービスの提供、食品、健康サービス事業者に対するお客様サービス向上のためのライフスタイル提案、各種コンテンツ企画・ヘルシーメニュー開発などに携わる。テレビ、ラジオ、雑誌への出演も多く、著書に『1週間でお腹からスッキリやせる食べ方』(三笠書房)がある。厚生労働省の特定保健指導実践者育成研修会の講師も務める。
高瀬秀人(たかせ・ひでと)さん
花王 基盤研究セクター 生物科学研究所 上席主任研究員
高瀬秀人(たかせひでと)さん 1989年筑波大学第1学群自然学類卒業。1994年同大学大学院計算物理化学専攻修了。理学博士。同年花王入社。素材研究所、ヘアケア研究所、構造解析センターを経て、2000年より同社ヘルスケア食品研究所にて食品の機能性評価および民間企業で初のヒューマンカロリメーターの立ち上げと運用に従事。2015年より現職。ヒトの食事や生活習慣とエネルギー代謝、健康状態の関係について、データ解析・統計技術を応用した研究に取り組んでいる。