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軽度認知障害、運動で防ぐ

暗算しながらで効果増

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認知症になるリスクは高いが、発症に至らずにすむ可能性も大きい――。軽度認知障害(MCI)という段階で診断し、運動トレーニングなどによって発症を予防しようという機運が強まってきた。MCIとはどのような状態で、この段階での取り組みはどこまで有効なのだろうか。

 東京都内に住む男性会社員のAさん(55)は最近、取引先や知人の名前がとっさに浮かばず慌てる回数が多くなった。新聞やテレビなどで、軽度認知障害とかMCIという言葉をよく耳にするようになり気になっていたので、自分も一度診断を受けようと思った。

 Aさんが選んだのはインターネットから申し込んで10分ほど電話で認知力検査を受け、MCIかどうかを判定するサービスだ。数日で結果が届き、認知機能のスコアとともに「問題は見つかりません」との判定だった。Aさんはほっとした。サービスを運営しているエス・エム・エスによると、MCIの疑いとの判定が出るのは約12%という。

 「自分自身や家族で気になる症状が出たら、ためらわずに病院の物忘れ外来などを訪ねてください」。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の島田裕之・予防老年学研究部長はこう助言する。病院ではAさんが受けたような認知機能テストのほか、場合によっては脳画像検査も実施し、MCIかどうかを詳しく診断する。

 MCIは認知症ではないものの、認知機能が年相応といえない程度に低下している状態を指す。時折、物忘れが出るなどして本人や身近な人が異常を感じることもある。ただ、日常生活を送るのが困難になるほどの支障はなく、仕事でも大きなミスはないというレベルだ。

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 厚生労働省研究班によると、MCIに当てはまる人は2012年の段階で約400万人で、65歳以上の高齢者の約13%に上る。認知症の高齢者数約462万人に迫る数字だ。

 MCIが注目されているのは、この状態から認知症に移行するリスクが高い半面、この段階で発症が抑えられるケースも多く、認知症になる人を減らせると考えられるようになってきたからだ。オーストラリアの研究によれば、認知症の発症時期を平均2年遅らせることができれば、2050年時点の同国内の認知症の有病率を20%下げられる。5年間遅らせると有病率は43~49%下がる。

 現時点で認知症の治療薬開発の見通しがついていないことも、MCIへの注目が高まる背景だ。認知症の多くを占めるアルツハイマー病の治療薬は、進行を遅らせる効果はあるものの、病状を回復させることは難しいとされている。

 アルツハイマー病では「アミロイドβ」という物質が10~20年程度かけて脳内に蓄積し、やがて「タウ」という別の物質も蓄積して記憶障害などのMCIに至ると考えられている。ただ、アミロイドβが著しく蓄積した人でも発症しない人もおり、何が発症の引き金なのかが必ずしもはっきりしていない。

 認知症専門のメモリークリニックお茶の水(東京・文京)の朝田隆院長(筑波大学名誉教授)は「MCIの人の14~44%の人が回復したという疫学データがある。取り組み方次第で、認知機能の低下を防げる可能性は高い」と指摘する。

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 認知症につながるリスク要因として糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病や、喫煙などがある。専門家が重視しているのが「運動不足」によるリスクだ。「認知症予防のために何か1つといえばまず、運動不足の解消に努めてほしい」(島田部長)

 国立長寿医療研究センターではMCIと診断された高齢者約300人に対し、週1回90分の運動を実践するプログラムを10カ月間実施した。そのうえで、運動プログラムがない健康講座だけのグループと比較した。

 運動プログラムに参加したグループは、認知機能や言語機能が維持されていた。また、対照グループにみられた脳の特定部位の萎縮傾向がなかったという。

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