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めまいや頭痛、香りが原因? 柔軟剤など苦手な人も

化学物質の過敏症 こまめな換気で予防、使い方に配慮

 日本経済新聞電子版

寒い季節、暖房が効いた室内や車内で気になるのは衣類の柔軟剤や消臭剤などの香りだ。これらに含まれるごく微量の化学物質の影響で、体調を崩す人がいる。原因を知り、症状の緩和や発症の予防を心がけよう。

(c)Shojiro Ishihara-123RF

 現代社会は人工の香りであふれている。多くは体臭や衣類の生乾き臭などを和らげるためのものだが、身の回りの香りに反応して不調を訴える人がいる。

 実態を明らかにするため、NPO法人日本消費者連盟(東京・新宿)は2017年7月と8月、「香害110番」を実施。2日間で213件の訴えが寄せられた。多かったのは「隣家の洗濯物の香りで息苦しくなる」など柔軟剤関連だった。「駅で制汗剤を使う人がいて、めまいがした」など多様な原因や症状が挙がった。

 訴えを寄せた人の約半数が、医療機関で「化学物質過敏症」と診断されていることも分かった。この病気に詳しい東海大学の坂部貢医学部長は「一般の人にはほとんど問題のない微量の化学物質を浴びて、体調不良を繰り返す病気」と解説する。

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 56年前に初めて報告されたが、発症の仕組みなどが不明で、当初は病気の存在に否定的な研究者も多かった。研究が進んで、微量物質の毒性やアレルギー、嗅覚過敏が関与した脳の機能異常などが患者に起きていると解明された。

 「2015年の大規模疫学調査で、人口の7.5%が化学物質に対して何らかの過敏症状を持つという結果も出ている」と坂部部長。決して珍しい病気とはいえない。

 そよ風クリニック(東京・杉並)の宮田幹夫院長は「化学物質を長期間摂取すると、体に加わるストレスの総量が患者の適応能力を超えてしまい、極めて微量かつ多様な化学物質に接触しただけで症状が出るようになる」と話す。

 診断の際は、周囲にある化学物質や、症状が出る場面などを問診票に沿って聞き取る。さらに国の研究班が作成した自律神経機能や脳神経機能、平衡機能の検査や血液検査などで調べる。

 化学物質過敏症に有効な治療薬は少なく、治療の中心は生活改善だ。まずは原因の化学物質をできるだけ浴びないこと。我慢できないと感じたときは、早めにその場所や発生源から遠ざかろう。

 こまめな換気も重要だ。坂部部長は「外気を恐れて部屋の窓を閉めきる人が多いが、化学物質は屋外より室内に多い」と指摘する。窓を開けたり、換気扇を使ったりして部屋を換気したい。空気清浄機は主に粒子状物質を取り除くため、すべての化学物質を除去するわけではないという。

 自律神経の機能を高めるためにお薦めなのが運動。軽く汗ばむ程度のウオーキングなどを定期的に取り入れよう。宮田院長は「副交感神経を優位にしてリラックスできるように、ぬるめの湯にゆっくりつかるのもいい」と勧める。

 食事ではビタミンやミネラルを十分に取りたい。「特に重要なのはマグネシウム。患者の17.5%にマグネシウム欠乏が見られる」(宮田院長)。マグネシウムはソバなどの穀類、落花生やアーモンド、海藻類に豊富に含まれており、神経や筋肉の過剰な緊張を和らげる効果が期待できるという。こうした生活改善によって「患者の7割で症状が改善する」(宮田院長)。

 原因物質を過剰にまき散らさないために、患者でない人も洗剤や柔軟剤などの適正な使用量を守ることが重要だ。多くの人が集まる場所では特に、自分は快適でも他人が不快に感じる可能性を念頭に、香りの使い方に配慮したい。坂部部長は「現代は誰もが化学物質過敏症を発症する可能性がある。化学物質との正しいつきあい方を模索したい」と話している。

(ライター 荒川直樹)

[NIKKEIプラス1 2017年12月16日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。