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「ストレスチェック」はどう役立てるかを考えながら進める!

中小企業における「ストレスチェック」のより良い運用と活用を考える(前編)

 氏家裕子=ライター

産業医にとってもストレスチェックは一大事だった

 次に奥田さんが登壇。都内のクリニック心療内科にて精神科臨床医をしながら、都内の企業20社では嘱託産業医として働く人たちの心身のサポートを行っている奥田さん。産業医および実施者としての立場から高ストレス者の面接を通しての考察や感想を話してくださいました。

精神科医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタントの奥田弘美さん

 「ストレスチェックの制度開始は、昨今まれに見る一大事でした。私のように20社も産業医契約をしている医師はあまりおらず、ほとんどは1~2社の嘱託産業医を、アルバイト感覚でやっている先生が多く『ストレスチェックってなんなの』という感じで右往左往している先生も見受けられました」(奥田さん)

 医師の間で問題だったのは「実施者になるか、ならないか?」「高ストレス者の面接を指導するか、しないか?」という2点だったといいます。なぜなら、引き受けることは義務ではなかったためだ。

 厚労省の「ストレスチェック制度関係 Q&A」によると「労働安全衛生規則第14条の規程は、産業医がストレスチェックや面接指導等の実施に直接従事することまでを求めているものではありません。(中略)ただし、事業場の状況を日頃から把握している産業医がストレスチェックや面接指導等の実施に直接従事することが望ましいと考えています」という曖昧な表現が使われています。

 「引き受けるかどうかは産業医側の選択となり、悩む先生方が多かった」と奥田さん。結局、実施者も面接指導も引き受けない先生。実施者は受けないけど、高ストレス者面接は引き受けるよという先生、条件が合えば、実施者も面接指導も引き受けるという先生の3つのパターンに分かれ、奥田さんは「条件が合えば実施者も面接指導も引き受ける」という選択をしていたといいます。医師たちがここまで慎重になっていた理由は「個人情報の扱いがとても特殊で、何かが起きたときの責任リスクが不明瞭だと懸念して二の足を踏む先生方が多かったように思います」とのこと。そんな中でも奥田さんが、実施者も面接指導も引き受けるために出していた条件とはなんだったのでしょうか。

 「一つは、厚労省提示の57項目のストレスチェックシートを使うことです。実施者および、実施事務従事者(内部実施事務従事者と外部実施事務従事者)しか高ストレス者の名前を知ってはいけないので、自殺念慮(*1)など重大な症状に関連するような項目が入っていると、役割として責任が重すぎるんですね。厚労省の手引きにも「調査票に、性格検査や適性検査、うつ病検査、希死念慮などの検査を含むことは不適切」とされています。あるEAP会社は、150項目にもわたるストレスチェック質問票を作っていたのですが、その中にパワハラやセクハラを受けたことがあるかなどの項目があり、これは深く聞きすぎだなと思いました。本人が高ストレス者として面接を希望しなければ、実施者は何も手出しができないという制度なので、こういった安全配慮義務に直結するようなリスクの高い項目が入っていると非常に困るわけです」(奥田さん)

*1 自殺念慮とは、「死んでしまいたい。消えてしまおうか」といった思いに満たされてしまっている、あるいは常に頭のどこかにそうした考えがある状態のこと。

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