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ノーベル生理学・医学賞、大村智氏の功績

熱帯病治療薬などの創製に寄与

 河野 修己=日経バイオテク

記者会見での大村智氏。

 ノーベル財団は10月5日、2015年のノーベル生理学・医学賞を発表。イベルメクチンの発見者として知られる北里大学名誉教授の大村智氏が受賞した。

 大村氏は1935年生まれの80歳。山梨大学学芸学部自然科学科を卒業後、5年間、都立高校夜間課程の教師を経験。働きながら東京理科大学大学院理学研究科に進学し、研究者としての道を歩み始めた。1968年からは北里大学や北里研究所に研究の場を移し、大学教授や研究所の理事長などを歴任。新規医薬品の創製に取り組んだ。

 大村氏は、静岡県の土壌に棲息する放線菌が産生する化合物のエバーメクチンが、抗寄生虫作用を持つことを発見し、そのジヒドロ誘導体であるイベルメクチンも創製した。イベルメクチンは1981年にまず動物薬として発売され、1987年にはヒト用医薬品に転用。熱帯病のオンコセルカ症、リンパ系フィラリア症の治療薬として、毎年約3億人が服用する薬になった。イベルメクチンの登場で、中南米ではオンコセルカ症の撲滅に成功しており、アフリカでも10年以内に発症を一掃できる見込みだという。

 1985年には世界で始めた、遺伝子組換え菌による抗生物質の生産に成功。2000年にはエバーメクチン生産菌のゲノム解析も成し遂げた。

 大村氏が率いた研究グループはこれまでに500以上の新規天然有機化合物を発見しており、この中にはプロテインキナーゼ阻害剤スタウロスポリン、プロテアソーム阻害剤ラクタシスチン、脂肪酸活性化酵素阻害剤トリアクシンなどが含まれている。

 同日夜に開かれた記者会見で大村氏は、「日本はうまく微生物を使いこなしてきた歴史がある。食料や農業生産で利用してきた伝統がある。そのほんの一片として私が存在している。今回の受賞にも、先輩が築いてくれた学問的蓄積が寄与している。北里柴三郎の教えだが、科学者とのいうのはとにかく人のために働かなければならない。常に人の役に立つことを考えてきた」と話した。

 また、「なぜいくつもの薬の実用化に成功できたのか」という記者の質問に対して、大村氏は、「特に抗生物質の研究は、完全なる共同研究の塊である。菌を見つけるだけでなく、生化学者などと共同してやっていかなければならない。こういう人たちの力がうまく融合された結果だと思う。もう1つは、私自身、いろんなことを知らなければならないと考え、めちゃくちゃ本を読んだ。これで研究全体の流れを理解できることができた。今から振り返ると、これが良かったと思う」とコメントした。

この記事は、日経メディカルからの転載です。

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