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海外渡航中の健康トラブル…見落としがちな備えとは?

持参薬の基本は3種類、「日本人特有のアレ」にも備えよ

 田村知子=フリーランスエディター

冊子を拝見すると、詳細な医療情報が掲載されていますね。

子どもの治療に関する同意書の例
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 欧米人の多くは海外旅行に出かける際は、必要な医療情報をあらかじめ知識として持っています。一方、日本人の場合は「予防接種を受けて、保険に入っておけば安心」程度に考える人が少なくありません。欧米で発行されている多くのガイドブックでは、旅行中の健康管理に関連した情報にかなりのページが割かれていて、専門家から見ても必要な情報が正しく掲載されています。ところが、日本で発行されている主なガイドブックには、実際に則した医療情報が少なく、本当に必要な基本的情報さえほとんど書かれていないといっても過言ではありません。

 必要な医療情報、正しい医療情報を知らないために、最悪の場合は命を落としてしまう不幸な事例もあります。

 例えば、米国では未成年(州により年齢は異なる)が医療機関を受診する場合は、親権を持つ保護者の治療承諾書が必要です。それがなければ、ER(救急科)以外では基本的に診療を断られてしまいます。米国をはじめ多くの国では、医師には診療を拒否する権利があるのが一般的で、それが法的に認められていない日本のほうが特殊なのです。そのため、『自己記入式安全カルテ』は成人用のほか、学生用、小児用も用意して、それぞれに必要となる情報を提供しています。

命に関わる緊急時は、一刻も早く専門病院へ

その国によって、医療文化が異なるのですね。

 そうです。日本と同じ感覚で海外の医療機関を受診しようとすると、適切な診療が受けられない可能性があります。特に、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気の場合はなおさらです。

命に関わる病気かどうかを、自分で判断するのは難しいこともありそうです。

 経験したことのない痛みを感じるなど、自分が緊急事態だと思えたときは、すべて救急(ER)と判断すればいいのです。日本では重症患者に対応する3次救急病院(*1)へは、原則として救急車を呼ばなければいけないことになっていますが、海外では救急車を呼んでいたら間に合わないケースが多いので、自家用車やタクシーで、一刻も早く受診するのが基本です。

 そのときに、日本人に注意してほしいのが、1秒でも早く、質の高い診療を受けられる専門病院へ行くことです。多くの日本人は、クレジットカード会社や保険会社が提供する医療電話サービスを利用して、日本語が通じる医療機関を紹介してもらおうとします。そんなことをしていれば、緊急時には手遅れになってしまいます。実際、海外の救急医学会に出席すると、いろいろな国の一流病院の救急医から、「日本人はいつも手遅れになってから来る」と言われます。

 日本語が通じる医療機関は、命に関わる恐れのない体調不良のときにかかるべきで、緊急時には宿泊先のホテルや現地の知り合いなどにアドバイスを求めて、あるいは救急車で1秒でも早く、専門病院を受診してください。

 海外留学生を多く送り出しているある大学では、かつては医療上のさまざまなトラブルがあったといいますが、渡航前に日本と海外の医療文化の違いのほか、持参すべき薬、うつ病とホームシックを見極めるセルフチェック法、性感染症の予防などを説明する医療ガイダンスを行うようになってからは、ほとんどなくなったそうです。この大学では海外留学をする学生全員に、英文の自己カルテや保護者の治療承諾書を持参することを義務付けています。最近では他の大学でも、留学生向けの医療ガイダンスの実施を普及する動きが出てきています。

 若年層よりも心筋梗塞や脳卒中といった死亡につながる病気のリスクが高い中高年はなおのこと、海外に渡航する際は、正しい医療情報、知識を身に付けて行ってほしいと思います。もちろん、日ごろから生活習慣病のリスクを下げる生活習慣の改善を心がけることも重要です。

*1 日本の救急システムは、1次救急病院(軽症患者対応)、2次救急病院(中等症患者対応)、3次救急病院(重症患者対応)の大きく3つに分かれ、3次救急病院は、2次救急病院では対応できない重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる体制と高度な診療機能を持つ。
篠塚 規(しのづか ただし)さん
千駄ヶ谷インターナショナルクリニック院長、日本旅行医学会専務理事
篠塚 規(しのづか ただし)さん 1975年千葉大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター外科研修を経て、米ピッツバーグ大学医学部の重症疾患ユニットに勤務、救急医学を学ぶ。米ジョンズ・ホプキンズ大学医学部研修を経て、英文診断書の翻訳・作成を行うオブベース・メディカ(現・旅の医学社)設立。2002年日本旅行医学会設立。2013年クリニック開業。欧州救急医学会教育認定医。
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