高齢者の「熱中症」はなぜ多い? 脱水の予防策は?
熱中症・脱水予防のために知っておきたいこと(2)
伊藤和弘=フリーランスライター
「認知症になると、自律神経の働きが悪くなって脱水を起こしやすくなることもありますし、判断力が衰えているため脱水症状を自覚できません。お茶の入った湯飲みを持っていても、持っているだけでまったく飲んでいないこともあります。周囲の人が注意してあげることが必要です」(秋山さん)
実際、こんなことがあった。5月の連休明けで急に暑くなった頃、団地で一人暮らしをしている90代の女性が、テレビのリモコンが見つからないと「暮らしの保健室」を訪ねてきた。彼女は軽い認知症があるが、少し支援すれば日常生活は送れていた。同じ悩みで3回もやってきたので不審に思って自宅を訪ねてみたところ、窓が閉めきってある上、なんと暖房がついていたという。
「暑いのでエアコンをつけたけれど、冬に使った暖房になったままだったのでしょう」と秋山さんは推測する。
さらに高齢者では、エアコンを使わない、防犯のために窓を開けない、夜間トイレに起きないように水を控える、といった習慣を持っている人も多い。そのため、室内で熱中症になるリスクが高くなる。
高齢者に多い高血圧や糖尿病といった生活習慣病も脱水を促進することがある。「心疾患や腎臓病で水を控えるように言われている人もいます。でも夏場と冬場では飲んでいい水の量も変わってくるはずなので、主治医に確認してください、という話をしています」と秋山さん。
汗をかく夏は塩分の補給も忘れずに
熱中症が疑われたら、まずは涼しい場所へ運び、衣類を緩める。さらに体に水をかけたり、濡れタオルを当てたりして体を冷やす。特に太い血管がある首、わきの下、足の付け根などを冷やすと全身を冷やすのに効果的。これらの部位にハンカチに包んだ保冷剤を当てるなどするといいだろう。
汗をかくと、水分だけではなく、塩分も失われる。そこで水だけを大量に飲むと、利尿作用によってさらに塩分が失われるという悪循環に。暑い夏には、水分とともに塩分の補給も忘れてはいけない。

市販されている経口補水液には塩分が含まれている。スポーツドリンクに比べると糖質が少なく、塩分が多いのが特徴だ。
経口補水液は自分で作ることもできる。500ミリリットルの水に、20グラムの砂糖と1.5グラムの塩を加えればいい。「暮らしの保健室」の熱中症予防講座では実際にその場で作り、参加者に味を確認してもらっているという。
布団に入る前後、入浴の前後、運動中と運動の前後には必ず水分をとるようにしよう。「また、お酒を飲んだ後も水を飲むようにしてください。ビールは利尿作用があるので、水の代わりにはなりません」と秋山さんは注意する。
食事にも水分が含まれている。暑いと食欲がなくなりがちだが、脱水を防ぐためには食事をきちんととることも大切だ。
エアコンを適切に使うことに加え、熱中症を防ぐには夏に起こしやすい脱水を防ぐことがポイント。こまめに水と塩分をとり、脱水を起こさないことを心がけてほしい。
ケアーズ代表取締役、白十字訪問看護ステーション統括所長

