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地域包括ケアシステムでは在宅医療がカギに

和歌山県立医科大学神経内科教授・伊東秀文氏に聞く【日本医学会総会2015関西プレビュー】

 

いわゆる「2025年問題」が懸念されています。

 10年後には団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となります。その数、約800万人。あえてショッキングな言葉を使えば、高齢社会が転じて「多死社会」に入ります。いまでも6割の方が終末期は自宅でと望んでいるのに対して、現実には8割弱の方が病院で亡くなられています。もしこの割合が今後も続けば病院のベッドはまったく足りません。それはあと10年後のことなのです。私たちは大いに危機意識を持たねばなりません。

国も当然そうした危機感を抱いています。

 厚生労働省が2025年を目指して「地域包括ケアシステム」を推進しています。これは、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最期まで続けられるようにするために、生活支援を一体的に提供するシステムです。そのカギになるのが在宅医療なのです。医療といっても、病院で行われる治療とは違って、ケアマネージャー、ホームヘルパー、それに地域のボランティアや自治会のメンバーなどが協力して、慢性的疾患を抱える高齢者の生活を総合的に支援しようという概念です。

「自分らしい暮らし」を支えるのが在宅医療なのですね。

 慢性期医療では、いわゆる医療のウェイトが徐々に減り、看護や介護の割合が増えていきます。そうなると医師と他職種との連携が大きなカギになります。つまり、主治医、保健師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーにケアマネージャーなどがそれぞれの専門性を生かしたチームワーク、「インター・プロフェッショナル・ワーク(IPW)」という概念が今後の在宅医療を支えます。

 総会ではまず、こうした協働のあり方を議論したいと思います。

そうなると医療中心から患者の生活中心に考え方がシフトしていきますか。

 病状が落ち着いた患者さんは慢性期病院や療養型病院を経て、在宅医療へと移行していきますが、この移行時の連携プレーが現状ではあまりうまくいっていません。たとえば、急性期病院の医師は、患者さんが退院するときは転院先を見つければ役割は終わりと思われがちですが、本来は患者さんの生活がそこで断ち切られることなく、次の環境にスムーズに移行できるように連携プレーを図っていくべきなのです。高齢社会本番に向けて、「患者中心の生活連携」はこの総会での重要テーマです。

高齢社会本番といえば、高齢者に特有の疾患もありますが。

 その通り、病気を軸とした論議も必要です。悪性腫瘍、神経難病、慢性期呼吸器疾患、認知症の4つの病気について、慢性期患者の生活機能を最大化するために、医療従事者が取り組むべき体制とその課題を、この総会では明らかにします。

多職種間の連携を推進するにはIT化も必要です。

 ケアマネージャーが最も困難を感じているのが医師との連携です。ケアマネージャーは最も多くの職種と連携を持っているからです。この問題を解消するためには電子カルテの普及が望まれるところです。一人の患者情報が職種ごとに分散していたのでは連携もできません。電子カルテをクラウド化できれば、スタッフ全員が情報を簡単に共有できます。個人情報の保護など、課題はもちろんあるものの、このクラウド化は在宅医療時代を迎えるのに欠かせない議論だと思います。

まさに分野横断的議論です。

 今回の医学会総会では分野横断的な議論を目指すことが大きな特色になっています。医学・医療の領域を越えて議論するのはもちろんですが、看護から介護、ケアマネージャーやケースワーカーまで、職種を越える横断的議論も大切です。その意味でこの「在宅医療」は最も横断的な議題ではないかと思います。さらには、高齢者の暮らしやすい街づくりを考えるなら、行政も含め、さらに幅広い方々に議論に参加していただきたい。

 特に在宅医療の担い手である地域の先生方には、強いリーダーシップを発揮していただくことが「地域包括ケアシステム」でも強く求められています。このたびの医学会総会には一人でも多くの先生方にご参加いただき、この差し迫った課題に対してご理解を深めていただきたいと思います。

この記事は、日経メディカルからの転載です。

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