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最期を迎える人に「私」を取り戻してもらう方法

「今日が人生最後の日だと思って生きなさい」の著者に聞く(3)

 西門和美=フリーライター

 自分だけではなく誰かが、点数にかかわらず「これでよい」と許してくれるなら……。ナンバーワンになれなくとも、オンリーワンとして認めてくれる人がいるのなら……。それは、苦しみの中にいる人にとって、きっと心強い支えとなるだろう。

大切な支えの存在に気づく「ディグニティセラピー」

 そしてもう一つ、自分らしさが失われていく人生の最終段階において、有効なことがある。それは、尊厳を取り戻す「ディグニティセラピー」だ。

 「尊厳療法ともいわれるこの手法では、その人がこれまで大切にしてきたものを振り返りながら、周囲の人たちに伝えておきたいことを形にしていきます。具体的には、構造化されたいくつかの質問を中心にインタビューを行い、その内容を大切な人に宛てた手紙にします」と小沢さん。

大切な人に知っておいてほしいことを確認し、手紙という形で伝えることは、尊厳を取り戻し、今後の人生を穏やかに過ごすうえで大きな支えとなり得る(©Daniil Peshkov-123rf)

 ディグニティセラピーでは、例えば、「あなたが人生で一番生き生きとしていたのは、いつですか?」というように尋ねる。自分自身の人生を写したアルバムを眺めていると仮定して、これまでの人生の中で、最も輝いていた時期について語ってもらうのだ。

 さらに、アルバムの中のその写真では、誰と何をしているのか。どのような表情をしているのか。どんな役割があって、どんなことを達成したのか。また、どんなことを誇りに感じているのか……を聞いていく。

 こうして記憶を引き出すうち、「自分にはもう何もない」と望みを失っていた人も、自分が持ち合わせている大切なものに気づき始める。過去を丁寧に振り返ることで、自分らしさを取り戻し、生きる意志が高まることも多い。

 「ディグニティセラピーで行っているのは、“私”を取り戻し、後世に“私”を伝えるための準備。過去の振り返りを通して、大切な人に知っておいてほしいこと、覚えておいてほしいことなどを確認し、手紙という形で伝える。こうして“私”が生きた証しを世代を超えて伝えることは、尊厳を取り戻し、今後の人生を穏やかに過ごすうえで大きな支えとなり得るのです」(小沢さん)

介護する側にも支えは必要

 そして最後に、介護を担う家族をはじめ、支える立場にある人こそが、支えを必要としているということも忘れてはならない。

 人生の最終段階は、美しく幸せなものとは限らない。本人のみならず周囲の人々も巻き込んで苦しみを味わうことも、無力感にさいなまれることもあるだろう。小沢さんは、このように話す。

 「一生懸命に対応しても、うまくいかないこともある。そんなときに私たちにできるのは、誠実に関わり続けること。そのためにも、自分自身への支えも必要なのだと思います」


小沢竹俊(おざわ・たけとし)さん
ホスピス医 めぐみ在宅クリニック院長
小沢竹俊(おざわ・たけとし)さん 救命救急センター、農村医療に従事した後、横浜甦生病院内科・ホスピス勤務、ホスピス病棟長を経て、06年にめぐみ在宅クリニックを開院。「ホスピスで学んだことを伝えたい」と、学校を中心に「いのちの授業」を展開。多死時代に向けた人材育成に取り組み、15年にエンドオブライフ・ケア協会を設立。著書『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』(アスコム)は、25万部を突破するベストセラーに。新著は『2800人を看取った医師が教える人生の意味が見つかるノート』(アスコム)。
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