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看取りのプロが教える「人生の最期」を温かく見守るための対話術

『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』の著者に聞く(1)

 西門和美=フリーライター

 2025年、日本では高齢者が全人口の30%以上になると予想されており、人を看取る(みとる)ことが日常になる「多死社会」時代を迎えつつある。若い世代であっても、この社会の一員として、「看取り」を見つめ直すべきときに来ている。『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』の著者・小沢竹俊さんは、2800人以上の看取りを経験してきた医師。そんな小沢さんに、人生の最期を見据えた人とともに穏やかに生きていくためのヒントを聞いた。今後来るであろう家族の最期を、温かく見守るために必要な知識が詰まっているはずだ。

「なぜ私が命を落とさなければならないの?」と言われたら……

人生の最期が近いことを知った人から、「なぜ私が、命を落とさなければならないの?」と言われたら、あなたなら何と答えるだろうか(©Cathy Yeulet -123rf)

 人生の最期が近いことを知った人は、周囲に苦しい問いを投げかけることがある。

 「なぜ私が、命を落とさなければならないの?」「どうせ長くはないのだから、生きていても仕方がないよね?」

 そんなとき、あなたなら何と答えるだろうか。苦しむ相手に対し、安易な励ましは通用しない。適切な言葉を見つけるのはかなり困難だ。

 『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』の著者・小沢竹俊さんは、「人生の最期が近づくことは、究極の苦しみ。その苦しみをなくすことはできません。でも、そんな苦しみをもつ人でも、生きる支えを見つければ、少しだけ穏やかに日々を過ごせるのではないでしょうか」と話す。

苦しみには解決できるものとできないものがある

 ここではまず「そもそも苦しみとは何なのか」をひもといてみよう。

 小沢さんは「苦しみとは、希望と現実とのギャップがある状態。例えば、昼寝していたいという希望に対し、起きなければならない現実があり、その開きを埋められないから苦しい。長く幸せに生きていたいという希望があるのに、現実ではかなわないから苦しいんです」と話す。

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 そして苦しみの種類は、解決できるもの・できないものに二分される。「例えば、薬を飲んで解決できる苦しみであれば、薬をお渡しすればそれでいいでしょう。でも、あと1カ月しか生きられない人に『来年の孫の入学式まで生きたい』と苦しみを打ち明けられても、希望と現実の開きは埋められない。解決のしようがありません」

 死を前にした多くの人が向き合うのは、“私”を失っていく苦しみ。「孫の成長を見守る私、職場で頼りにされる働き者の私、友だちとの食事を楽しむ私…。それこそが私だったはずなのに、できないことがどんどん増えて、人の役にも立てなくなっていく。“私”を失った自分に、まだ価値はあるのだろうか。そう感じて、苦しくなるのです」

 時計は、正確な時刻を示しているからこそ役に立つ。壊れて止まれば存在意義を失ってしまう。役に立たなくなった私は、動かない時計のようなもの……。人生の最期が間近に迫っている人が、そんな理不尽な苦しみにとらわれ、無力感に襲われるのは無理もない。

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