会社勤めを続けている限り、避けては通れない職場の健康診断。自覚症状のない病気を見つけてくれるのは有難いが、仕事に追われるなかで再検査を受けるのはできれば避けたいのが人情。異常値を指摘されたとしても、どこまで生活を見直せばよいのか、今ひとつ釈然としない人も多いだろう。このコラムでは、各種検査への臨み方や結果の見方、検査後の対応など、誤解交じりで語られやすい職場健診についてわかりやすく解説する。
Q 職場健診の胃エックス線検査で「要精密検査」の判定だったが、内視鏡検査はつらそうだし、気になる症状もないので受けなくてもいい?
A 鎮静薬や鼻から入れる内視鏡を使えば、苦痛はある程度軽くできます。今は症状がなくても、判定に従って検査を受けましょう。
職場健診では「胸部エックス線検査」が実施されているが、これは主に肺を調べるための検査だ。質問者が受けた胃エックス線検査は「上部消化管エックス線造影検査」と呼ばれるもので、通常の職場健診の必須項目には含まれていない。企業が任意またはオプション検査として実施している場合や、対策型がん検診と呼ばれる自治体などの胃がん検診で受けるのが一般的だ。
胃の内視鏡検査は今でもつらい?

胃エックス線検査で何らかの病気の疑いがもたれた場合は、胃内視鏡検査(上部消化管内視鏡検査)による精密検査を受けることになる。この内視鏡検査の苦痛などの不安から、できれば検査を受けたくないと思う人が少なくない。
だが、消化器関連の疾患を専門とする慶應義塾大学医学部の鈴木秀和教授は、「検診は、症状がなく、健康に見える人も含む集団から、特定の病気のある人を早期に発見し、早期に治療することを目的として実施されているものです。ですから『要精密検査』と判定された場合は、症状がなくてもその指示に従って、胃内視鏡検査を受けた方がいいでしょう」と話す。
胃の内視鏡検査は、かつては鎮静薬を使わずに行われていたために、「強い苦痛を伴うもの」というイメージが強い。しかし、最近では注射による鎮静薬を使ったり、新しい鼻から入れるタイプの細い内視鏡を使ったりして、咽頭反射(吐き出しそうになること)や苦痛を感じにくくした検査方法が普及してきている。「胃内視鏡検査は医療機関によって少しづつ方法が異なり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、事前にホームページなどで確認したり、問い合わせたりしてみるといいでしょう」(鈴木教授)という。
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