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「わたしも、がんでした」

もし自分ががんになったら?

病院編 がんと共に生きる、働く時代がやってきます(2)

 堀田 知光=国立がん研究センター理事長

「がんになった=仕事も、人生ももうおしまい」という時代は終わりました。いま、日本では、働きながら治療をするサポートシステムが整えられようとしています。がんと共に生き、働く時代。それを家族、医療のプロ、職場、地域社会など周囲の人みんなが支える時代がやってくるのです。

 そんな時代にがんになったら、本人は、家族は、周囲は、どう考えどう行動すればいいのでしょうか。まず、がん治療と研究に長年携わってきた立場から、現在おすすめできる具体的な対処法を説明します。

 また、がんになっても生きやすい社会にしていくためには、これから何が必要なのでしょうか。いま、私たちが取り組んでいることを紹介しましょう。

誰もが必ず落ち込む、それで大丈夫。大切なのは「心構え=マインドセット」です。

 「がんと共に生きる、働く」時代になった一方で、昔もいまもこれからも、ずっと変わらないことがあります。それは、患者さん本人が「自分はがんだ」という事実を知ったときのことです。

 誰もが落ち込みます。当然です。

 では、どうすればいいのでしょう?

 大切なのは、落ち込んだ、という自分の心境そのものを、素直に受け入れることです。

 落ち込んだ、という心境を受け入れることさえできれば、あとはそこから抜け出すだけです。がんという病と「共に生きる」には、医学的治療のみならず、患者さんと周囲の「心構え=マインドセット」がとても大切です。ただし、けっして無理をしてはいけません。

 落ち込んでしまったら、まずはその状態を受け入れる。これが落ち込んだときの「心構え=マインドセット」です。そこから抜け出すには、落ち込んだ気持ちを、患者さんがひとりで抱えないことです。オープンに、周りに、自分の心境を話すことです。

図1◎ ストレスへの心の反応
参考:国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス「がんと心」(クリックするとページにジャンプします)
[画像のクリックで拡大表示]

 自らを追いつめない。痛みや、つらさも我慢しない。落ち込んだ状態からの脱出は、ここから始まります。ということは、患者さんの周囲の協力がとても重要になります。家族は、まず落ち込んだ本人の気持ちをきっちり受け止めてあげてください。職場の方々も、同じです。そして会社として万全の対応ができることを伝えてください。医療者は、患者の痛みやつらさと向き合い、その軽減に努力をはらっていきます。

 周囲とコミュニケーションをとり、病院で医療者とちゃんと話し合う。すると、そのうちに新しい生きる目標や、立ち直るきっかけが生まれてきます。「あの仕事最後までやりきるぞ」「来年は孫が生まれる」「春になったら、家族で旅行に行こう」……日常の、当たり前の目標が生まれてくると、治療に対して前向きに考えられるようになってきます。

 しかし、本当に立ち直って治療を進め、がんと共に生き、がんと共に働くまでには、それだけでは、足りないかもしれません。人間が心を動かすには、同時に体を動かすことが重要です。そう、次にすべきは、「実際に何をするか=行動のマネジメント」です。

 次回はがんや闘病を上手にマネジメントする方法についてお話します。

国立がん研究センターがん対策情報センター編
『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』 (日経BP社、2013年9月発行)より転載


堀田 知光(ほった ともみつ)さん
国立がん研究センター理事長
堀田 知光(ほった ともみつ)さん 1969年名古屋大学医学部卒業。独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター院長などを歴任後、2012年より現職。厚生労働省「未承認薬使用問題検討会」座長ほかさまざまな政府委員も務め、ドラッグラグ解消やがん登録推進などの課題にも積極的に取り組んでいる。

『わたしも、がんでした。 がんと共に生きるための処方箋』
(国立がん研究センターがん対策情報センター編、日経BP社)好評販売中

 医学の進歩によって、「がん=迫りくる死」ではなくなっています。実はかなり多くの人が、がんと共に社会で暮らしています。しかし、がんと共に生きることや働くことは、日本社会ではまだまだ普通のことと思われていません。がんと共に生きるとは、働くとは実際にはどういうことなのか。それを知っていただくために、本書ではがんに関わる当事者の方々に語っていただきました。──「はじめに」より

>>詳しくはこちら(Amazonのページにジャンプします)

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