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たかが咳、されど咳 ~秋口の長引く症状にどう対処?~

 田中美香=医療ライター・ジャーナリスト

薬局にマスク、家電量販店に加湿器が並び始める秋。風邪をひかないよう気をつける人が増える一方、「風邪は治ったのに、咳だけが治らない」「朝方の咳で眠れず仕事に差し支える」と悩む人が増える季節でもある。
咳はごくありふれた症状だからこそ、病名を即座に判断することは難しい。諸説はあるが、3週間以上続く咳のうち一番多いのは咳喘息、続いてアトピー咳や感染後咳、その他に慢性気管支炎、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症…と、一口に咳と言っても原因も治療もさまざまだ。風邪の本格シーズン到来に備え、改めて咳について考えてみよう。

長引く咳を伴う病気の中で、一番多いのは「咳喘息」

秋口のしつこい咳の原因は?(©contrastwerkstatt-Fotolia.com)

 「『風邪が治って喉も痛くないのに、咳が2~3週間止まらないんです…』。そう言って診察室を訪れる患者さんの中で、一番多いのが咳喘息です」。そう話すのは、聖路加国際病院呼吸器内科部長の蝶名林直彦氏だ。

 喘息といえば、普通は夜中から朝方にかけて発作が出て、ヒューヒュー・ゼイゼイという喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が続くものを想像する。だが、咳喘息は症状が少し異なる。蝶名林氏によれば、咳喘息は喘息の一つのタイプでありながら、呼吸困難や喘鳴はなく、咳だけがあるという。このため、「単に風邪をこじらせたのだろう」と誤解している人も少なくない。

 「咳喘息の特徴は、喘息と同様に気管支を広げる吸入薬(気管支拡張薬)が効くことです。風邪は治って熱や喉の痛みはないのに、乾いた咳だけが続く。聴診器を当てても喘鳴が聴こえない、という人には、まず即効性のある吸入気管支拡張薬(通常はβ刺激薬)を使っていただきます。すると、翌日から症状が良くなる方が多いです。気管支拡張薬と気道の炎症を抑える吸入ステロイドが入った合剤で治療することもあります」(蝶名林氏)。まず1~2回気管支拡張薬を試して、効き目があれば咳喘息として治療を続け、効かなければ他の病気を疑って次の検査へ進めていくのが一般的な診療の流れだ。

咳喘息は2~3年で喘息へ移行することもある

 咳喘息は、普段は喘息の症状がない人にも起こりうるため、他人事だと思ってはいけない。特に風邪の後に発症するパターンが多いので、ただの風邪だと思って病院に行かずに我慢しているうちに、1カ月程度で治るものの、半年後、1年後に風邪をひくと、やはり咳がだらだらと長引く…。そんな場合は、一度は咳喘息を疑ってみた方がいいだろう。

 咳喘息は、軽いと上記のように自然に治ることもあるが、一方で、患者の2~3割が将来的に喘息に移行する可能性も指摘されている。喘息への移行を防ぐためには、咳喘息かどうかを見極めて、早い段階で適切な治療を受けることが大切だ。「咳喘息では、1日1~2回の吸入を約3カ月続けます。症状が治まっても、医師から指示された期間は吸入を続けた方がいいでしょう」(蝶名林氏)。

抗ヒスタミン薬が効く「アトピー咳」

 咳喘息を疑って吸入気管支拡張薬や吸入ステロイドで治療しても、効果が見られない場合、「アトピー咳(アトピー咳嗽;がいそう)」の可能性もある。長引く咳を伴う病気としては咳喘息に次いで多く、やはり風邪の後に起こりやすい。

 アトピー咳というのは、いわゆるアレルギー体質の人(自分や家族にアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患がある人)に多い咳で、夜間から朝方の咳や、喉がイガイガする症状などが現れる。アトピー咳の症状は咳喘息と似ていて紛らわしいが、気管支拡張薬が効かない代わりに飲み薬の抗ヒスタミン薬が効くのが特徴だ。

咳喘息でもアトピー咳でもない…残ったものは「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」

 アトピー咳と並んで多いのが「感染後咳(感染後咳嗽)」だ。感染後咳嗽というのは、文字通り、ウイルスなどの感染の後に起こる咳のこと。鼻水やのどの痛みなどの風邪症状の後に、乾いた咳だけが続くケースのうち、咳喘息でもアトピー咳でもない(気管支拡張薬も抗ヒスタミン薬も効かない)場合に、残ったものが「感染後咳」と総称される。「感染後咳は、“何だかおかしい”と思って受診する頃が、実は一番のピークであることが大半です。そうこうしているうちに何となく治ってしまう。何とも皮肉なものです」(蝶名林氏)。

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