血液は体に必要な栄養、酸素、熱などをくまなく運ぶ、生命活動に欠かせないもの。そこにトラブルがあると体に不調をもたらす。その代表が、貧血と低血圧。似ている症状もあり混同しやすい。詳しく見ていこう。
顔色が悪い、めまい、疲れ、だるさ…など、貧血と低血圧には共通した症状がある。どちらも血液が体に届けている酸素の量が不足しやすいために起こる症状だが、原因は異なる。
貧血の場合に問題なのは酸素を運搬する赤血球やヘモグロビンが足りない点。詳しい基準は図1のとおりだが、赤血球やヘモグロビンが正常値を下回るときに貧血と診断される。
「赤血球中に含まれるヘモグロビンは酸素の運搬役で、この量が減ったり、赤血球そのものが少なくなると、全身に十分な酸素が供給されなくなり、貧血を発症する」と女性の不調に詳しい目黒西口クリニックの南雲久美子院長はいう。
症状は全身に出る。よくある貧血の症状は、めまいや頭痛だが、これは脳の酸素不足による。ひどい場合は、失神してしまうことも。筋肉の酸素が不足すると、熱やエネルギーの産生効率が悪くなり、そこで生まれた老廃物の運搬もスムーズにいかないため体がだるく疲れがとれないといった症状も出てくる。
階段や坂道を上がると、動悸や息切れも起きるが、これは血液の酸素を運ぶ量が少ないので循環を上げてカバーするためだ。「貧血の人は、疲れやすく、ちょっと走っただけで息切れがする」と南雲院長。
貧血の中でも、女性に多いのが、「月経による出血が原因で鉄が不足する鉄欠乏性貧血です」と南雲院長。ひと月の月経で失われる経血量は平均して35mLで、血液1mLには鉄が0.5mg含まれているので約17.5mgの鉄が失われることになる。
「食事で摂取する鉄のうち、胃腸から吸収されるのはわずか10%程度。一方、1日に汗や尿などで排出される量も1mgあるので、積極的に鉄を摂取しないと、収支がマイナスになってしまう。これが影響している」と南雲院長。
月経周期の短い人は貧血になりやすい
女性なら誰でも鉄欠乏性貧血のリスクがあるといえるが、こんな人はさらに要注意。
「ダイエットで食事量を制限したり、好き嫌いが多く偏った食事をしている人は、いっそう鉄が不足しがちで、貧血を発症しやすい。月経周期の短い人や子宮筋腫があって経血量が多い『過多月経』の人も同様だ。生活改善で貧血を改善できることもあるので、生活の見直しも大切」と南雲院長。具体的な改善策は3ページ目を参照してほしい。
貧血は長引くと心臓への負担で心肥大や不整脈につながり、決して軽く見てはいけない。再生不良性貧血や溶血性貧血など重大な病気もある。まずは自分でできる生活改善から始めて、それでも治らなければ病院へ。
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