日経グッデイ

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

男性が悩むオシッコ「ちょび漏れ」の対策法とは?

冷たい…、恥ずかしい…、クリーニング代もバカにならない!

 荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

  会議前に慌ててトイレに行ったとき。「いちもつ」が縮こまるほど寒いとき。トイレを出た瞬間、股間に広がるジワッと冷たい感触。慌ててズボンを見ると太もものあたりに点々とシミ出ている。同僚や若い女子社員に見つからないように、会議資料などで股間を隠しながら歩く…。年齢に関係なく、男なら誰でも経験したことのあるオシッコの「ちょび漏れ」。なんで起こるのだろう。どうしたら防げるのだろう。
(イラスト:川崎タカオ)

 なぜ「ちょび漏れ」が起こるのか。日本大学板橋病院泌尿器科の高橋悟主任教授は「男の泌尿器の構造を見ると、その理由がよく分かる」と解説する。まず体内で尿を溜める役割を果たしているのが膀胱(ぼうこう)だ。膀胱内に尿がたくさん溜まると、脳に「オシッコがしたい」と信号が伝わる。トイレに行って排尿の準備が整うと、膀胱が収縮すると同時に尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)が緩んでオシッコが放出されるというわけだ。

「トイレに行った直後」が圧倒的多数

 では尿道括約筋が「ちょび漏れ」の原因なのか。たしかに、加齢によって尿道括約筋など膀胱を支える筋肉の働きなどが弱ってくると、ちょっとした刺激によって軽度の尿失禁、いわゆる尿漏れが起こることがある。中高年女性では「せきやくしゃみをしたとき」「重いものを持ったとき」などに尿漏れが起こるし、男性でも年齢が進むとこのタイプの尿漏れは多くなる。しかし、「ちょび漏れ」のメカニズムはちょっと異なる。中高年だけでなく20代でも起こるし、起こるきっかけは動作などとは関係がなく「トイレに行った直後」が圧倒的だ。

 尿道括約筋がきちんと機能しても、男性の尿路は女性と比べて長いので、尿路にオシッコが残りやすい。それが排尿後に漏れてくる。「そのため、専門家は尿失禁とは呼ばず『排尿後の尿滴下』と呼ぶ」と高橋主任教授は話す。女性の尿漏れと比較して、量も1回小さじ1杯(5cc)程度と少ないが、それでも薄いグレーのスーツなどを着ているときは、シミがはっきりと目立ってしまう。

“肛門閉め体操”でちょび漏れ対策を

 対策は、まずは落ち着いてしっかり尿路のオシッコを出し切ること。高橋主任教授は「男性には尿路に残ったオシッコを絞り出すための球海綿体筋(きゅうかいめんたいきん)がある」と話す。男性が射精するとき、精液を勢いよく放出する役割も果たしている筋肉だが、オシッコの後には誰でも無意識に収縮させている。陰茎部の裏側の根本付近に指を当てて、肛門を閉めるように力をこめると筋肉が動くのを感じることができる。

球海綿体筋が衰えるとちょび漏れが起こりやすくなる
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 加齢とともに前立腺肥大が進むと、球海綿体筋の機能が衰え、頻繁な「ちょび漏れ」の原因になる。「肛門を閉める運動を4~5回を1セットとして行い、1日では全体で60回から80回やると衰えを抑えられる」(高橋主任教授)という。

股上の浅いズボンは危険!

 オシッコの仕方や衣服も「ちょび漏れ」と関係がある。オシッコをするとき陰茎部の根本が上を向いていると、その部分に尿が溜まってしまうことがある。とくに股上が浅いズボンなどでは、ペニスを引き上げるようにしてオシッコするので「ちょび漏れ」を起こしやすい。

 最近増えている「前開き」のないボクサーパンツも、同様に「ちょび漏れ」の原因となりやすい。高橋主任教授は「ズボンをしっかり緩めて、楽な姿勢で排尿することが、こうした尿漏れの対策になる」と話している。

 最近、男性の少量の尿漏れに対応する吸水ガードも市販されている。ボクサーパンツなど下着の内側に貼るだけで、50cc程度まで吸水すると同時に消臭するという製品。薄手なので、着替えているところを人に見られても気づかれない。恥ずかしい「ちょび漏れ」で悩んでいる人は試してみることをお薦めする。

 男性なら平均して1日に5~6回は行くオシッコ。年齢とともに、さまざまなオシッコの「お悩み」が出現する。「トイレにいってもなかなか出ない(前立腺肥大症)」「会議の途中で我慢できないほどの尿意を感じる(尿意切迫感)」「トイレまで我慢できないことが増えた(尿失禁)」などの自覚症状がある場合は、専門医による治療が必要になる可能性も。そんなハードなお悩みについては、また改めて詳しく紹介する予定だ。

高橋 悟(たかはし さとる)さん
日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授
高橋 悟(たかはし さとる)さん 1985年、群馬大学医学部を卒業。東京大学医学部附属病院、米メイヨークリニックなどの勤務、東京大学医学部助教授を経て、2005年より現職。2003年には、天皇陛下の「前立腺がん」の手術を担当する医療チームに加わった。排尿関連のトラブルでは、日中や睡眠中に突然の強い尿意におそわれる「過活動膀胱」や、排尿障害を引き起こす「前立腺肥大症」などの治療を多く手がけている。