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おとなのカラダゼミナール

風邪で熱が高いのに、ぞくぞく震えるのはなぜ?

震えは命を守る体の最終手段だった

 佐田節子=ライター

震えにより行動を犠牲にして体温を上げる

 さて、この第2段階でもまだ体温上昇が不十分と見なすと、体はいよいよ最終段階の「震えによる熱産生」へと入る。第1段階である皮膚血管の収縮と、第2段階の褐色脂肪組織の燃焼は、自律神経の一つである交感神経によってコントロールされていたが、震えを起こすのは運動神経だ。まさに運動をするかのように、骨格筋をブルブルと震わせて、熱を作り出す。

 風邪の引き始めはぞくぞくする程度だった寒気が、がたがた震える状態にまでひどくなり、同時に熱がぐんぐん上がってくる。寒いのに、熱っぽい。「とにかくつらい」という風邪のクライマックスに突入する。体内では、体温上昇とともに、免疫細胞による病原体との死闘が繰り広げられている。

 震えは体温を上げる最後の手段だが、これは命を守る最終手段でもあると中村氏は言う。「震えは、運動神経と骨格筋を使って熱を作り出す行為です。これは別の言い方をすると、自分の行動を犠牲にしてでも、体温を上げようとしている状態。運動神経と骨格筋を震えに使っていますから、他の行動がとれない。手が震えてしまって、上手く字が書けないという経験は誰にでもあるでしょう。動物なら、天敵に狙われても逃げられない状態です。そんなリスクと引き換えに、震えによる熱産生を行っているのです」。

 たかが風邪と思いがちだが、風邪を引いてがたがた震えが止まらないような状態は、私たちが思っている以上に体にとっては危機的な状況と言える。そして、そこで命を守る仕事をしているのが、体の震えなのだ。なお、このような震えの仕組みをすべて取り仕切っているのは、脳にある体温調節の司令塔である。この働きについては次回で紹介しよう。

中村和弘(なかむら かずひろ)さん
京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット准教授
中村和弘(なかむら かずひろ)さん 1997年、京都大学薬学部卒業。2002年、同大学大学院薬学研究科博士後期課程修了。薬学博士。専門は生理学、神経科学、自律神経学。米国オレゴン健康科学大学博士研究員、京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット講師などを経て、2014年から現職。体温調節や感染性発熱、ストレス反応などの自律生理機能にかかわる脳内メカニズムの研究に携わる。寒冷時や発熱時の「ふるえ」がどのような脳神経回路の仕組みから生じるかを世界で初めて解明し、注目されている。

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