日経グッデイ

左党の一分

いよいよ忘年会シーズン突入! 尿酸値を上げない大事なポイントとは?

左党の尿酸対策【後編】~お酒を選ぶなら赤ワインがいい?~

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

 ミドル以上の左党の多くが気にする尿酸値、そして痛風。前回は、実はアルコール自体に尿酸値を上げる作用があり、飲酒量が多くなるほど痛風リスクが高まることを紹介した。酒量を抑えなければならないのは悲しいが、七転八倒の痛風発作はなんとか避けたいところ。
 では、尿酸値を下げ、痛風におびえない生活にするには、生活習慣をどう改善すればいいのだろうか。 前回に引き続き、東京慈恵会医科大学名誉教授の細谷龍男さんに話を聞いていく。

 早いもので、今年も師走に入ってしまった。いよいよ本格的な忘年会シーズンの到来である。昨今は忘年会の日時が早まっているようで、11月後半からスタートしている方も少なくないだろう。ありがたいことに私もあちこちからお誘いをいただく。日によっては忘年会のかけもちなんてことも珍しくない。

気がつけば、今年ももう師走。忘年会でスケジュールがいっぱい、という人も多いだろう。尿酸値を上げないポイントをしっかり頭に入れておこう。(c)PaylessImages -123rf

 最近の忘年会は飲み放題が増えた。飲まない人にはうれしくないかもしれないが、左党にとっては、酒代、そして周囲の冷たい目線を気にせず、遠慮なく注文できるのはありがたい。飲み放題となると、最初はビール、喉が潤ってきたら日本酒&ワイン。そして宴もたけなわになってくると、ハイボールをチェーサー代わりに飲みながら、仕上げに本格焼酎のロックなんてことも(…筆者だけか)。

 宴会が続く時期、尿酸値が高い左党は、尿酸値を上げるビールに、プリン体た~っぷりのおつまみのダブルパンチで、「痛風の症状が出たらどうしよう」とひやひやしているのではないだろうか?

 さて、前回の記事では、「ビールはプリン体を多く含み尿酸値を上げるというのは確かだが、実はアルコールそのものに尿酸値を上げる作用がある。だから、ビールだけ控えればいいわけではなく、アルコールの摂取量を抑えることが大事」だということをお伝えした。

 しかし、アルコールそのものもダメ、ビールはもっとダメとなると、左党はどうやって尿酸値を下げればいいのだろうか。「コレさえすれば尿酸値が下がる」などというありがたい対策はないものか。今回も前回に引き続き、痛風や高尿酸血症に詳しい東京慈恵会医科大学名誉教授の細谷龍男さんに話を伺っていく。

できれば日本酒1合、ビール中瓶1本に抑えたい

 細谷さんが、酒飲みの人にまず勧めるのは、酒量を減らすこと。やはり、お酒を減らさなくてはならないのか…(泣)。

 「健診などで尿酸値が高いと指摘された人は、まずは酒量を減らし、適量を守ってお酒を楽しむようにしましょう。前回も紹介しましたが、全くアルコールを飲まない人に比べ、1日に純アルコールにして30~49.9gを飲む人は痛風発症リスクが約2倍に高まります」(細谷さん)

 ここでいう「適量」とは、本コラムで毎度出てくる「純アルコール20グラム」を指す。日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本程度である。つまり、日本酒を2合飲めば、リスクは2倍になるわけだ。さらに、細谷さんは、「休肝日」を設けることを勧める。

 「週2日の休肝日を設けることも大事です。毎日飲む人は尿酸値が上がりやすいという報告もあります。ウイークデーに飲む機会が多いなら週末は控えるなど、自分のライフスタイルに合った方法で休肝日を設けるといいでしょう」(細谷さん)

 やっぱり適量と休肝日はここでもセットなのだ。毎日飲む習慣のある人にとっては耳が痛いが、「男泣きするくらい痛い」痛風を発症させないためにも、なんとか自制しよう。また、前回も解説したが、尿酸値が高い状態(高尿酸血症)は、痛風の発作が起こるリスクが高くなるだけでなく、様々な生活習慣病を招きやすく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めることも改めて認識しておきたい。

断酒がつらいなら、程よく飲んでストレス発散!

 とはいえ、1日1合というのは左党にとってはつらい量だ。中には、「ええい、この際、いっそのこと尿酸値が下がるまでしばらく飲むのを我慢する」と断酒を思い立つ方もいるかもしれない。しかし、細谷さんは、「アルコールを飲まないことが我慢、つまりストレスになるのなら、かえって良くない」のだという。

 「お酒を我慢することがストレスになるなら、適量を守って飲んだほうがいい。というのは、ストレスと尿酸・痛風は関係が深いのです。ストレスによる自律神経の乱れが尿酸の産生を促すとともに、尿酸の排出を低下させると考えられています」(細谷さん)

痛風発作のほとんどがひざから下で起こる。(c)thamkc -123rf

 「私が診た患者さんでも、ストレスの影響で痛風の症状が出てしまい、翌日の大切な式典を欠席せざるを得なくなった方がいます。ストレスが多い生活は、尿酸値を上げる大きな要因です。ストレスの原因を見つけ、ため込まないのが大事です。ストレスのサインをキャッチしたら、無理せず休むことを考えましょう」(細谷さん)

 なるほど、程よく飲んで、ストレスを発散することは決して悪いことではないわけだ。これを聞いてちょっとホッとする。

ワインは尿酸値が上がりにくい!?

 細谷さんは、お酒の種類にも気を配るといいと話す。実は赤ワインは尿酸値が上がりにくいのだという。

 お酒の種類と痛風発症の関係を調査した研究によると、痛風発症リスクは、ビールが最も高く1.5倍で、スピリッツ(蒸留酒)は1.2倍となっているが、ワインについてはその関係は認められなかった(下のグラフ)。

アルコールの種類と痛風発症の関係
(『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版』より)
[画像のクリックで拡大表示]

 もちろん飲み過ぎはNGだ。「適量を守る」という条件はあくまで変わらない。

肥満を改善することが何より大事

 酒量を減らす、休肝日を作るのはもちろんだが、細谷さんは「尿酸値を下げたいのであれば、肥満を改善することが一番大事」と熱を込めて言う。

 「尿酸値を下げるには、食生活を改善し、肥満を予防することが重要です。肥満と診断された約7割は高尿酸血症になるというデータもあります。今の食事を見直し、最低でも3~6カ月、バランスのいい食生活を心がけ、尿酸値、および体重の変化をチェックするといいでしょう」(細谷さん)

 細谷さんは、「かつ丼などの丼ものよりも、定食を選んだほうがいい」とアドバイスする。定食ならば、野菜を使った総菜などもつく。要は、カロリーオーバーに注意しつつ、多種の食品を少しずつ、バランスよく食べることが大切なのだ。「食事のメニューを考えるときは、特定の食品に偏らないことが大事です。高尿酸血症の人は、肉などの動物性脂肪が多く、野菜が少ない傾向があります。特に野菜は意識して多くとるようにしましょう。また、乳製品もとるといいでしょう」(細谷さん)

プリン体の多い食品はやっぱり避ける?

 では、プリン体を多く含む食品にはどう接すればいいのだろうか。プリン体は私たちが普段食べている食品のほとんどに含まれているが、中でも、魚の干物やレバーなどに多く含まれている。

 細谷さんは、食品単体のプリン体含有量は過度に気にしなくていいと話す。これは前回解説したように、プリン体の多くは体内で作られており、食品から取り込まれる比率は2~3割程度で、尿酸値に与える影響もさほど大きくないことが分かってきたからだ。

 細谷さんは、「高プリン体食品でも過剰摂取しなければいい」と話す。昔に比べ、「これもダメ、あれもダメ」という厳しいルールが緩和されたのはありがたいことだ。

 「ただし、高尿酸血症の人の中には、プリン体の過剰摂取で、高尿酸血症が悪化する人もいます。こういった人はプリン体の摂取量を制限する必要があります」(細谷さん)。高プリン体食品の代表は、レバーや魚の干物だ。一般に「魚卵はプリン体が多い」と思われているが、必ずしもそうではない。なお、コレステロールが多いと避ける人が多い卵(鶏卵)もプリン体は少ない。


プリン体が極めて多い食品
(100g当たり・300mg~)
プリン体が多い食品
(100g当たり・200~300mg)
  • 鶏レバー:312.2mg
  • まいわし(干物):305.7mg  
  • いさき白子:305.5mg
  • あんこう肝 酒蒸し:399.2mg  



  • 豚レバー:284.8mg
  • 牛レバー:219.8mg
  • かつお:211.4mg
  • まいわし:210.4mg
  • 大正えび:273.2mg
  • まあじ(干物):245.8mg
  • さんま(干物):208.8mg

1日に1回、体重計に乗ろう

 尿酸対策で、バランスの良い食事を心がけるとともに、ぜひ実践してほしいのが「日に一度の体重測定」。私の周囲を見渡すと日々の体重測定の習慣がない人ほど、メタボの傾向にある。しばらく体重計に乗っていない人にとっては恐怖に近いものがあるが、これもまた肥満を防止する大きな策の一つである。

 「最近の体重計は体重だけでなく、体脂肪やBMIなどが出るものも多くあります。1日に一度、体重計に乗って、自分の状態を知るのは体重管理には欠かせません。ベースとなる体重が分かっていれば、ちょっと増えた時点で翌日の食事を減らすなど、自然と調整ができるようになります」(細谷さん)

 実際、私も朝晩、体重計に乗る習慣をつけた途端、3キロ体重が減った。細谷さんの言う通り、ベースとなる体重よりも増えたら翌日は野菜中心の生活にする、運動量を増やすなど自分なりのケアができるようになった。体重が、飲み過ぎ、食べ過ぎのストッパーになるのだ。

激しい運動は避け、有酸素運動を

 そして、適度な運動もまた大事な要素。しかし「激しい筋トレ、短距離走といった急激に大量のエネルギーを必要とする無酸素運動は避けること」と細谷さん。

 「運動は筋トレよりもウォーキングや水泳など、軽い有酸素運動がお勧めです。激しい筋トレは、酸素の供給が追いつかず、筋肉中のATP(アデノシン3リン酸、詳しくは前回を参照)を使うため、プリン体が急激に増え、尿酸値が上がってしまうからです。またエネルギーを急激に消費することで筋肉からの乳酸が増加し、腎臓の尿酸の排出が抑制され、尿酸値が上昇してしまいます」(細谷さん)

 世は空前の筋トレブームだが、尿酸値に限っては有酸素運動に軍配が上がる。バスを使わず駅まで歩く、エレベーターを使わず階段を使うなど、生活の中にこまめに動くことを取り入れるのもプラスになりそうだ。「運動そのものが直接尿酸を下げるということではなく、運動によって肥満が改善することで尿酸値が下がるのを期待できるのです」(細谷さん)

水分は多めにとる! コーヒーもお勧め

 また、普段の生活で水分を多めにとることも尿酸値を下げるには効果的だという。肝臓で分解された尿酸は尿とともに体外へと排出される。尿の量が少なくなると、尿酸の排出量が低下して、尿酸値を下げることができないのだという。

 「尿の量で1日2L程度の量を維持していただくのが理想的です。前にもお話ししていますが、脱水も尿酸値を上げます。通常、人の尿量は1日1.0~1.5Lですので、こまめにいつもの倍くらいの水分を摂取してください。もちろん水分の補給はカロリーやアルコール成分のない水やお茶などにしてください」(細谷さん)

 水分摂取の際に、甘い清涼飲料水や果糖の多い果汁100%ジュースなどは適さないと細谷さんは話す。「果糖の過剰摂取は尿酸を増やすことにつながります。実際、砂糖(ショ糖=果糖+ブドウ糖)入りの甘いソフトドリンクの摂取量が多いと痛風発症のリスクが高まるという報告もあります。砂糖がたっぷり入った清涼飲料水やジュースなどの飲み過ぎには注意しましょう」(細谷さん)

 あまり知られていないが、コーヒーは尿酸値にいい影響があるという。細谷さんは、「コーヒーの摂取もお勧めです。米国のコホート研究で、『コーヒーを多く飲む人ほど痛風発症のリスクが低い』という報告が出ています」と話す(Arthritis Rheum. 2007;56:2049-2055.)。この研究では、全くコーヒーを飲まない人に比べ、日に6杯以上飲む人の痛風発症の危険度は半分以下となっている。これはコーヒー好きの左党にとっては朗報である。

コーヒー摂取量と痛風発症の関係
米国でのコホート研究で、コーヒーの摂取量が多い人ほど痛風発症リスクは少ないという結果が出ている。(『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版』より)

 そういえば私の周囲の「尿酸値が高い」と嘆く人の多くは、お茶より砂糖たっぷりのジュースや甘いサワー、コーヒーでも砂糖・クリームたっぷりのものを好む傾向があるように思う。やはり結果には、それ相応の原因がつきものなのだ。

        ◇        ◇        ◇

 細谷さん曰く、結局、「これをしたから尿酸値が劇的に下がる」というものはなく、食事の改善、適切な酒量、休肝日、そして運動といった基本的なことを地道に続けることが、尿酸値を下げる最良かつ最短の手立てだという。だがこれら全てのことをやりつくしてもなお尿酸値が下がらない場合は、医師に相談してほしいと話す。

 「何をしても尿酸値が下がらない方は、医師と相談しながら薬で尿酸値をコントロールすることも検討しましょう。前述したように、尿酸値が高いまま放置してしまうと、痛風発作だけでなく、生活習慣病のリスクが高まります」(細谷さん)

 もはや尿酸値やγ-GTPの数値の高さを自慢する時代は終わった(遠い目)。今は尿酸値や体重など数値をコントロールできてこそ、かっこいい左党なのだ。

細谷 龍男(ほそや たつお)さん
東京慈恵会医科大学名誉教授/慢性腎臓病病態治療学教授
細谷 龍男(ほそや たつお)さん 1972年東京慈恵会医科大学卒業。1997年同大第二内科(2000年内科学講座腎臓・高血圧内科と改組)教授。2013年4月から現職。日本痛風・核酸代謝学会理事長、日本腎臓学会・前理事、第110回日本内科学会総会・講演会会頭。
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