日経グッデイ

左党の一分

痛風・尿酸値が怖いなら、ビールより酒量に気をつけよ!

左党の尿酸対策【前編】~酒量が多いほど痛風リスクが高まる!~

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

ミドル以上が集まる会社などの飲み会で、「とうとう痛風になった!」などという同僚の話を聞いたことがある人は多いだろう。痛風は左党が最も恐れる病気の1つ。いつ痛風になるかとビクビクしている人も少なくないだろう。痛風を気にして、ビールを控えたり、プリン体が多い食品を避けているという人もいる。しかし、ただビールを控えるだけでは意味がなく、飲酒そのものが問題になるという。これは本当だろうか。そこで今回は、飲酒と痛風・高尿酸血症の関係を、東京慈恵会医科大学名誉教授の細谷龍男さんに話を聞いた。

 中高年を迎えた多くの左党にとって、気になるのは尿酸値。そう、尿酸値と言えば、風が吹いただけで痛むという痛風である。

尿酸値が高い人の中には、いつ痛風になるかとビクビクしている人もいるのでは? とりあえずビールを控えておけばいいのだろうか。(c)Joshua Resnick -123rf

 私の周囲の左党の中にも、既に痛風の症状が出てしまい、それでも薬を飲みながらビールを飲む“つわもの”がかなりいる。さらに、取引先との接待などで“ゴージャスディナー”が続き、治まっていた痛風の症状がいきなり出て、痛みに耐えながら仕事をしている人もいる。幸いなことに私は痛風とは無縁だが、痛風になった知人の話を聞くと、その痛みたるや最たるもので、「思わず男泣きしてしまう」と言うのだから半端ではなさそうだ。

 だから、痛風発作に襲われた経験がある人は、飲み会の場などで、つい話したくなるのだろう。ミドル以上の男性が参加する飲み会で、“痛風自虐自慢”の話を聞いたのは、これまで1度や2度ではない。実際、読者の方々の中にも、健診の結果で尿酸値が高くなっていて、いつ痛風発作が起きるかビクビクしている人も少なくないのではないだろうか。

痛風の元凶は尿酸、そして尿酸はプリン体から作られる

 本題に入る前に、尿酸値と痛風の関係、またアルコール飲料などに表示されているプリン体との関係は、知らない人も少なくないと思うので先に整理しておこう。

 痛風は正確には「痛風関節炎」という。血液などに含まれる尿酸という物質が結晶化して、関節にたまって炎症を起こし、足の指、膝などに激しい痛みを引き起こす。血液中の尿酸の濃度(尿酸値)が高くなると、痛風発作が起こりやすくなる。健康な人の尿酸値は5.0~6.9mg/dL程度で、尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態は高尿酸血症と呼ばれる。7.0mg/dLを超えてくると、尿酸が結晶化しやすくなり、痛風の発作を起こす可能性が高まるのだ。なお、尿酸値が高い人はすべて、痛風発作を起こすわけではない。だが、尿酸値が高くなるほど痛風発作を起こすリスクは高まっていく。

尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版』(日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会)を基に編集部で作成

 さて、その痛風の元凶ともいえる尿酸のもととなるのがプリン体。つまり、尿酸はプリン体から作られる。だから尿酸値が高い人は、プリン体を含む食品や飲料を控えたほうがいいといわれるわけだ。昨今、よく見かける「プリン体ゼロ」のアルコール飲料は、尿酸値を気にする左党にとっては助っ人的な存在といってもいいだろう。

 私も、プリン体を多く摂取すると痛風につながりやすい、くらいの知識はあった。このため、私は痛風になりたくなければ、プリン体を抑えればいいと単純に思っていた。具体的には、ビールはプリン体が多いといわれるから、とりあえずビールを控えればOKだと。

 だが、話はそんなに単純ではないらしい。ビールを控えるより、そもそも飲酒そのものがよくないという話も聞く。となると、私が愛してやまない日本酒や本格焼酎もよくないのだろうか。知り合いにも、痛風怖さに、ビールを控えて本格焼酎を選んでいる人もいるが、それは無駄な行動だったのだろうか。ここはきちんと確認しておかねばなるまい。

 そこで今回は、痛風や高尿酸血症に詳しい東京慈恵会医科大学名誉教授の細谷龍男さんに話を伺った。

今も痛風は増えている! 低年齢化や女性の患者も増えている

 そもそも痛風は、私の周囲だけでなく、日本全体でも増えているのだろうか。まずは、痛風・高尿酸血症の現状について聞いてみた。

 細谷さんは、「増加傾向にあります。食生活が豊かになり始めた高度経済成長期(1960~70年代)を皮切りに急増し始めました。1986年には約25万人、そして2013年には約106万人と、ここ30年くらいの間に4倍に増えています」と話す。痛風予備群ともいえる高尿酸血症の人は1000万人以上ともいわれるという。

痛風発作は、足の親指の付け根など、膝より下で起こることが多い。(c)thamkc -123rf

 さらに細谷さんは、罹患する世代の低年齢化傾向も見られるという。「以前はミドル世代の病気と見られていましたが、最近では30代など低年齢世代でも罹患するケースが増えています」(細谷さん)

 そして女性の左党にとって恐ろしいのは、女性の痛風も増えていること。細谷さんによると、女性ホルモンの働きなどにより女性はそもそも痛風・高尿酸血症にはかかりにくいのだという。しかし、「かつて痛風にかかるのは99%が男性といわれていましたが、現在は女性の患者さんも増えてきています」と細谷さん。

 昔は痛風と言えば「おじさんの病気だもーん」とふふんと鼻で笑っていたけれど、どうやら人ごとではなさそうだ…。

食べ物から取り込まれるプリン体は2~3割

 次に、いよいよ本題。細谷さんに痛風にかかりやすい食事や飲み方を聞いてみた。やっぱりビールはよくないのだろうか。

 先生、痛風は、ビールやイクラといった、プリン体の多いものを好む方がかかりやすいと思っていたのですが…。

 「尿酸はプリン体から作られますから、プリン体の摂取が尿酸値に影響するのは確かです。しかし、意外と知られていないのですが、プリン体の7~8割は体内で作られています。食べ物から取り込まれるプリン体は2~3割なんですよ。食品から取り込まれるプリン体が尿酸値に与える影響はそれほどではないことが分かってきました」(細谷さん)

 何と! 恥ずかしながら、私はこのことを今日まで知らなかった。「尿酸値が高い人はプリン体の含有量が多い食品を控えなさい」とよく耳にすることもあってか、食べ物にさえ気をつけていれば尿酸値は上がらないものと思い込んでいた。

※一般に「魚卵はプリン体が多い」と思われているが、必ずしもそうではない。100g中のプリン体含有量はイクラ3.7mg、カズノコ21.9mg程度で、プリン体含有量が少ない食品に分類される。やや高めのものでも、タラコ120.7mg程度で、300mgを超える鶏レバーやマイワシの干物などより少ない。また、タラコなどは一度に食べる量が少ないことが多い。

尿酸は新陳代謝の過程で自然に生成されるもの

 そもそもこの「プリン体」と「尿酸」の関係性は? また体内でどう生成されるのだろうか? そのメカニズムを細谷さんに聞いた。

 「プリン体は尿酸のもととなる物質です。プリン体は、核酸(DNA、RNA)を構成する物質の1つで、細胞の中に必ず含まれています。体内で作られるものと食品から取り込まれるものがありますが、その7~8割は体内で作られるのです。そして、尿酸は体内のプリン体が分解されるときに生じる老廃物です」(細谷さん)

 「プリン体が体内で尿酸に分解される経路は2つあって、1つは細胞の新陳代謝の際です。新陳代謝により、細胞が壊れると、細胞内の核酸は細胞の外に放出され、これが最終的に尿酸に分解されます」(細谷さん)

 「また、プリン体はカラダを動かす際に使われるATP(アデノシン3リン酸)という物質にも含まれています。ATPはエネルギー源として利用され、生命活動の維持に欠かせない重要な物質です。このATPは活動に利用されるとADP(アデノシン2リン酸)に代謝されますが、安静にしていれば再び元のATPに戻ります(再合成)。しかし激しい運動などでエネルギー源であるATPが大量に利用されると、再合成が追いつかず、プリン体、そして尿酸へと分解されてしまうのです」(細谷さん)

 「そして、プリン体を尿酸へと分解する役割を担うのが肝臓です。分解された尿酸の多くが腎臓に運ばれ、尿や便として体外へと排出されます」(細谷さん)

 プリン体や尿酸は悪者だとばかり思っていたが、カラダの生命維持のサイクルの中で自然に生成されるものだったとは。しかもその7~8割が体内で合成されているというのは驚きである。

ビールを避けたほうがいいのは間違いではないが…

 だが体内で多くが自動的に合成され、食品摂取からの比率が少ないというのであれば、素人考えの左党としては、プリン体を含む食品は気にせず食べてもいいのでは? と思ってしまう。

 実際、細谷さんによると、少し前の食事指導では、プリン体を含む食品を控えるように厳しく言われることが多かったそうだが、最近では、以前ほど強く言われることは減っているという。細谷さんは、「尿酸値が低い人は過度に気にする必要がありませんが、肥満の人、尿酸値が高い人は、食品からとるプリン体の影響を強く受けます。尿酸値が高い人はプリン体を多く含む食品の摂取を控えるべきです。ですから、プリン体が多いビールを避けたほうがいいというのは間違いではありません」と話す。

 「ビールは、ビール酵母の中にプリン体を含んでおり、飲めば尿酸値は上がります。ある実験では一般的なビールを飲んだ3~4時間後に尿酸値が最大で30%上がったという報告もあります」(細谷さん)

アルコールそのものに尿酸値を上げる作用が

 ただし、細谷さんは、ビールだけを控えても意味がないという。「なぜなら、アルコールそのものが尿酸を上げる要因になるからです」(細谷さん)

 何と元凶は、アルコールそのものにあったとは! 前述のように、私は、「プリン体の多いビールさえ飲まなければOKで、他のお酒にすればいい」と思っていた。実際、私のまわりの痛風持ちのオジサマ方はその事実を知らず、「プリン体ゼロの本格焼酎なら大丈夫」と言って、ガンガン飲んでいる。

 「それは大きな勘違いです。ビールに限ったことではなく、アルコールそのものに尿酸値を上げる作用があります。アルコールはエネルギー物質であるATPを分解し、尿酸の産生を促進します。また、アルコールが肝臓で分解される際に生成される乳酸は、腎臓からの尿酸の排出を低下させてしまうのです。さらにアルコールには抗利尿ホルモンを抑制する作用があり、脱水も進みます。尿酸の7~8割は尿から排出されますが、脱水によって尿量が少なくなるため、尿酸の排出が低下し、体内の尿酸値が高くなるのです」(細谷さん)

 「えええー、ビールさえ我慢すればいいと思っていたのに」という左党の悲鳴が聞こえてきそうである。かく言う私も心でそう叫んでいる(泣)。

 実際、アルコールの摂取量が多いほど、痛風の発症リスクが高まるという研究結果も出ている(下グラフ)。これを見ると、アルコール摂取量が増えるほど、きれいに痛風発症の危険度が高まっていることが分かる。アルコール摂取量が30~49.9gでリスクは約2倍に高まっている。日本酒なら1合、ビールならロング缶1本で、純アルコールで20g程度になる。つまり、日本酒を2合飲めば、リスクは2倍になるという計算になる。左党ならこのくらいは最初の30分で軽くクリアしてしまいそうだ。

アルコール摂取量が増えるほど痛風発症リスクは増える
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版』(日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会)より

 なるほど、尿酸が高い人がビールを控えたり、プリン体ゼロのアルコール飲料を選ぶのは間違った選択ではないが、それ以前に、そもそもお酒そのものの摂取量を減らさなければならないのだ。

高尿酸状態を放置すると、生活習慣病を招きやすい

 読者の中には、尿酸値が高く、高尿酸血症(7.0mg/dL)に該当している人もいらっしゃると思う。それでも痛風発作が起きていない人もいるだろう。このため、尿酸値が高くても放置している人も少なくないに違いない。

 実際、尿酸値が高くなっても、必ずしも痛風発作が起こるわけではない(もちろん尿酸値が高くなるほど、その確率は高まる)。では、尿酸値が高くなっても、必ずしも痛風にならないなら、放置しておいてもいいのだろうか。

 細谷さんは、「尿酸値が高い状態を放置すると、生活習慣病を招きやすいので、放置してはいけません。医師に相談してください」と話す。細谷さんによると、尿酸値が上昇するにつれて、メタボリックシンドロームの頻度が高くなり、逆にメタボリックシンドロームの人ほど尿酸値が上昇することも分かっているのだという。

 「高尿酸血症の人は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併するケースが多く、これらの結果、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの障害を起こすリスクが高まります」(細谷さん)。さらに、高尿酸血症を放置すると、腎機能が低下したり、尿路結石ができやすくなったりするという。

 こう聞くと、尿酸値が高い状態(高尿酸血症)を放置しておくのが、いかに危険なことかよく分かる。読者の中には、「痛風の一時的な痛みくらいならしょうがないか…」などと甘く見ている人もいるかもしれないが、その考えは捨てたほうがよい。これから先の人生を、長く健康で楽しめるようにするためにも、飲酒を含めた生活習慣の改善に着手していただきたい。

        ◇        ◇        ◇

 日経Goodayの名誉のためにフォローすると、アルコール自体が尿酸値を上げる大きな要因で、ビールだけを控えても意味がないことは、過去の記事で紹介している。恥ずかしながら私は取材日まで知らなかったのだが…。

 とはいえ、私と同様に知らなかった人も少なからずいると思う。健診結果で尿酸値が7.0mg/dLを超え、危険領域に入ってきた人は、まずは節酒を心がけよう。尿酸値を下げることは、痛風発作のリスクを下げるだけでなく、様々な生活習慣病のリスクを下げることにもつながる。

 ただし、酒量はどのくらいにすればいいのか、休肝日を作ったほうがいいのか、あるいは節酒以外の対策はないのかなど、気になるところはまだまだある。具体的な尿酸対策は、次回で詳しく紹介していく。

細谷 龍男(ほそや たつお)さん
東京慈恵会医科大学名誉教授/慢性腎臓病病態治療学教授
細谷 龍男(ほそや たつお)さん 1972年東京慈恵会医科大学卒業。1997年同大第二内科(2000年内科学講座腎臓・高血圧内科と改組)教授。2013年4月から現職。日本痛風・核酸代謝学会理事長、日本腎臓学会・前理事、第110回日本内科学会総会・講演会会頭。
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