うだるような連日の猛暑の時期は、喉の渇きを潤してくれるビールをはじめ、一服の涼をを与えてくれる冷たい酒が欠かせません。「水分補給だ!」とばかりにジョッキをあおる左党に限らず、お酒を飲むほどに近くなるのが、あの生理現象…。そう、おしっこ。実は、ほとんど意識を向けることがない「色」「量」、そして「回数」には、お酒を飲むときには知っておいた方がいい、大切なサインが隠れていることがあるのです。
酒を飲み始め、杯が重なると、もよおしてくるのが尿意。一度、トイレに行き始めると、堰を切ったように、短時間で何度も行くのは決して珍しいことではない。左党の場合、「体内のアルコールを排出できる」と都合よく解釈しがちだが、実はこの生理現象には危険が隠されていることもあるという。“被災地”となる恐れがあるのが、「腎臓」だ。
尿を作り、血液中の老廃物を回収する人体にとって重要な機能を備えた臓器。腎臓とアルコールとの関係について、慶應義塾大学病院の血液浄化・透析センター長、林松彦教授に話をうかがった。
尿は飲んだ酒量の1.5倍にも!
「お酒を飲んで、トイレが近くなるのは、アルコールによって脳下垂体にある抗利尿ホルモンが抑制され、必要以上に尿が出てしまうからです。事実、ビールを飲んだ後の尿の量は、実際に飲んだ量よりも多く、1.5倍にもなることがわかっています。ビールをはじめとするアルコールの摂取は、水分補給になるどころか、むしろ体内の水分量を減らし、脱水状態を引き起こす危険性があるのです」(林教授)
ビールを水代わりと称して、チェーサーにする左党も多いが、結果的には全く水分補給になっていない。特にこの季節はジョッキが進み、酔いが深まるにつれ、だんだんと喉が渇いてくるという経験をしたことがある人も多いだろう。
ならば、アルコールによって失われていく水分を、水で補えばいいのではないのだろうか?
「水を飲むことは確かに必要ですが、問題はその量です。がぶ飲みはかえって体にとって逆効果になることがあります。水は酒と同量位で十分だろうと思います。水分を過剰に摂取すると、血中のナトリウム濃度が必要以上に薄まってしまい、低ナトリウム血症を招き、虚脱感や食欲不振、悪心といった症状を引き起こすことがあるからです」(林教授)
林教授によれば、飲酒による体のトラブルを防ぐために、目安にしておきたいものがあるという。その1つは、尿の「色の変化」だ。酒席では、まず気にすることがない尿の色。一体それにはどんな秘密が隠されているというのだろうか?

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