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左党の一分

芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?

薩摩隼人が芋焼酎のために立ち上がった! 果たしてその結果は

 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

 飲酒後の血糖値の測定は1週間に1度実施した。検査日は鹿児島大学病院に入院してもらい、食事(約710kcal)とともにそれぞれのお酒を飲んでもらった。そして、食事前(空腹時)、食事1時間後、同2時間後、同12時間後の血糖値、インスリンの分泌量を測定した。同時に被験者の脳波も12時間計測した。

食事とともにビール、芋焼酎、日本酒、水を飲んだときの、血糖値とインスリン分泌量の変化。芋焼酎は血糖値の上昇が低く、インスリンの分泌量が少なかった(PeerJ. 2016; DOI 10.7717/peerj.1853.)
[画像のクリックで拡大表示]

 その結果が、右のグラフである。食事摂取後の血糖値の上昇は、ビールが最も高く、次に水、日本酒となり、芋焼酎が最も低くなった。乾さんは、「芋焼酎は、糖質・カロリーともにゼロの“水”より、血糖値の上昇が抑えられているのがポイントです。特に、食事1時間後という比較的早い時期での血糖値の上昇を抑えています」と話す。

 「インスリンの分泌量を見ると、芋焼酎を飲んだ際のインスリン分泌量は最も少ないという結果になりました。この結果から、芋焼酎に含まれる何らかの成分により、インスリンの感受性がよくなり、糖の取り込みを促進させているのではないかと考えられるわけです」(乾さん)

 乾さんは現在、血糖値抑制に関与していると思われる芋焼酎の成分の特定を進めている。複数の有効成分が考えられるそうだが、「研究途中で、現段階では特定できていません。特に、インスリンの感受性を高めると考えられる成分についてはまだ分かっていない」(乾さん)という。残念ながらその仕組みについてはまだ明らかになっていないわけだ。

どのくらい飲めば効果が出るのか?

 なお、最近乾さんが注目している芋焼酎の成分の一つに、芋焼酎の香気成分の一つであるゲラニオールという成分がある。ゲラニオールは、植物のゼラニウムから発見された香気成分でバラのような香りがある。「ゲラニオールは、消化管ホルモンの一種であるGLP-1(*3)の分泌を介し、インスリンの分泌を促している可能性があります」(乾さん)

*3  GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は消化管ホルモンの一種で、インスリンの分泌を促す働きを持つ。さらに、胃からの排出を遅らせる働きがある。

 芋焼酎の香気成分にはさまざまな効果が期待できそうだ。以前、本連載でも紹介したように、本格焼酎の香気成分であるβフェニルエチルアルコールが、血栓の溶解を促進させることも分かっている。また、乾さんの実験によると、芋焼酎の香気成分の一つであるリナロールは痛みを和らげる効果も期待できるという。

 まだまだ分からないことが多いとはいえ、芋焼酎にはいろいろな面で健康効果が期待できそうだ。これで、安心して芋焼酎を飲むことができるというものだ。

 しかし、左党として気になるのは、「どのくらい飲めば効果が出るのか?」ということである。

 「やはり純アルコールにして20g(アルコール度数25度の本格焼酎に換算して100mL程度)、いわゆる適量をお勧めします。本格焼酎は低カロリーで糖質ゼロですが、やはり過ぎたるはなんとやら…です」(乾さん)

 またしても「適量」か。実験での飲酒量は“多め”だったので期待していたが、現実は期待通りにはいかないようである(がっかり)。

         ◇         ◇         ◇

 今後、乾さんは、芋焼酎に含まれる有効成分の特定を進めるとともに、蒸留方法、原材料など芋焼酎についてより詳しく検証し、機能性をより高めるための研究をしていく計画だと話す。

 健康効果を考えなくても芋焼酎はおいしいものだが、有効成分が特定されたら今よりもっと飲むのが楽しくなりそうだ。今後の研究に期待したい。今宵(こよい)は早速、さつま揚げと芋焼酎で一杯やろう。もちろん「適量」を守って。

乾 明夫(いぬい あきお)さん
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 漢方薬理学講座 特任教授
乾 明夫(いぬい あきお)さん 1978年、神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部・大学院応用分子講座消化器代謝病学分野で講師、助教授、診療科長などを経て、2005年、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 社会・行動医学講座 行動医学分野(現心身内科学分野)、鹿児島大学病院 心身医療科 教授。国際統合生命科学研究センター長、呼吸器・ストレスケアセンター長、漢方診療センター長を歴任。第3回 日本肥満学会賞、第1回 日本心身医学会池見賞、第10回 米国消化器病学会ヤンセン賞などを受賞。
酒好き医師が教える再考の飲み方

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