日経グッデイ

失敗しない 糖質ちょいオフ食事術

糖質のとりすぎは肝機能の数値でチェックできる

ALTが基準値以下でも20 IU/Lを超えたら要注意

 川崎敦子=フリーエディター・ライター

一大ブームを巻き起こした糖質オフダイエット。チャレンジしたことのある人も多いだろう。しかし、「確かにやせた。でも、リバウンドした」という人もまた多いのではないだろうか。実は、糖質オフダイエットの極意は、完全オフではなく“ちょいオフ”なのだ。ハードな糖質制限に挫折した人こそ必読! 地味ながらも効果的な糖質オフ術をご紹介しよう。

 第2回(「『案外普通に食べられる』のが“ちょいオフ”のいいところ」)では、1日にとる糖質の適量について解説した。普段、自分がどれだけ糖質をとっているかについて、ある程度把握できたのではないだろうか。

 しかし、太っている原因が、糖質のとりすぎにある人もいれば、ほかに原因がある人もいる。やせるために、やみくもに糖質を制限する前に、そもそも本当に自分が糖質をとりすぎているのかどうかを知る方法はないのだろうか。

 栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅氏が、意外な方法を教えてくれた。

 「糖質をとりすぎかどうかは、健康診断の血液検査の肝臓の数値が手がかりになります」(栗原氏)。糖質に関連する数値といえば、空腹時血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)かと思うが、これらの数値が基準値を超える前の段階で、糖質のとりすぎを教えてくれるのが、肝機能の数値だという。

 肝臓の状態をみる検査は、ALT(GPT)とAST(GOT)、γ-GTPの3つが基本で、40歳以上の人を対象とした特定健診(いわゆるメタボ健診)の検査項目にも必ず入っている。お酒を飲む人はγ-GTPの数値ばかりを気にしがちだが、実はこれら3つの項目は、糖質のとりすぎの可能性を知らせてくれる重要な手がかりでもあるのだという。

 最近の健診データが手元にあれば、ぜひチェックしていただきたい。

ALTでわかる糖質のとりすぎ

 そもそもなぜ、肝機能の数値が糖質のとりすぎをチェックする際の参考になるのか。それは、糖質をとりすぎている人は、脂肪肝になっていることが多く、それを肝機能の検査値から推測できるからだ。

 脂肪肝とは、肝細胞の中に中性脂肪が蓄積された状態をいう。生活習慣病のなかでは最も多いありふれた疾患である。原因は、食べすぎ、飲みすぎ、太りすぎだ。特に日本人の脂肪肝の原因は、アルコールの飲みすぎ(アルコール性脂肪肝)よりも、食べすぎ(非アルコール性脂肪肝)が非常に多い。糖質のとりすぎは過剰な中性脂肪を肝臓に貯め込むことになる。脂肪肝になるとインスリンの効き目が悪くなり、糖尿病や肥満を招きやすくなる。脂肪肝の診断は、通常、血液検査に加えて、超音波検査やCT検査で行う。

 ということで、脂肪肝の存在を疑うために、まず、チェックすべきはALTである。ALTは肝臓などの細胞に多く含まれる酵素で、肝臓などに障害が起こると血中に多く漏れ出してくる。「ALTの数値が特に高い人は、肝細胞が何らかの理由で壊れていることが疑われますが、やや高めの人に多く見られるのが、脂肪肝です」(栗原氏)。

 ALTの基準値は、検査を行う医療機関や測定方法により異なるが、特定健診では30 IU/L以下を基準値(特定保健指導判定値)としている。しかし、肝臓病の専門医である栗原氏は、長年にわたる健診データ等の分析から、一般の基準値よりもかなり低い20 IU/Lを超えた段階で脂肪肝を疑う。基準値以下でも脂肪肝はすでに始まっている可能性があり、安心できないというわけだ。

図1◎ まずはALTの数値をチェック!
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 さらに、ALT、AST、γ-GTPの3つの検査値をセットでみることで、脂肪肝の原因を類推することができる(AST、γ-GTPについては次ページの囲み記事を参照)。

 「ALTよりASTが高い場合、またγ-GTPが200~300 IU/Lを超えるほど高い場合は、アルコール性脂肪肝、つまり飲みすぎによる脂肪肝の可能性があります。一方、ALTがASTよりも高い場合、γ-GTPが基準値を少し超えるあたりから100IU/L前後くらいに軽く上昇している場合は、非アルコール性脂肪肝の可能性が考えられます」(栗原氏)

 この、非アルコール性脂肪肝は、特に糖質のとりすぎによって起こりやすいという。このタイプの脂肪肝が重症化したものをNASH(ナッシュ=非アルコール性脂肪肝炎)というが、NASHを放置すると、5~10年で肝硬変に移行し、肝臓がんへ進行する可能性が高い。

  「ALTが20 IU/Lを超えていたら、糖質をとりすぎている可能性があり、将来、糖尿病や動脈硬化、NASHになるリスクを持っているといえます。BMIが正常範囲であっても安心できません」(栗原氏)

図2◎ AST、ALT、γ-GTPの関係でわかる脂肪肝の原因
(写真上:©Claudiu Badea/123rf 写真下:©Joshua Resnick/123rf)
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生活習慣病の上流にメタボがあり、さらにその上流に脂肪肝がある

 脂肪肝の人は、肝細胞そのものに炎症はなく、生活改善をすればすぐに治る。そのせいか、脂肪肝があっても、医師も患者もあまり深刻に考えないことが多い。しかし、この脂肪肝を甘くみてはいけない、と栗原氏。

 「生活習慣病の上流にメタボがありますが、私は、メタボのさらに上流に脂肪肝があると考えています。だから、脂肪肝の段階で生活習慣を変えることが大切。先手必勝になるのです」(栗原氏)。ALTは基準値内であっても20 IU/Lを超えていれば、太っていても太っていなくても、脂肪肝をなくすために、糖質ちょいオフをしたほうがいいそうだ。「逆に、太っていても、肝機能や血糖の数値が正常であれば、生活習慣病を招くことはまれです。しかし、腰痛や膝関節痛を引き起こすことが多いので、2~3kgの減量がお勧めです。糖質を5%程度減らすだけで半年で3kg程度の減量は簡単にできます」(栗原氏)。

図3◎ メタボの上流に脂肪肝がある(栗原氏の考え)
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「肝機能=酒」だけじゃない
検査結果からわかるいろいろなこと

 肝機能を知る指標は、γ-GTPと ALT、ASTのほかにもいくつかあるが、この3種類の数値とバランスをみるだけで、肝臓の状態やその原因をある程度推察することができる。

 AST、ALTは肝細胞のなかでアミノ酸の代謝に使われる酵素だ。肝細胞が壊れると、血液中に漏れ出てくるため、数値が高くなる。ASTは筋肉など肝細胞以外にも含まれるが、ALTはほとんど肝細胞内に含まれるので、数値とそのバランスを知ることで、肝細胞の壊れ具合や原因疾患を知る手がかりになる。ALTが基準値から少し高く、ASTより高い場合は、脂肪肝の可能性があることは前述の通りだが、ほかにも下図のような病気の可能性がある。

AST、ALTからわかる病気の可能性
ALT もASTも100 IU/L 前後まで → 肥満、飲みすぎ、慢性肝炎、肝硬変
ALT もAST も非常に高い(1000 IU/L以上) → 急性肝炎
ALT > AST → 脂肪肝、急性・慢性肝炎、胆石
AST > ALT → アルコール性肝障害、肝硬変、肝臓がん
AST が非常に高くALT の上昇は軽度 → 心筋梗塞、筋肉の病気

 一方、γ-GTPは肝臓で作られ、胆汁に排出される酵素で、胆汁の流れが悪くなったときや、アルコールを飲みすぎたときに高くなる。γ-GTPの数値だけでなく、下図のようにALTとASTのバランスもセットでみることで、アルコール性脂肪肝か非アルコール性脂肪肝か、見当をつけることができる。

γ-GTPからわかる病気の可能性
γ-GTP の上昇は軽度でALT が高い → 非アルコール性脂肪肝(肥満や糖尿病による)
γ-GTP が200~300IU/L 以上で、AST がALT より高い → アルコール性脂肪肝
※薬剤性肝障害、急性膵炎、肝臓がん、閉塞性黄疸、ストレスで上昇する場合も

 肝機能をみる検査には、ほかにもいくつかある。肝臓は症状が出たときには病気がかなり進行していて、治療も難しくなる。症状がないからと軽視せず、検査値が伝えてくれるメッセージを真摯に受け止め、早めの対策を講じることが得策だろう。

栗原毅(くりはら たけし)さん
栗原クリニック東京・日本橋院長
栗原毅(くりはら  たけし)さん

医学博士。慶應義塾大学特任教授。前東京女子医科大学教授。

東京女子医科大学病院及び同大学付属の医療施設に勤務後、2008年に開業。消化器内科学、特に肝臓病を専門とし、C型肝炎のインターフェロン療法に定評がある。早くから「糖尿病や動脈硬化につながるメタボの上流に脂肪肝がある」ことを提唱し、脂肪肝の治療や予防に力を入れている。
著書・監修書は『糖質ちょいオフダイエット 90日ダイアリーつき』(講談社)、『肝機能をしっかり高めるコツがわかる本』(学研パブリッシング)など多数。