日経グッデイ

男こそアンチエイジング!

「脂肪肝ドック」で脂肪のたまり具合が正確に分かる?

肝臓に脂肪がたまる仕組みを解説

 伊藤和弘=フリーランスライター

年を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見や体力、健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。今回のテーマは「脂肪肝ドック」。2016年10月に日本で初めて「脂肪肝ドック」を始めた、新百合ヶ丘総合病院予防医学センターの袴田拓(はかまだたく)部長に脂肪肝についてあらためて解説してもらう。

 そろそろ忘年会シーズンに入る。これから年明けにかけては、一年で最も酒席の多い季節といっても過言ではない。毎晩のように痛飲し、翌朝は重い体を引きずって会社に向かう。二日酔いの中、「もう若くもないのに、オレの肝臓、大丈夫?」と心配になる人も少なくないだろう。

 ご存じの通り、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる。多少の異常が起こっても、よほどのダメージを受けない限り自覚症状は感じられない。不調を自覚したときは、そうとう症状が進んでいるというわけだ。

 肝臓を壊して亡くなる人は想像以上に多い。2015年の人口動態統計によると、「がんを除く肝疾患」は男性の死因第10位にランクイン。同年には肝がんで2万8889人、肝硬変などの肝疾患で1万5659人が他界している。

 肝硬変や肝がんは脂肪肝からも始まる。肝臓が気になる人は、早めにチェックしたほうがいいだろう。そこでお薦めしたいのが「脂肪肝ドック」。2016年10月、新百合ヶ丘総合病院(川崎市)で日本初となる脂肪肝ドックが始まったのだ!

アルコールで肝臓に脂肪がたまる

 臓器の外側につく内臓脂肪に対して、脂肪肝とは肝臓の中に脂肪がたまった状態。「肝臓の5%を超えた脂肪があれば脂肪肝。日本では成人の3分の1が脂肪肝という報告もある」と同病院予防医学センターの袴田拓部長は話す。

 10年近く前の調査だが、健康診断を受けた日本人(35~69歳)1578人のうち、なんと32%が脂肪肝だった(J Clin Biochem Nutr. 2009 Jul;45(1):56-67)。脂肪肝は決して珍しい病気ではない。しかし脂肪肝が進むと肝臓に炎症が起こり、細胞が破壊される。破壊と再生を繰り返すうちに肝臓の繊維化が進んで肝硬変に。肝がんを発症することもある

 肝臓に脂肪がたまる原因は、まず酒。さらに食べ過ぎや運動不足だ。「つまり、脂肪肝は生活習慣病の一つといえる。太っている人に多いし、糖尿病や脂質異常症を併発している人も多い」と袴田部長は指摘する。

 脂肪肝は大きくアルコール性と非アルコール性に分けられる。「男性なら1日に平均してアルコールを30グラム以上、女性なら20グラム以上飲んでいる人はアルコール性と診断される」と袴田部長。アルコール健康医学協会によると、20グラムのアルコールとは日本酒1合(180ミリリットル)。ビールなら中瓶1本(500ミリリットル)、ウイスキーならダブル1杯(60ミリリットル)に相当する。つまり、30グラムは日本酒1.5合だ。

 酒で脂肪肝になる理由は、大きく2つある。まず、アルコール自体が中性脂肪の原料になること。またアルコールが代謝されている間は肝臓で脂肪をスムーズに代謝できず、脂肪が肝臓にたまりやすくなってしまう。

酒を飲まなくても脂肪肝になる

 一方、アルコールの摂取量が少ない場合は非アルコール性脂肪肝(NAFLD)と呼ぶ。最近は広く知られるようになってきたが、全く酒を飲まない人でも脂肪肝になる。「NAFLDを放っておくと、約3分の1がNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に移行する」と袴田部長。さらにNASH・NAFLDの診療ガイド2010によると、NASH患者の5~20%が10年以内に肝硬変を発症し、さらに肝硬変になると、年率約2%で肝がんを発症するという。

 すでに触れたように、NAFLDの主な原因は食べ過ぎや運動不足で、肥満の人が多い。

 体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った数字をBMI(体格指数)と呼び、日本では25以上を「肥満」としている。8000人以上を対象にした調査から、BMIと脂肪肝の罹患率が正比例することが分かった。BMIが25~28の人は58.4%、28以上の人は84.2%が脂肪肝だったという(J Gastroenterol. 2012 May;47(5):586-95)。

 袴田部長によると、「脂肪肝には薬もあるが、決定的なものはない」という。暴飲暴食を控え、運動することが脂肪肝の最大の予防法であり、また治療法にもなっている。

 食事や運動で内臓脂肪が減るように、脂肪肝も節酒や運動で改善する。糖尿病など他の生活習慣病が良くなると、脂肪肝が改善することも多いという。筑波大学医学医療系の正田純一教授らの研究では、ウォーキングなどの運動を週250分(1日換算約35分)以上で3カ月間続けると、明らかにNAFLDが改善した(Hepatology. 2015 Apr;61(4):1205-15)。

脂肪のつき具合、肝臓の硬さが正確に分かる

 このように肝臓にたまった脂肪を落とすことはできるが、「いったん繊維化した肝細胞は酒をやめても元には戻らない」と袴田部長。繊維化を起こす前に、早い段階で脂肪肝を自覚して生活を改めることが大切だろう。

 とはいえ、脂肪肝は自覚できない。脂肪肝になったからといって痛みや不調は感じないし、急に酒に弱くなるわけでもない。その意味では糖尿病や高血圧など、他の生活習慣病とも似ている。血液検査で肝機能の数値は分かるが、脂肪肝の進行度、肝臓にどれくらい脂肪がたまっているかまでは分からない。

 従来の脂肪肝やNASHの検査方法には、針を刺して肝臓の細胞を取り出す肝生検や超音波検査があった。肝臓に針を刺すのはそれなりにリスクも痛みもあるし、超音波検査では軽度の脂肪肝は見落とされる。それに対して、「脂肪肝ドック」ではMRI(磁気共鳴断層撮影装置)による「MRエラストグラフィ」という画像診断法が使われている。

脂肪肝ドックはMRI(磁気共鳴断層撮影装置)で検査する
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 「脂肪のつき具合、肝臓の硬さを正確な数値で割り出すことができるし、がんも発見できる画期的な検査法。30分程度で終わるし、苦痛は全くない。脂肪肝や肝機能障害を指摘された人はもちろん、40歳を超えた人はなるべく受けたほうがいい」と袴田部長は話す。

 保険は適用されないが、新百合ヶ丘病院での料金は税別3万5000円。2~3週間後に検査結果が郵送されるという。

 実際の検査はどのように行われるのか? 早速、試してみなければ。というわけで、次回は引き続き「脂肪肝ドック」体験記をお届けしよう!

(イラスト/うぬまいちろう)

袴田 拓(はかまだ たく)さん
新百合ヶ丘総合病院予防医学センター 部長
1992年、筑波大学医学専門学群卒業。つくば双愛病院消化器内科、霞ヶ浦成人病研究事業団健診センター勤務などを経て現職。同病院消化器内科科長も務める。日本肝臓学会専門医。日本消化器病学会専門医。日本人間ドック学会人間ドック健診専門医。
日経トレンディネット2017年1月19日付け記事からの転載です。