日経グッデイ

男こそアンチエイジング!

“男の健康度”が分かる「男性力ドック」体験記

テストステロン剤の注射、効果には個人差

 伊藤和弘=フリーランスライター

年を取ると「男らしさ」は失われていく。残念なことだが、いつまでも若い頃の外見・体力・健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? この連載では第一線で活躍する専門家たちに、「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう。前回に続いて、2014年に開業した日本初の男性専門クリニックをリポート、そして「男性力ドック」なるものを体験する。

 不肖ライター伊藤(47歳)、不惑を過ぎてから、健康にはそれなりに気をつけているつもりだ。スポーツクラブにも入会し、20年以上吸っていたタバコもキッパリやめた。

 それでも、深酒だけは直らない。飲み過ぎて吐くことはなくなったが、簡単に記憶が飛ぶようになった。以前からの脂質異常症(中性脂肪が高い)に加え、最近は血圧も高くなり、メタボにリーチがかかってしまった。考えてみれば、セックスもとんとご無沙汰だ。朝立ちはするけれど、なかなか「やる気」が起きない。昔に比べて気分が沈むことも多いし、これはもしかすると、「男性更年期障害」になりかけているのかも――。

 詳しくは過去記事「男なら知っておきたい! 実は命にかかわる「LOH症候群」ってなに?」で取り上げたが、男性更年期障害とは、年を取って精巣(睾丸)で作られるテストステロン(主要な男性ホルモン)が減ることでさまざまな不調を引き起こすこと。下半身だけに限らず、テストステロンは男性の心身の健康に大きくかかわっている。テストステロンが少ないと脳血管疾患、心筋梗塞、がんなど深刻な病気になりやすく、結果的に死亡リスクも高まるという(Circulation.2007 Dec 4;116(23):2694-701)。

 特に血液中のフリー(遊離)テストステロンが8.5pg/ml※未満になるとLOH(late-onset hypogonadism)症候群(=加齢男性性腺機能低下症候群)という「病気」と診断され、治療の対象に。ちなみに国内の潜在患者数は約600万人と推定されている。

 考えてみれば、テストステロンの数値なんて一回も調べたことないなぁ。というわけで、今月グランドオープンしたばかりのメンズヘルスクリニック東京(東京都千代田区)で、話題の「男性力ドック」(3万円、税抜き)を受けてみることにした!

※pg=ピコグラム。1兆分の1グラム

いよいよ男性力ドック検査へ!

 前回「AGA、EDから妊活まで、男の悩みに応える“メンズヘルス医院”とは?」で紹介したように、メンズヘルスクリニック東京では、AGA(男性型脱毛症)からED(勃起障害)まで、男性特有のさまざまな悩みに対応している。待合室でざっと見渡すと来院者は40~60代。中には30代と思われる男性もいた。

予想以上に細かい項目に分かれている質問表に記入
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男性力ドックは、順天堂大学医学部泌尿器科学講座の久末伸一准教授による問診から始まる
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 まずは、質問表に記入したら、男性更年期専門外来の主任担当医を務める順天堂大学医学部泌尿器科学講座の久末伸一准教授による問診だ。男性力ドックを受けようと思った理由、過去の病歴、子どもを作る予定、最近の体調、喫煙習慣、睡眠時間、朝立ちの具合などを答えていく。

 続いて検査室に入り、検査用の服(下の写真参照)に着替え。身長、体重、体脂肪率、筋肉量、骨密度、血圧、血管年齢などを調べる。

検査は個室で。これは血圧や血管年齢を検査しているところ
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骨密度は右足のかかとで調べる。筆者はやや骨粗しょう症気味とのこと
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テストステロン値が高いと薬指が長い!?

 男性力ドックならではの項目に、握力測定と「両手のコピー」がある。握力は筋力の目安として。両手のコピーは人差し指と薬指の長さの比率を見るためだ。

 男女を問わず、「生まれつきテストステロンの値が高い人は、人差し指よりも薬指が長くなる」と久末准教授は説明する。現在の数値が標準でも、若い頃に高かった人は大きく落ちている可能性もある。指の比率を見れば「本来の値」を推測できるというわけだ。

 人差し指の長さを薬指の長さで割ると、日本人男性の平均は0.95。薬指が長いほど数値が小さくなり、テストステロンが高い体質ということに。ちなみに絶倫とのウワサがあった小泉純一郎元首相は0.88だったらしい。私は0.96で、平均よりやや下くらいだった。

 最後に血液検査用の採血をして終わり。所要時間は1時間程度と聞いていたが、実際は1時間半というところだ。

 お土産に「エレクトメーター」なる布製のメジャーを渡される。寝るときにこれをペニスの根元に巻き、起床時にどれくらい数字が増えたかを見る。つまり、朝立ちのチェックだ。6日間ほど調べて用紙に数字を記入し、検査結果を聞く日に持参すればいい。

お土産として渡されるエレクトメーター

 初めてエレクトメーターを装着したときは何ともほろ苦い気持ちになったが、すぐに慣れる。6回やって、睡眠前後の数値が変わらなかったことは一度もなかった(当たり前か?)。朝立ちしていない日もエレクトメーターは確実に緩んでいる。いちばん変化が小さいときで2.5cm、大きいときで3.7cm、平均3.2cmという結果に。久末准教授によると、「3cmを超えていれば正常勃起」だという。よしよし。

血管年齢58歳! 47歳ライターの結果は?

 男性力ドックを受けてから12日後、再びクリニックを訪れ、検査結果を聞く。ノープロブレムということはないと思っていたが、予想以上にツッコミどころ満載だった……。

 問題がなかったのは血糖値とPSA(前立腺特異抗原)。PSAとは前立腺から出るたんぱく質で、前立腺がんの指標とされる。正常値は4ng/ml※1以下だが、私は0.4ng/mlを切っており、「将来的にも前立腺がんになる確率は非常に低い」と久末准教授は太鼓判を押した。

 握力はやや弱かったが、筋肉量は正常だった。筋肉量とテストステロンは密接な関係があり、筋肉が増えるとテストステロンも増え、筋肉が減るとテストステロンも減るという。なお、筋肉の全体量を増やそうと思ったら、腕や腹よりも「太ももを鍛えるのが効率的」と久末准教授はアドバイスする。太ももの大腿四頭筋は人体最大の筋肉なので、トレーニングで量が増えやすいのだ。

 私の場合、問題は血管と骨にあった。

 もともと中性脂肪が高いのは知っていたが、久末准教授いわく「べらぼうに高い」バリバリの脂質異常症。正常値の上限が150mg/dl※2なのに対し、3倍近い443mg/dlというスコアを記録したのだから我ながら驚く。体脂肪率は標準レベルだったのに対し、ガンマGTP(肝機能の指標)が159U/Lと正常値上限の2倍を超えていたことから見ても、最大の原因は酒だろう。なお、尿酸値も8.3mg/dl(正常値は7mg/dl以下)と高く、血圧も高めだった。

 ドロドロ血液のせいで動脈硬化が着々と進行しており、血管年齢は「58歳」とのこと。若者から見たら47歳も58歳も大差ないかもしれないけど、58歳といえば『サザエさん』の波平より4歳も上ですよ! うーむ、これは本気で治療を考えないといけないなぁ。

 骨密度も低かった。骨は女性ホルモンから作られるが、男性の場合、「アロマターゼという酵素の働きでテストステロンが女性ホルモンに変わる」と久末准教授。そのためテストステロンが少なくなると女性ホルモンも減り、骨がスカスカになってしまう。実際、注射などでテストステロンを補充すると、骨密度も高くなるという。

※1:ng=ナノグラム。10億分の1グラム
※2:dl=デシリットル。10分の1リットル

しばらくは禁酒! 要運動。アクティブな男を目指そう

 さて、最後は注目のフリーテストステロン値だ。フリーテストステロンとは体内の最前線で活発に働いているテストステロンのこと。前述したように8.5pg/ml未満は要治療で、正常値は11.8pg/ml以上とされる。私は――10.8pg/mlだった!

 LOH症候群とまでは行かないが、通常よりも低い。生まれつき低い人もいるが、「指の比率は平均的だったので、若い頃より落ちているのでしょう」と久末准教授は話す。

 「酒をやめて運動量を増やすだけでもテストステロンは上がるし、シアリス(タダラフィル)などのED治療薬を定期的にのむ方法もある。男性更年期的な症状を感じるならホルモン補充療法を考えてもいいレベル」(久末准教授)

 メンズヘルスクリニック東京では、テストステロン剤の注射は125mgで1回3000円(税抜き)。効果は2週間続くので、月2回として7000円かからない(診察料は別)。せっかくなので私も今回注射をお願いすることにした。

 効果は個人差が大きいそうで、残念ながら私には劇的なものは表れなかった。少し元気になった気もするが、性欲などは特に変わらない。もっとも、ようやくガラケーからスマホに買い替える決断をしたのはそれから数日後。もしかすると、テストステロンのおかげで「アクティブな男」になれたのかもしれない。

(イラスト/うぬまいちろう)

久末伸一さん
順天堂大学医学部泌尿器科学講座 准教授
1995年、札幌医科大学医学部卒業。砂川市立病院医長、マサチューセッツ大学神経内分泌センター博士研究員、札幌医科大学付属病院助教、帝京大学医学部付属病院泌尿器科講師を経て、13年より現職。日本性機能学会専門医・評議員。メンズヘルスクリニック東京では「男性更年期専門外来」と「テストステロンアップ外来」の主任担当医を務める。
日経トレンディネット2014年9月29日付け記事からの転載です。