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新生児期の保湿がアトピー発症率を3割減に

成育医療センターがJ Allergy Clin Immunol誌に発表

 加納亜子=日経メディカル

出典:日経メディカル 2014年10月2日(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 国立成育医療研究センター生体防御系内科部アレルギー科医長の大矢幸弘氏(写真左)らは10月1日、新生児期からの保湿剤の塗布により、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下することが、成育出生コホート研究におけるランダム化比較試験(RCT)で示されたと発表した。この研究結果は、Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に報告したもの。

 これまで、アトピー性皮膚炎や他のアレルギー性疾患の発症には、外部からの異物侵入を防ぎ、体内の水分蒸発を防ぐ「皮膚バリア機能」の低下が関係していることが示唆されていた。だが、これまでRCTでの解析はされていなかった。

 そこで大矢氏らは、両親もしくは兄弟に少なくとも1人以上のアトピー性皮膚炎の既往歴があり、アトピー性皮膚炎の発症リスクの高い新生児118人を対象に登録。1日1回保湿剤(2e[ドゥーエ])を全身に塗布するように指導した介入群(59人)と乾燥した局所のみワセリンを塗布した非介入群(59人)に割り付け、アトピー性皮膚炎の累積発症率を比較した。

 試験期間中は、倫理審査会の方針により、ワセリンは両群の乳児に処方された。介入群には、生後1週目から毎日の保湿剤の塗布をはじめ、32週にわたって毎日塗布を続けるよう指導を行い、日誌と処方した保湿剤の減少量から適切に塗布されているかを確認した。

 アウトカムは、生後32週目に参加者がどちらのグループに割り付けられたかを知らない皮膚科専門医が診断。アトピー性皮膚炎を、4週間以上続くかゆみや湿疹などの皮膚症状と定義し、評価した。

 主要評価項目であるアトピー性皮膚炎の累積発症率を示すカプランマイヤー曲線は図1の通り。32週間におけるアトピー性皮膚炎の発症者数は介入群が19人、非介入群28人となり、介入群が非介入群よりも有意に長い期間発症していないことが明らかになった(P=0.012)。また、Cox回帰分析でも、介入群で有意に発症率が低いことが示された(ハザード比は0.48[0.27~0.86:95%Cl])。

図1◎ アトピー性皮膚炎の累積発症率を示すカプランマイヤー曲線
(出典:Kenta Horimukai,et al.J Allergy Clin Immunol.2014;134:824-30.)

 大矢氏らは、副次評価項目として少量の採血量で抗体化の測定が可能となる「低侵襲性高感度マルチ抗原アレルギー診断チップ(DLCチップ)」を用いて、卵白とオボムコイドへの血清IgE抗体価を測定した(カットオフ値は0.34kU A/LのCAP-PEIA当量)。だが、介入群(48人)と非介入群(44人)における有意差は得られなかった。

 そこで、アトピー性皮膚炎もしくは湿疹を生じた患児43人と、湿疹はなくアトピー性皮膚炎を来していない患者49人において、卵白とオボムコイドの血清IgE抗体価を比較したところ、皮膚症状のある患者の大部分が有意に高い抗体価を示した(P=0.43)。これらの結果から、湿疹やアトピー性皮膚炎を発症した新生児では卵白抗原の感作が多いことが示された。

 この結果を受けて大矢氏らは論文で、「新生児において毎日の保湿剤の使用が32週までのアトピー性皮膚炎や湿疹発症のリスクを減らすことが示された。さらに、これら症状の発症を防ぐことが、アレルギー感作の有病率を減らす可能性がある」と述べている。

 記者会見で大矢氏は、これらの研究結果を報告し、「アトピー性皮膚炎の発症を防ぐため、1日1回以上、皮膚が乾燥したと感じる前に保湿剤を塗布する習慣をつけることが大切だろう。今回の保湿剤でなくてもワセリンでも同様な結果が出る可能性はある」と話した。だが、今回の研究結果だけではアトピー性皮膚炎の発症理由は説明できない。「アトピー性皮膚炎は様々な要因が影響して発症する疾患だ。保湿剤だけで皮膚のバリア機能を完璧に保つことはできない。今回の研究ではそれ以外の要因を検討したが、症例数が多くないこともあり、有意差が出たものがなかった」と解説している。

 同論文の原題は「Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis」。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌のウェブサイトから概要が閲覧できる。

この記事は、日経メディカルからの転載です。

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