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家庭の医学

外傷:四肢の外傷

肩関節脱臼

けんかんせつだっきゅう、Glenohumeral dislocation

小川 清久

どんな外傷か

 肩関節は、小さなお皿(肩甲骨の関節窩(か))の上に大きなボール(上腕骨頭(じょうわんこつとう):二の腕の上端)が載っているような格好をしているので、簡単に脱臼します。

 脱臼すると、若い人では関節包(関節を包む袋)が肩甲骨側からはがれたり破れ、年輩者では関節を包む筋肉が上腕骨頭に付いている部位(ここは腱板と呼ばれる)で切れたりします。脱臼に伴い肩・腕・手に行く神経が損なわれることもあり、加齢とともに損なわれる率が高くなります。また、上腕骨頭の外側や前方にある骨の突起(結節という)の骨折をしばしば伴います。

 上腕骨頭のずれる方向によって前方(ぜんぽう)脱臼、後方(こうほう)脱臼、下方(かほう)脱臼(垂直脱臼ともいう)に分けられ、前方脱臼が全体の95%以上を占め、後方脱臼と下方脱臼はまれです。

 なお、関節が完全に外れてしまう脱臼以外にも、一度外れても簡単にもどる亜脱臼(あだっきゅう)や数分間腕全体がしびれたようになるデッドアーム症候がありますが、本質的には脱臼と同じ損傷です。

原因は何か

 前方脱臼は、転んだ際に体を支えようとした腕が横後ろの方向や上に無理に動かされた時に起こります。あるいはスポーツ中に転んで肩の外側を強く打った時、腕を横後ろに持っていかれた時などにも生じます。

 後方脱臼は、転んだ際に体の前方に腕を突っ張った時や、肩の前方を強く打つと生じます。

 下方脱臼は、腕を横方向から上に無理に動かされると生じます。

症状の現れ方

 けがの直後に激しい肩の痛みがあり、脱臼の方向によって腕は特徴的な位置に固定され動かなくなります。前方脱臼では肘が体の前・横方向に離れ、後方脱臼では肘は体についたままですが、腕全体は内側にひねられています。下方脱臼では腕を横に挙げた状態で、下には下がりません。

 亜脱臼では、初めは前に述べたように腕が固定されますが、体を動かした時に肩がぐりっと動いて急に痛みが楽になり(自然に脱臼がもどる)、肩が動くようになります。

 デッドアーム症候では、数分間痛みで腕が動かないのですが、その後は徐々に動くようになります。いずれの場合も肩を動かした時の痛みが数日~1週間程度続きます。

検査と診断

 特徴的な腕の固定された位置と脱臼した上腕骨頭を触ることで診断が可能です。神経が損なわれているかどうかの検査も行います。

 受診する前にもどってしまった亜脱臼やデッドアーム症候の診断は、主に患者さんの話から推察できますので、医師にけがの状況や症状を詳しく話すことが必要です。

 基本的検査は、異なった2方向からのX線撮影です。必要に応じて他のX線撮影やCTを追加することもあります。亜脱臼やデッドアーム症候では、MRIを行うこともあります。

治療の方法

 脱臼をもどす(整復という)方法は多種ありますが、さまざまな危険があるため現在一気に整復する方法は行われず、ゆっくり時間をかけて整復します。

 ベッドの上に腹ばいになった患者さんの手首に重りを付けて引っ張る方法や、床の上にあお向けになった患者さんの腕を引っ張りながら徐々に上に挙げていく方法が代表的です。下方脱臼だけは整復方法が異なり、腕を最大に挙げた位置で上に引っ張ります。

 しかし、一部の患者さんはこれらの方法では整復できず、全身麻酔や手術が必要になることもあります。整復後は再びX線撮影し、伴っている骨折部分が大きくずれたままであれば手術を行います。

 その他の場合は、腕を三角巾などで3週間以上固定しますが、固定する腕の位置は脱臼の方向によって異なります。

 その後、徐々に肩の動きを回復させますが、脱臼を起こさせる方向の運動は6~8週間禁止されます。脱臼に伴い損なわれた関節包などが十分に修復されない場合は、容易に脱臼を繰り返す状態(反復性肩関節脱臼と呼ぶ)になり、手術以外に対処法がなくなります。

 脱臼してから2~3週間までは前述の方法で治療できますが、それ以上時間がたつと整復には手術が必要になります。脱臼してから整復までの時間が長くなればなるほど、治療の結果も悪くなります。

 また、後方脱臼は医療機関を訪れても最初は約60%が見逃されます。したがって、最初に訪れた医療機関で肩の痛みの原因に対する十分な説明がされず痛みが持続する場合は、セカンド・オピニオンを求めることをすすめます。

応急処置はどうするか

 時間がたつとはれのために整復が難しくなるので、急いで整形外科を受診してください。

 腕は最も痛みの少ない位置で、患者さん自身が支えるのがよいでしょう。

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