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外傷:胸部外傷

フレイルチェスト

フレイルチェスト、Flail chest

益子 邦洋

どんな外傷か

 多発肋骨骨折のうち、連続する3本以上の肋骨がおのおの2箇所以上で骨折した場合や、胸骨(きょうこつ)骨折に両側肋軟骨(ろくなんこつ)骨折を伴う場合には、この部分が胸郭全体との連続性を断たれて、正常の呼吸運動と逆の動き、すなわち吸気時に陥没して呼気(こき)時に突出するという奇異(きい)呼吸を示すようになります。これをフレイルチェストと呼びます(図34)。

 フレイルチェストは、胸部外傷のなかでも最も重症のもののひとつで、重い呼吸不全から死に至ることも決してまれではありません。呼吸不全の原因は、多発肋骨骨折に伴う胸壁内血腫(きょうへきないけっしゅ)や腫脹(しゅちょう)、多発肋骨骨折に起因する激しい疼痛のために換気量が減少すること、痰の吐き出しが困難になること、肺挫傷(はいざしょう)や肺裂傷(はいれっしょう)の合併などが主なものです。

原因は何か

 フレイルチェストは大きな外力が胸部に作用して発生するもので、交通外傷や高所からの墜落あるいは挟圧(きょうあつ)外傷(はさまれたことによる外傷)に伴ってみられます。

症状の現れ方

 胸部打撲(だぼく)後の胸痛、呼吸困難、血痰(けったん)、チアノーゼ(皮膚などが紫色になる)、皮下気腫(ひかきしゅ)などです。

 衣服を取り除いて呼吸運動を観察すると、奇異呼吸(シーソー呼吸)がみられるほか、損傷部に手を当てると、肋骨骨折に伴う軋轢音(あつれきおん)(骨がきしむ音)を感じます。

検査と診断

 診断は、特徴的な奇異呼吸運動から容易です。

 胸腔内の合併損傷を診断する目的で、胸部の視診、触診、聴診、打診を行ったのち、血液検査、胸部単純X線撮影、CT検査などが行われます。

治療の方法

 フレイルチェストの治療は、1956年にアベリーらによって開発された人工呼吸療法(内固定法)が今日でも広く行われています。気管挿管(きかんそうかん)または気管切開を行い、陽圧人工呼吸を2~3週間続けることにより、肋骨骨折部を内側から固定し、胸郭(きょうかく)の整復と骨癒合を達成するものです。

 この治療法では、長期の人工呼吸管理に伴う肺合併症が最大の問題です。このような観点から、人工呼吸器を使用せずにフレイルチェストの治療を行うことを目的として、外科的固定法を行う場合もあります。

応急処置はどうするか

 フレイルチェストは、前述したように胸部外傷のなかでも最も重症のもののひとつであり、救命救急センターや集中治療室(ICU)での専門的治療が必要です。

 本症が疑われたら、ただちに救急車を呼び、救急隊の応急処置を受けながらしかるべき施設へ搬送してもらわなければなりません。救急隊員が到着するまでに、図35に示す応急処置を行っておくとよいでしょう。

図34 フレイルチェスト
図35 フレイルチェストの応急処置

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