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外傷:胸部外傷

胸部打撲

きょうぶだぼく、Chest contusion

益子 邦洋

どんな外傷か

 胸部打撲とは、交通事故や高い所からの墜落事故など、鈍的(どんてき)な外力により胸壁を強打するもので、胸壁の骨折や創傷(そうしょう)が生じ、時には胸腔内の臓器損傷を伴うこともあるので、慎重に対処しなければならない損傷形態です。

 胸部打撲による損傷は、左右12対の肋骨(ろっこつ)、胸骨(きょうこつ)、左右の鎖骨(さこつ)や肩甲骨(けんこうこつ)、12個の胸椎(きょうつい)からなっている胸郭(きょうかく)の損傷と、胸腔内にある心臓、肺、気管・気管支、食道、大動脈や大静脈、横隔膜(おうかくまく)などの内臓損傷に大別できます(図30)。

原因は何か

 交通事故、労災事故、転落や転倒、スポーツ事故、高所からの墜落、暴行などにより発生します。

 とくに交通事故では、四輪車乗車中の正面衝突事故でみられるハンドル外傷、シートベルト外傷、エアバッグ外傷、ダッシュボード外傷や、バイク・自転車の転倒事故、歩行中に車にはねられる事故などがよく知られています。

症状の現れ方

 胸部打撲の程度の軽いものでは、打撲部の疼痛やはれ、あるいは皮下出血が現れる程度です。程度が激しい場合には、肋骨や胸骨の骨折を起こして疼痛はより激しくなって、呼吸運動に合わせて増強するようになり、呼吸困難も伴うようになります。

 さらに大きな外力が胸部に加わった場合には、単なる胸郭の損傷のみでなく、胸腔内臓器の損傷も伴うようになり、呼吸困難やチアノーゼ(皮膚などが紫色になる)とともにショック症状(脈拍が速い・血圧が下がる・体温が低下するなど)を示し、生命の危険は急激に増大します。

検査と診断

 胸部の視診、聴診、触診、打診により身体所見を把握し、血液・尿検査、心電図検査、胸部単純X線撮影、胸部CT検査などを行って診断を確定します。

治療の方法

 単なる胸部打撲は、安静を保ち、消炎鎮痛薬を内服して損傷部に冷湿布を貼ることにより、数日間で軽快します。これに対し、胸郭の骨折や胸腔内の臓器損傷を伴う場合には、あとで述べるそれぞれの損傷に応じた治療が必要となります。

応急処置はどうするか

 胸部打撲の程度は、極めて軽症のものから最重症で命に関わるものまで千差万別です。たとえ生命に関わる重度の損傷を伴っている場合であっても、体表面にはそれを示唆する症状をほとんど認めないことがよくあります。したがって、一般の人が胸部打撲の程度や内臓損傷の有無を適切に判断することは極めて困難です。

 胸部打撲を受けた患者さんが胸痛や呼吸困難を訴える場合には、ただちに119番通報をして迅速に救急隊を要請し、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。

図30 胸部の解部図

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