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家庭の医学

外傷:頸部外傷

四肢麻痺

ししまひ、Quadriplegia

朝妻 孝仁

どんな外傷か

 四肢の運動麻痺があれば、脳または脊髄(せきずい)(頸髄(けいずい))の損傷が疑われます。意識がはっきりしていて知覚障害を伴っていれば、頸髄損傷と診断されます。ここでは頸髄損傷(けいずいそんしょう)による四肢麻痺について述べます。

検査と診断

 ①神経学的検査

 まず呼吸や循環の状態をチェックしつつ神経学的な検査を行い、脊髄麻痺の高位(どの高さで麻痺が起こっているか)、麻痺の程度を診断します。すなわち意識レベル、瞳孔の大きさ、左右差、対光反射、四肢腱反射(ししけんはんしゃ)、四肢の筋力検査、知覚検査とともに、会陰部(えいんぶ)の知覚や肛括約筋(こうかつやくきん)の収縮の有無を検査します。

 損なわれた脊髄以下の運動や知覚がわずかでも残っていたり、会陰部の知覚や肛括約筋の収縮が残っている場合には完全麻痺ではなく、不全麻痺である可能性があります。これはその患者さんの回復の予測や治療方針を決めるうえで重要なポイントです。たとえば、四肢麻痺でもわずかに足の指が動いたり、足に知覚が残っている場合は、不全麻痺の可能性が高いといえます。

 ②画像検査

 頸椎の単純X線写真の撮影がまず基本です。脱臼(だっきゅう)や骨折が認められる場合もありますが、なかには骨折や脱臼がない場合もあります。その場合には脊髄や椎間板(ついかんばん)などの軟部組織をも映し出せるMRIを撮影することにより、頸髄損傷の原因を解明することができます。まれに外傷による椎間板ヘルニアが原因のこともあります。

治療の方法

 ①全身管理

 自律神経の異常による徐脈(じょみゃく)(脈拍が遅くなること)や低血圧に対しては循環の管理が、呼吸筋の麻痺に対しては気管内挿管(きかんないそうかん)(気管にチューブを入れること)や気管切開による呼吸管理が必要です。

 また、胃や腸の動きが悪くなり、麻痺性イレウス腸閉塞(ちょうへいそく))を生じたり、胃・十二指腸潰瘍を起こすことがあるので消化器の管理が、排尿障害に対しては尿道にカテーテルを留置するなどの尿路管理が必要です。

 ②初期治療

 前記の全身管理のほか、頸髄損傷に対しては頸椎損傷と同様にまず絶対安静を保つために、砂嚢(さのう)や装具による固定や牽引(けんいん)を行います。頸椎の脱臼やずれのある骨折に対しては、頭蓋骨にピンを刺し、牽引することにより整復を行います。不全麻痺で牽引療法によって脱臼が整復されない場合や、粉砕骨折などで骨片が脊髄を圧迫している場合は、緊急に手術が行われる場合があります。

 また、脊髄麻痺に対してステロイド剤(ソル・コーテフなど)の緊急大量療法、濃グリセリン・果糖(グリセオール)の静脈注射などの薬物療法を行うこともありますが、その有効性については意見の分かれるところです。

 ③合併症と予後

 頸髄損傷では、呼吸筋麻痺(こきゅうきんまひ)、尿路感染症、褥瘡(じょくそう)(床ずれ)が主な合併症です。受傷後24時間の時点で完全麻痺の状態であれば、回復は期待できないといわれています。

 ④本人、家族への説明

 突然の四肢麻痺に対する本人および家族の心理的動揺を考え、心理的援助も必要です。

 自立した日常生活が難しいと判断された場合は、家族などの介助が必要であることを告知します。

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