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外傷:頭部外傷

慢性硬膜下血腫

まんせいこうまくかけっしゅ、Chronic subdural hematoma

並木 淳

どんな外傷か

 頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜と脳の間に、徐々に血がたまって血腫になったものです(コラム頭部の解剖図)。

 中高齢者(おおむね50~60歳以上)に多い特徴があります。

原因は何か

 軽微な頭部打撲(だぼく)をきっかけにして、脳の表面(脳表)に微量の出血あるいは脳脊髄液(のうせきずいえき)がたまって、その反応でつくられる膜から少しずつ出血が繰り返され、血腫が大きくなると考えられています。きっかけになる頭部外傷がはっきりしないこともまれではありません。

症状の現れ方

 契機となる頭部外傷の直後は無症状か頭痛程度の症状しかないことが多く、このため、病院を受診しない人がほとんどです。このあと通常は3週間~数カ月かけて血腫がつくられて、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))、頭痛や吐き気・嘔吐が現れます。

 また、血腫による脳の圧迫症状として半身の麻痺(片麻痺(かたまひ))、言語障害などが初発症状のこともあります。

 軽度の意識障害として、元気がなかったり(自発性の低下)、ぼけ症状(認知症症状)がみられることもあります。血腫が増大していけば意識障害が進行して昏睡(こんすい)状態になり、さらに血腫による圧迫が脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(脳幹(のうかん))が侵され(呼吸障害など)、最終的には死に至ります。

検査と診断

 きっかけになる頭部外傷の直後では、頭部CTで異常が認められないことがほとんどです。症状が現れれば血腫によって脳が圧迫されているので、CTで診断されます。

 血腫はCTで白く映ります(高吸収域)。慢性の血腫では血液濃度が薄い場合があり、CTでは灰色(等吸収域)あるいは黒く(低吸収域)映ることもあります。また、慢性の血腫はMRIで特徴的な所見を示すので、頭部MRIも診断に有用です。

治療の方法

 血腫が少量で症状も軽微な場合は、自然吸収を期待して経過観察とすることもありますが、通常は局所麻酔下の手術が行われます。慢性の血腫はさらさらした液状のため、大きく頭蓋骨を開けなくても小さな孔(あな)から取り除けるので、穿頭血腫除去術(せんとうけっしゅじょきょじゅつ)あるいは穿頭血腫ドレナージ術が行われます。

 症状が重い(意識障害のある時など)場合は緊急手術、それ以外は症状に応じて通常は数日以内に手術が行われます。脳ヘルニアの症状が現れるほど進行している場合を除き、予後は良好で、ほとんどは社会復帰が可能ですが、軽い後遺症(片麻痺、言語障害や認知症症状など)が残る場合もあります。

 また、高齢者では術後の合併症に注意が必要です。

 経過が順調ならば手術直後から症状が改善し、1~2週間以内で退院できます。ただし、血腫の再発率は約10%とされ、再手術が必要になることがあります。

頭部の解剖図

 頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨(ずがいこつ)という入れ物に入っている状態といえます(図2)。頭蓋骨よりも外側を頭蓋外(ずがいがい)といい、頭部軟部組織がおおっています。頭蓋骨よりも内側を頭蓋内(ずがいない)といい、脳が髄膜(ずいまく)に包まれた状態で存在します。脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題になります。

 髄膜は外側から硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)の3層構造になっています。硬膜は頭蓋骨の内側にぴったりと張りついている、厚紙のようなしっかりした膜です。くも膜は薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのもので、はがすことはできません。くも膜よりも内側を、無色透明の脳脊髄液(のうせきずいえき)が満たしています。

並木淳

図2 頭部の解剖図

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