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家庭の医学

外傷:頭部外傷

急性硬膜外血腫

きゅうせいこうまくがいけっしゅ、Acute epidural hematoma

並木 淳

どんな外傷か

 頭蓋骨と、頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜の間に出血がたまって血腫になったものです(コラム頭部の解剖図)。

原因は何か

 多くの場合は、硬膜の表面に浮き出たように走っている硬膜動脈(こうまくどうみゃく)が、頭蓋骨骨折に伴って傷ついて出血し、硬膜と頭蓋骨の間にたまって硬膜外血腫になります。そのほか、出血源が硬膜の静脈(静脈洞(じょうみゃくどう))の場合もあります。

症状の現れ方

 血腫により脳が圧迫されて症状が現れます。頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))、最初は激しい頭痛、嘔吐が現れます。血腫が増大すれば意識障害を来し、さらに脳ヘルニアの状態にまで進行すると、深部にある生命維持中枢(脳幹(のうかん))が侵され(呼吸障害など)、最終的には死に至ります。

 血腫の増大による症状の進行は受傷直後のこともありますが、数時間たってから意識がなくなることも多く、注意が必要です。最近の統計では、重症の急性硬膜外血腫の24%で意識障害が遅れて現れています。意識障害出現までの時間はその79%が3時間以内でした。

検査と診断

 血腫は頭部CTで白く映ります(高吸収域)。血腫によって硬膜は頭蓋骨からはがれて内側に張り出すので、血腫は凸レンズ型になります。

治療の方法

 血腫の大きさと症状の程度によって、緊急に開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)が行われます。日本のガイドラインでは、血腫の厚さが1~2㎝以上を手術の目安にしています。

 症状が軽い頭痛や嘔吐だけで血腫が少量の場合は、入院経過観察、あるいは頭蓋内圧亢進に対して脳圧降下薬(グリセオール)の点滴注射が行われることもあります。少量の血腫は、数カ月以上を要することもありますが、自然吸収により消失します。

 急性硬膜外血腫単独で、脳の損傷(脳挫傷(のうざしょう)びまん性軸索損傷(せいじくさくそんしょう)など)を合併していなければ、血腫除去術で脳の圧迫を取り除くことにより、症状の回復が期待できます。ただし、血腫の増大が急速だったり、症状が進行してから発見された場合などで、脳ヘルニアが進行して脳幹の機能が失われた状態では(たとえば呼吸停止)、手術での危険が高く、血腫が取り除かれたとしても、意識障害の後遺症や死亡の危険があります。

 最近の統計では、昏睡(こんすい)状態の重症急性硬膜外血腫の死亡率は20%、社会復帰は62%と報告されています。

頭部の解剖図

 頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨(ずがいこつ)という入れ物に入っている状態といえます(図2)。頭蓋骨よりも外側を頭蓋外(ずがいがい)といい、頭部軟部組織がおおっています。頭蓋骨よりも内側を頭蓋内(ずがいない)といい、脳が髄膜(ずいまく)に包まれた状態で存在します。脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題になります。

 髄膜は外側から硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)の3層構造になっています。硬膜は頭蓋骨の内側にぴったりと張りついている、厚紙のようなしっかりした膜です。くも膜は薄く弱い膜で、ピンセットでつまむと破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのもので、はがすことはできません。くも膜よりも内側を、無色透明の脳脊髄液(のうせきずいえき)が満たしています。

並木淳

図2 頭部の解剖図

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