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感染症・食中毒など:細菌・ウイルスなどによる感染症/呼吸器

インフルエンザ脳症

インフルエンザのうしょう、Influenza-associated encephalopathy

森島 恒雄

どんな感染症か

 インフルエンザ脳症は、インフルエンザの感染に伴い急激に発症し、神経細胞など脳に障害をもたらし、時には全身の諸臓器も障害を受ける(多臓器不全(たぞうきふぜん))、重い疾患です。インフルエンザの感染は引き金となりますが、脳の中ではウイルスは増えず、感染によって産生されたサイトカインなどによって、脳障害や多臓器不全が起きると考えられます。

 1995年ころから報告があり、2000年ころから一般に知られるようになりました。欧米では少なく、東アジアに多いと考えられています。日本の年間発症数は100~500例で、病因別では最も多い疾患です。好発年齢は1~5歳、ただし、2009~10年に流行した新型インフルエンザでは、5~10歳が中心でした。

症状の現れ方

 インフルエンザの発熱に伴い、数時間から1日以内に、①けいれん、②意味不明な言動、③意識障害などの神経症状が現れます(表1)。その後、次第に意識障害が進行していきます。この時、けいれんが繰り返し起こるタイプもあります。

 症状が進行すると、多くの臓器の障害が出てきます。腎障害(血尿)、胃腸障害(ひどい下痢)、肝機能障害、凝固障害(ぎょうこしょうがい)(出血傾向)などです。人工呼吸器が必要になることもあります。ただ、これらは重い例で、意味不明の言動やけいれんがあるだけで意識障害は軽いことも、かなりあります。

検査と診断

 まず、インフルエンザ感染の診断が重要です。その後、

 1.意識障害があること。Japan coma scale(JCS)で20程度

 2.頭部CT検査で、びまん性低吸収域(せいていきゅうしゅういき)・局所性低吸収域(きょくしょせいていきゅうしゅういき)・脳幹浮腫(のうかんふしゅ)・皮髄境界(ひずいきょうかい)不鮮明など、脳障害を示す所見があること

 が、確定診断となります。その他、

 3.MRI検査や脳波検査など

 によってさらに詳しく検査ができます。

 また、

 4.尿・血液検査など

 によって、脳症の重さを推定することも可能です。

治療の方法

 2005年、厚生労働省研究班により、「インフルエンザ脳症ガイドライン」ができました。さらに2009年その「改訂版」が出され、全国に広く普及しています。基本的には、このガイドラインに基づいて治療が開始されます。

 その概要は、

 ①まず全身状態を改善すること、とくに酸素投与や、脱水、ショック状態の改善、循環動態の管理などをしっかり行います。

 ②次に、けいれんを起こしている子が多いので、これをしっかり止めることが大事です。

 この①、②の段階で、必要ならば人工呼吸管理をします。

 ③脳症の治療としては、(a)抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)、(b)ステロイドパルス療法(ステロイド大量療法)、(c)ガンマグロブリン大量療法などを行い、必要なら(d)脳低温療法(34℃前後)、(e)脳圧を下げる治療、(f)血液浄化療法(交換輸血)などを選択します。

 改訂版では、そのほか最新の治療が示されています。

 「インフルエンザ脳症の手引き」や「インフルエンザ脳症ガイドライン改訂版」は、厚生労働省や岡山大学小児科のホームページでご覧いただけます。

予後について

 10年前(2000年ころ)は、約30%の子どもが死亡し、25%に後遺症が残りました。ガイドラインの普及後は、死亡は10%未満(8%)、後遺症は25%と改善しつつあります。神経後遺症を少しでも改善するためには、早期のリハビリテーションの開始が重要です。

表1 インフルエンザ脳症にみられる症状

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