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腎臓と尿路の病気:腎臓の病気

急性糸球体腎炎

きゅうせいしきゅうたいじんえん、Acute glomerulonephritis

鈴木 重伸

どんな病気か

 腎臓の本態は糸球体とそれに続く尿細管(にょうさいかん)です(図2)。糸球体は球状の毛細血管のかたまりで、流れ込んできた血液を濾過します。その濾液(原尿)が細長い尿細管に入り、必要なものは再吸収されて血液に戻り、残りを尿として排泄することで血液を正常化しています。

 急性糸球体腎炎は、何らかの感染症が原因で、糸球体に炎症を起こした状態です。感染が治癒すると腎炎も治ります。

 血液を濾過する糸球体は、いわば網目の細かいざるのようなものです。ここに炎症が生じると網目が目詰まりし、血液の濾過ができなくなり、尿の産生が減少(乏尿(ぼうにょう))します。すると、体内に水分や塩分が過剰になるため血圧が高くなり、浮腫(ふしゅ)(むくみ)が出現します。老廃物も排泄されないため、体内に蓄積します。それを反映して、血液中の尿素窒素やクレアチニンが次第に高くなります。この状態が腎不全(じんふぜん)です。

 また、傷ついた糸球体から、普通は尿に出ないはずの蛋白や赤血球・白血球がもれ出て、蛋白尿や血尿になります。

原因は何か

 咽頭炎(いんとうえん)・扁桃炎(へんとうえん)といった上気道炎や皮膚化膿症を起こすA群β(ベータ)溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因の90%以上を占め、これを溶連菌感染後急性糸球体腎炎といいます。その他にも、いろいろな細菌、真菌、ウイルスが原因になりますが、むしろまれです。

 溶連菌の感染が起こると、生体は防御するための免疫反応として、溶連菌成分に対する抗体を産生します。その抗体と溶連菌成分が結合した複合物(抗原抗体複合物)が、血流にのって腎の糸球体に運ばれて網目にひっかかり、炎症が引き起こされます。そこでは、もう1つの免疫成分である補体(ほたい)が活性化され、炎症にさらに火がつきます。その結果、糸球体の目詰まりや破壊が生じて、急性糸球体腎炎になります。

 溶連菌の初感染を起こす4~12歳の小児に多い疾患です。以前は頻度の高い腎炎で、集団発生もありました。しかし、衛生環境がよくなり、溶連菌感染に対して早期に抗生剤が投与されるため、最近では非常に減少し軽症化しています。

症状の現れ方

 多くは咽頭炎扁桃炎などの上気道炎から、1~2週間(平均10日)の潜伏期をおいて、突然に血尿・蛋白尿、乏尿、浮腫、高血圧などの症状で発症します。目で見てわかる血尿(肉眼的血尿)は30%ですが、検査でわかる血尿は全例にみられます。むくみは顔面、とくにまぶたのむくみに起床時に気づくことがよくあります。血圧は高血圧(収縮期血圧140㎜Hg、拡張期血圧90㎜Hg)に達しなくても、ほとんどが通常の血圧より上昇します。極期(症状のピーク)を過ぎて再び尿が出始めると、これらの症状は急速に改善します。

検査と診断

 溶連菌の感染があり、2週間の潜伏期の後に血尿が出現し、さらに、補体の低下が認められれば急性糸球体腎炎と診断してほぼ間違いありません。(詳細はコラム)

治療の方法

 自然に軽快する疾患ですので、治療は症状の軽減と合併症の予防、腎臓の保護が基本です。保温と安静を守り、腎臓に流れる血流を減らさないようにします。次に食事療法ですが、塩分と蛋白質は腎臓に負担をかけるので制限します。制限の程度は、腎障害の程度によります。水分も過剰でむくんでいますので、1日の水分量を尿量+800ml(汗や呼吸で排泄される水分)以下にします。摂取量より排泄量が多くなるようバランスをとらないと、改善しないからです。尿が極端に少ない場合は、カリウム含有量の多い生野菜、果物、芋類も制限が必要になります。利尿薬で尿量の確保に努めますが、反応が悪いと一時的に血液透析(けつえきとうせき)が必要になることもあります。

 腎炎の発症時に溶連菌の残存は少ないのですが、残っていた場合に経過を悪くする可能性と、他の人への感染予防の目的で抗生剤を投与します。高血圧に対しては各種の降圧薬が用いられます。

 一般に、1~2週間で回復に向かうと尿量が増加し、症状は急速に改善します。小児の予後は極めて良好で、ほとんどが治癒します。成人では30~50%に、何らかの異常が遷延(せんえん)する(長引く)といわれています。その場合は、慎重な経過観察が必要です。女性の場合、完全に治癒しても1年間は妊娠を避けたほうがよいとされています。

病気に気づいたらどうする

 自覚症状として多いものは、血尿、むくみ、血圧上昇、尿量減少などです。これらは他の経過のよくない腎炎や膠原病(こうげんびょう)、腫瘍性(しゅようせい)疾患、遺伝性の疾患、心臓の疾患などさまざまな病気で起こります。異常に気づいた場合は、小児科もしくは内科を受診してください。

図2 腎臓の本体である糸球体と尿細管の模式図
急性糸球体腎炎の診断

 まず、原因となった溶連菌(ようれんきん)の感染があったことを証明する必要があります。咽頭(いんとう)・扁桃(へんとう)の細菌培養検査で、溶連菌の有無をみます。また、血液検査で溶連菌に対する抗体(ASO、ASKなど)が増加していないか検査します。腎炎が発症した時点では、溶連菌の感染から1~2週間が過ぎていますので、通常、咽頭炎・扁桃炎は治っています。そこから、溶連菌が検出されることは40%以下ですが、抗体検査でおおかた感染のあったことがわかります。

 尿検査では、血尿・蛋白(たんぱく)尿のほか、白血球や細胞性円柱といって、腎臓に炎症や組織障害の生じていることを示す所見がみられます。また、糸球体の炎症の場で補体(ほたい)が消費されるため、血液の補体価が低下します。さらに、尿に排泄されるべきものが排泄されないため、それらが血液中に溜まってきます。その指標が、尿素窒素やクレアチニンの上昇として検出されます。これが腎機能低下、腎不全(じんふぜん)です。

 溶連菌の先行感染(病気に先駆けて起こった感染症)が証明され、2週間の潜伏期の後に血尿やほかの症状が出現し、さらに、補体の低下が確認されれば急性糸球体腎炎と診断してほぼ間違いありません。

 ここで重要なことは、溶連菌感染から急性糸球体腎炎を起こすのに十分量の抗体が産生されるまで、1~2週間かかることです。これが潜伏期です。かぜ(ウイルス性の上気道炎)をひいた1~3日後に血尿が出た場合は、急性糸球体腎炎ではありません。この場合は、慢性糸球体腎炎がかぜを契機に発症したものと考えられます。急性糸球体腎炎は自然に改善する経過の良好な疾患ですが、慢性糸球体腎炎は違いますので混同してはいけません。

 必ずしも必要ではありませんが、診断に疑問が残る場合や重篤な場合は、診断を確実にしたり追加の治療法を検討する目的で、腎生検(背中から腎臓まで針を刺し、腎組織を採る検査)をします。採取した腎組織を顕微鏡で検査すると、確実な診断とともに、組織障害の程度がより詳細にわかります。

鈴木重伸

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