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肝臓・胆嚢・膵臓の病気:肝臓の病気/その他

体質性黄疸

たいしつせいおうだん、Congenital jaundice

西原 利治

どんな病気か

 血液の赤血球には酸素を運ぶ役割をするヘモグロビンがたくさん含まれています。このヘモグロビンが分解される過程でつくられるのが、ビリルビンという物質です。通常1日に約250㎎つくられ、主に肝臓で修飾を受けて、胆道を通って便といっしょに体外に排泄されます。便の黄色はこのビリルビンの色です。ビリルビンが体内で異常に増えた場合、しばしば皮膚の色がビリルビンにより黄色になります。これを黄疸と呼びます。

 したがって、赤血球や肝細胞が急に壊された時、胆道ががんなどで閉塞した時などに黄疸はよく現れます。しかし、このような病気がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認めることがあります。

 このような人では、生まれながらビリルビンが体から出ていきにくい遺伝的体質があり、このような人にみられる黄疸を体質性黄疸と呼びます。

分類について

 古くから体質性黄疸は4つに分類されてきました。ひとつの指標は発症年齢で、新生児期から黄疸を来すのがクリグラー・ナジャール症候群です。これに対してほかの3つの症候群では、思春期以降の発症になります。

 もうひとつの指標は体内で増えるビリルビンの種類です。ビリルビンには、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビンと、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビンとがあります。クリグラー・ナジャール症候群と同様に間接型ビリルビンが優位となり、成人になって発症する体質性黄疸はジルベール症候群と呼ばれます。

 これとは反対に、直接型ビリルビンが優位となる体質性黄疸には、肝臓が色素の沈着により特徴的な黒色を示すデュビン・ジョンソン症候群と、色素沈着のないローター症候群とがあり、いずれも発症は思春期以降です。

症状の現れ方、治療の方法

 ジルベール症候群は、成人にみられる間接型ビリルビン優位で軽度の黄疸を示す疾患群で、肝細胞による間接型ビリルビンの取り込みからグルクロン酸抱合(ほうごう)を行うまでのいずれかの部位の障害が原因となります(コラム)。

 黄疸の程度は軽度にとどまり、常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)の遺伝形式を示す頻度が高いのですが、原因が単一でないため遺伝形式もさまざまです。黄疸は軽度(3㎎/dlまで)にとどまり、日常生活に何ら支障はないので、治療はとくに行いません。

 クリグラー・ナジャール症候群では、細胞毒性の強い間接型ビリルビンを細胞毒性の少ない直接型ビリルビンに変換する唯一の酵素の活性が低下しているため、間接型優位の高ビリルビン血症を示すことが特徴です。

 この病気には、前記酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから遷延(せんえん)する(長引く)核黄疸(かくおうだん)を示す生命予後の不良な型と、酵素の活性は正常の10%未満を示すものの問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない型があります。

 いずれの型も家族性に発症し、遺伝形式は常染色体劣性(れっせい)とされていますが、酵素の活性が正常の10%未満を示すもののなかには、常染色体優性遺伝の形式をとるものもあります。

 活性がゼロの場合には高度の新生児黄疸を来しやすいので特別の注意が必要です。高度の新生児黄疸を来した場合には、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させ排泄させる光療法が行われますが、皮膚が厚くなる幼児期以降には効果が薄く、幼児期に死亡します。

 両型の鑑別には、フェノバルビタールという薬剤を服薬させ、前記酵素誘導の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。ですから、美容的な要請で黄疸を軽くしたい場合にはフェノバルビタールの内服が有用ですが、原則はあくまで無治療です。

 デュビン・ジョンソン症候群とローター症候群には、黄疸以外にはほとんど症状はありません。検査所見としては、直接型優位の高ビリルビン血症を示しますが、10㎎/dl以下にとどまります。予後は大変良好で、とくに治療の必要はありません。

ビリルビン代謝と黄疸(おうだん)

 脂溶性で細胞毒性が強い間接型ビリルビンは肝細胞に取り込まれ、滑面小胞体(かつめんしょうほうたい)にあるウリジンジホスフェート・グルクロン酸転移酵素によって、グルクロン酸抱合(ほうごう)を受けて直接型ビリルビン(水溶性で細胞毒性は弱い)となり、胆管や毛細血管に排泄されます。

 肝細胞による間接型ビリルビンの取り込みからグルクロン酸抱合を行うまでの過程のどこかに軽度の障害があり、間接型ビリルビンを十分に直接型ビリルビンに変換できない病気を、まとめてジルベール症候群と呼んでいます。

 これに対して、常染色体劣性(じょうせんしょくたいれっせい)の遺伝形式をとるクリグラー・ナジャール症候群では、第1番染色体上にあるウリジンジホスフェート・グルクロン酸転移酵素(UDPGT‐1)に変異があり、その活性が低下するため、間接型ビリルビンを十分に直接型ビリルビンに変換できないのです。

 ですから、この酵素活性がゼロになるような変異をもつ場合には死に至ることもあります。

 グルクロン酸抱合後のビリルビンを毛細胆管に送り出す過程にはMRP2という物質が重要なはたらきをしています。このMRP2のはたらきに異常があり、肝臓が肉眼的に黒緑がかった色調を示するのがデュビン・ジョンソン症候群で、常染色体劣性の遺伝形式を示し、思春期以降に発見されることの多い病気です。

 ローター症候群でも同様にグルクロン酸抱合後のビリルビンを毛細胆管に送り出す過程に障害があり、常染色体劣性の遺伝形式をとりますが、詳細についてはまだ解明されていません。

西原利治

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