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食道・胃・腸・肛門の病気:小腸・大腸の病気

大腸ポリープ

だいちょうポリープ、Colonic polyp

飯田 三雄

どんな病気か

 大腸ポリープとは、大腸の粘膜の一部がいぼ状に盛り上がったもの(隆起)で、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに大きく分けられます(表5)。

 腫瘍性ポリープの大部分は良性で、腺腫(せんしゅ)と呼ばれますが、大きさが増すに従って部分的に小さながんを伴っていることが多くなり、それは腺腫内がんと呼ばれています。すなわち、腺腫の一部は放っておくと、がんになることがあります。腺腫が前がん病変とも呼ばれるのはこのためです。

 非腫瘍性ポリープには、ポイツ・イェガース型ポリープ、小児に多い若年性ポリープ、高齢者に多い過形成性(かけいせいせい)ポリープ(または化生(かせい)性ポリープとも呼ばれる)、腸炎後にみられる炎症性ポリープなどが含まれますが、いずれも良性で、がんとは無関係です。

原因は何か

 がんと同様、腺腫は生活習慣などの環境要因と遺伝要因が絡み合って起こると考えられています。

 前者では食事が最も重要であり、高脂肪・低繊維食が危険因子とされています。すなわち、高脂肪食によって腸内の発がん物質が増加する一方で、低残渣(ざんさ)食(繊維成分を抑えた食事)は糞便の排出を遅らせ、その結果、発がん物質が腸内に長時間たまり、大腸腺腫(だいちょうせんしゅ)やがんが発生しやすくなると考えられています。

症状の現れ方

 小さなポリープは無症状のものがほとんどですが、ポリープが大きくなると血便が起こります。ポリープの大きさや存在部位によって、便に鮮血(赤い血液)が付着する場合と、肉眼的には異常を認めず、便潜血(べんせんけつ)テスト陽性で初めて血便に気づく場合があります。とくに、非腫瘍性の若年性ポリープは出血しやすいのが特徴です。

検査と診断

 血便を自覚した患者さん、あるいは無症状でも検診の目的で受けた便潜血テストが陽性の患者さんに対しては、大腸内視鏡検査または注腸造影X線検査が行われます。どちらの方法でも診断は可能ですが、最近は、ポリープ発見時ただちに組織検査(鉗子(かんし)を使った生検法あるいは高周波発生装置を使ったポリープ切除術・粘膜切除術)が可能である大腸内視鏡検査のほうが優先される傾向にあります(図21)。

 ポリープの性状診断は、顕微鏡を使った病理組織学的検査で確定されます。最近では、鉗子生検診断を待つまでもなく、70倍の拡大機能をもつ内視鏡(拡大内視鏡検査)や、特定波長の光で観察する内視鏡(NBI内視鏡検査)によって、ポリープ表面の細かい模様を観察するだけで即座に性状診断が行えるようになってきました。

治療の方法

 腫瘍性ポリープである腺腫は、前がん病変と考えられるので、内視鏡を使って切除します。有茎性(ゆうけいせい)(粘膜面から茎をもって発育している形態)であれば内視鏡的ポリペクトミー(ポリープ切除術)、無茎性であれば内視鏡的粘膜切除術(EMR、コラム)が行われます。これらの方法によってポリープ全体を組織学的に検査することが可能になり、診断と治療の両方を兼ねることができます。

 また、腺腫のなかでも、カーペット状の形態をした大きな無茎隆起は結節集簇様病変(けっせつしゅうぞくようびょうへん)と呼ばれ、分割切除によるEMRが行われます。このような大きな病変を一括して切除するために、内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD、コラム)や、腹腔鏡を用いた手術が行われることもあります。

 近年、ポリープと形が異なり、平坦なあるいは、わずかに陥凹した腺腫(平坦・陥凹型(かんおうがた)腺腫)が数多く発見されています。この病変はEMRによって治療されますが、ポリープの形をした腺腫よりも一般的に悪性度が高いため、これを見落とさないように注意することが大切です。

 非腫瘍性ポリープは通常がん化することはないので、積極的に切除する必要はありません。しかし、有茎性で大きなポリープは出血や腸重積を起こす可能性があるので、内視鏡的ポリペクトミーを行います。

病気に気づいたらどうする

 血便に気づいたり、検診で便潜血テスト陽性を指摘されたら、できるだけ早く消化器内科を受診し、大腸の検査を受ける必要があります。

 日常生活における注意点としては、高脂肪・低繊維食を避け、便通を整えるとともに適度な運動を心がけることが大切です。

表5 大腸ポリープ・ポリポーシスの分類
図21 大腸腺腫(大腸内視鏡像)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)および内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

 1980年代に登場した内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、診断のための切除から根治のための切除へと、内視鏡治療の分野に大きな変革をもたらしました(図24)。より安全で簡便なさまざまなEMR手技が次々と報告されるようになり、当初は1㎝以下の小さな病変のみが対象でしたが、徐々に大きな病変に対しても施行されるようになってきました。しかし、技術的な限界から1㎝を超える病変を確実に一括切除することは困難で、分割切除が許容されていました。ところが、分割切除後に約12%の局所再発があることがわかってきました。

 1998年に、IT(絶縁チップ)ナイフを用いた内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)が臨床応用され、一括切除率が飛躍的に向上したことから、早期胃がんの約半分は内視鏡での切除(=根治)が可能となりました。2006年4月の診療報酬改定によって、「胃の早期悪性腫瘍(しゅよう)に対する内視鏡的粘膜下層剥離術」が保険適応になり、ESDが社会的にも認知されるようになりました。

 内視鏡的切除は、リンパ節郭清(かくせい)が不可能であるため、根治できる病変はリンパ節転移がないことが外科手術と大きく異なるところです。しかし、残念ながら、術前に早期胃がんのリンパ節転移の有無を正確に評価することはできません。

 臨床においては、切除後に深達度(がんの深さ)や脈管侵襲(しんしゅう)(リンパ管や静脈へのがんの浸潤(しんじゅん))の有無など、リンパ節転移に関係している因子を病理組織学的に評価することによって、「リンパ節転移の可能性が極めて低いがん」=「リンパ節郭清の必要がない局所切除で根治可能ながん」であることを確認しなくてはなりません。根治という観点から、“切除ができる”と“根治できる”を明確に理解したうえで治療方法を決定する必要があります。

 ESDを行うにあたって、術中の偶発症(穿孔(せんこう)・出血)の頻度はEMRと比較すると高率で、知識と対策も含めた内視鏡技術の習得が不可欠となります。ESDは技術的な煩雑さから完成された手技とはいいがたく、今後もより安全・簡便な手技への進化が望まれる技術です。

 内視鏡的切除といえども、最終目標は根治であることを念頭に置いた術前検査と治療方針の決定、切除後の適切な判断が必要となります。医療者も医療を受ける側も簡単・安易に考えるべきではないことを理解するべきです。したがって、「胃癌治療ガイドライン」に基づいた胃がんの進行度による治療適応の説明がなされ、同意を得る手続き(インフォームド・コンセント)の過程のなかで治療方針が選択されていくべきものです。

 胃がんと告知された場合、以下の項目をしっかり確認しておく必要があります。

 □術前の診断が早期胃がん、特に粘膜に限局したがんである可能性が高いか?

 □生検による組織型が分化型がんであるか?

 □病変の大きさは?

 □病変の部位は?

 □治療方法はEMRなのか? ESDなのか? 腹腔鏡手術なのか? 開腹手術なのか?

 □内視鏡的切除であれば一括切除できるのか?

 □治療のリスクは?(偶発症とその対策)

 □内視鏡的切除後の病理組織結果は?(深達度、組織型、大きさ、脈管侵襲の有無、潰瘍の有無、切除断端など)

 □最終的根治度は?(治癒切除、非治癒切除、判定不能)

 □その後の治療方針は?(外科手術が必要なのか)

 

後藤田卓志

図24 内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)

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