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眼の病気:ぶどう膜の病気

脈絡膜腫瘍

みゃくらくまくしゅよう、Choroidal tumor

尾崎 志郎

どんな病気か

 眼にも腫瘍ができますが、眼の腫瘍がよくできる部位がぶどう膜といわれる部分です。俗に茶目といわれる部分を虹彩(こうさい)と呼びます。この虹彩の裏側には毛様体(もうようたい)と呼ばれる部分があり、さらにこれが眼の後ろまでつながり、脈絡膜と呼ばれる組織になります。これら虹彩、毛様体、脈絡膜を総称してぶどう膜と呼びます。

 この部位の特徴は、色素が多く、血管が豊富にあることです。そのため、ぶどう膜には原発性の腫瘍がよくでき、他の部位の腫瘍からの転移も起こるのです。とくに脈絡膜は、ぶどう膜のなかでも最も腫瘍が生じる場所で、多くの眼腫瘍がこの部位にできます。

 この脈絡膜腫瘍の代表として、原発性腫瘍では悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)や血管腫(けっかんしゅ)があります。転移性腫瘍では肺がん乳がんからの転移が多いのが特徴です(図30)。

症状の現れ方

 腫瘍が生じる部位により異なります。飛蚊症(ひぶんしょう)(コラム)が初期の症状である場合もありますが、転移性の腫瘍の場合、多くは網膜のいちばん感度のよい黄斑部(おうはんぶ)の近くに腫瘍が生じ、腫瘍周囲に網膜剥離(もうまくはくり)を伴うこともあるために、それによるゆがみや視力低下が生じてきます。原発性の場合も、腫瘍が生じる眼のなかの位置により、症状の発現に差があります。

検査と診断

 診断は、眼底検査による腫瘍の存在を確認することが第一歩です。原発性の代表的脈絡膜腫瘍である悪性黒色腫では、茶色~黒褐色の隆起性病変として認められます。また、蛍光(けいこう)眼底造影検査、MRI検査、放射性元素を用いる核医学検査なども診断に有用です。

 転移性のものでは、多くの場合、眼の病変の診断の前に肺がん乳がんなどの診断がついており、その経過中に症状が現れ、眼底検査で診断されます。なかには、眼の腫瘍の発見を機に原発巣が見つかる場合もあります。

治療の方法

 治療方法は、原発性か転移性かにより異なります。

 原発性の代表である悪性黒色腫の治療として、主に次のような方法があります。①眼球摘出、②腫瘍局所切除、③放射線治療です。これらの治療方法の選択は、腫瘍の大きさや、その広がり方などを考慮して決定されます。それ以外にも、抗がん薬の眼動脈への注入療法、温熱療法などがあります。残念ながら悪性黒色腫の特徴として、全身への転移が問題となり、予後は大変不良です。

 転移性の場合、腫瘍の性状は原発巣の腫瘍と同じです。治療の方法は、多くの場合、放射線治療と化学療法が中心となります。この場合も予後は大変不良です。

病気に気づいたらどうする

 脈絡膜腫瘍の抱える最大の問題は、眼球の維持と、生命の予後です。悪性黒色腫は眼科腫瘍としては多いものですが、多くの眼科医にとっては、頻繁に遭遇する腫瘍ではないので、眼腫瘍専門の眼科医に相談されることをすすめます。

 転移性の場合は、原発巣を治療している医師と、放射線医ならびに眼科医の間での連携が大切になります。これらの連携がとられるように主治医に相談し、治療することが重要です。

図30 肺がんからの転移性脈絡膜腫瘍
飛蚊症(ひぶんしょう)

 飛蚊症はよくある症状で、心配になって眼科を受診する人もたくさんいます。しかし、大半はとくに病気とは関係がないものです。

 普通の飛蚊症は、硝子体(しょうしたい)のにごりが網膜に投影されて見えるもので、大人では多かれ少なかれ誰でもあるといっていいものです。硝子体は透明な組織とされていますが、完全に透明というわけではないからです。年齢とともに、そして近視が強いほど、硝子体には繊維の塊のようなにごりが出やすくなります(図48‐a)。

 飛蚊症は、晴れた空のように明るい背景、白っぽい背景でよく見えます。また、後部硝子体剥離(はくり)が起こると、視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の部分からはがれた厚くてリング状の後部硝子体皮質(ワイスリング)が飛蚊症の原因になります(図48‐b)。

 この場合、輪状ないし楕円状の濃い影が視野の中心あたりを縦横に動きまわるので相当気になるようですが、これもとくに病気とはみなされません。「何とかしてほしい」という人もいますが、「どうにもなりません」といって納得してもらうしかありません。そのうち、あまり気にならなくなるものです。

 飛蚊症を訴えて受診する人の大半が病的ではない、というのは眼科医が共通して抱いている認識です。しかし、時に飛蚊症は重大な病気のサインになります。

 網膜剥離では、飛蚊症が前駆症状になることがめずらしくありません。硝子体の牽引(けんいん)に伴って網膜に裂孔(れっこう)ができる時、必ず網膜の血管は破綻(はたん)して出血します。破綻する血管の太さや性質で量は違いますが、多かれ少なかれ出血が起こり、眼球の内部、硝子体腔へと拡散します。その出血が飛蚊症として自覚されるわけです(図48‐c)。この場合の飛蚊症は、しばしば「墨を流したような」と形容されます。

 また網膜剥離では、飛蚊症と相前後して光視症(こうししょう)(ぴかぴか光って見える、光が走るなどの症状)を自覚することもあります。光視症は、網膜が強く引っ張られるために起こる異常放電が原因と考えられています。顔面の打撲などで「眼から火が出る」というのがありますが、それも同じ理屈です。

 墨を流したような飛蚊症、光視症を自覚したら、ただごとではないと思ったほうがよいでしょう。早急に眼科医に受診する必要があります。

河野眞一郎

図48 飛蚊症の原因

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