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脳・神経・筋の病気:筋肉の病気

重症筋無力症

じゅうしょうきんむりょくしょう、Myasthenia gravis

石原 傳幸

どんな病気か

 重症筋無力症は、易(い)疲労性(疲労しやすい)と日内変動(朝は症状が軽く、夕方に重くなる)を中核症状とする病気で、自己免疫疾患の一種です。自己免疫疾患とは、自分の体の一部に対する抗体を作り出して、その組織を破壊する疾患群を指します。

 重症筋無力症の場合は、自分の神経筋接合部(運動終板(しゅうばん))にあるアセチルコリン受容体抗体(コラム)を作り出すことにより、神経筋の連絡を阻害します。ここで伝達を担っている物質はアセチルコリンです。もしアセチルコリンが分解されなければ、その作用は増すと考えられます。

 アセチルコリンを分解しているのはコリンエステラーゼという物質です。そこで、コリンエステラーゼのはたらきを阻害する薬剤が投与されて、薬効が確認されたのが重症筋無力症の治療の第一歩でした。

 その後、自己免疫疾患であることが判明して以来、副腎皮質ステロイド薬のような免疫抑制薬の投与や、血液からの抗体除去治療が行われるようになりました。

症状の現れ方

 症状は、物を噛むだけでも疲れてしまうという明らかな易疲労です。朝は軽く、夕方に増悪するという日内変動を示します。複視といって、物が二重に見えたり、まぶたが下がって(眼瞼下垂(がんけんかすい))眠そうな顔つきになります。

 重症の場合は呼吸ができなくなり、人工呼吸器を必要とすることもあります。

検査と診断

 テンシロンテストという、作用時間の短い抗コリンエステラーゼ薬を静脈注射すると劇的に改善するので、診断に有用です。血液検査で、抗アセチルコリン受容体抗体値を測定します。筋電図検査での運動神経連続刺激も診断には有用です。胸腺腫瘍(きょうせんしゅよう)を伴うことも多いので、胸腺腫瘍の有無を検査する必要もあります。

治療の方法

 コリンエステラーゼの活性を抑え、神経末端から放出されたアセチルコリンの作用を増強させる治療を行います。作用時間の長い薬剤が使われます。

 免疫抑制薬として副腎皮質ステロイド薬やアザチオプリンなども投与されます。抗アセチルコリン受容体抗体を取り除くために、血漿(けっしょう)交換療法も有効です。

 胸腺を摘出する手術も考えます(コラム)。長期的には手術療法の有効性が明らかなので、手術がすすめられます。

 クリーゼといって、治療中に症状が急激に悪化することがあります。これには筋無力症自体が重症化する場合と、抗コリンエステラーゼ薬の過剰投与で症状が悪化する場合の2つの可能性があります。前述のテンシロンテストにより、2つのどちらであるかを判定します。

 つまり、作用時間が短い抗コリンエステラーゼ薬を投与すると、重症筋無力症が悪化している場合は症状が改善しますし、薬剤治療の過剰で症状が悪化している場合は一時的に症状が悪化します。

 生活上の注意としては、過労やストレスのかかるような生活は避けるように注意します。

アセチルコリン受容体

 筋肉は、神経末端から放出されるアセチルコリンがある程度の量以上になると収縮します。この時に重要な役割を果たすのがアセチルコリン受容体です。この受容体は、筋細胞表面にある終板(しゅうばん)というところにあります。終板は溝が多数存在する構造となっています。この溝の壁に存在するのが、この受容体です。

 神経細胞が興奮すると、神経末端からアセチルコリンが放出されます。放出されたアセチルコリンは、終板に存在するアセチルコリン受容体にくっつきます。ある程度の量に達すると、終板に電位が発生します。この電位は、筋肉細胞の横管を通じて細胞全体に伝達されます。すると、横管の近くに存在する筋小胞体が興奮し、なかに蓄えていたカルシウム・イオンを放出して筋細胞が収縮を開始します。

 重症筋無力症は、自分のアセチルコリン受容体に対する抗体を作って、受容体を壊してしまうのが原因で発症します。

石原傳幸

胸腺(きょうせん)摘出手術

 重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)の患者さんの10~20%には胸腺腫瘍(きょうせんしゅよう)が合併することがよく知られ、また胸腺過形成が80%の患者さんにみられます。逆に、胸腺腫瘍の30%には重症筋無力症が合併します。

 この病気は、アセチルコリン受容体に対する自己抗体が原因になるので、免疫反応の抗原供給、抗体産生の場所である胸腺を除去することで重症筋無力症を治療しようするのが胸腺摘出手術です。

 眼筋のみに症状がとどまる場合は、手術をしないのが一般的です。手術後、症状が一時的に悪くなることも知られていますが、長期成績ではよい成績が報告されています。

 発症から手術までの期間が短いほうが成績がよいとされ、できれば2年以内に手術をしたほうがよいといわれています。とはいえ、2年以上経過した患者さんには手術を考慮しないというわけではありません。

 術後も抗体産生場所がゼロとはならないので、免疫抑制薬の投与が行われます。

石原傳幸

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