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家庭の医学

循環器の病気:不整脈(脈の乱れる病気)

房室ブロック

ぼうしつブロック、Atrioventricular block (AV block)

平尾 見三

どんな病気か

 心臓の刺激伝導システムのどこかに異常が生じると、心臓の内部で伝導時間の延長や伝導の途絶が起こります。これをブロックといいます。この病気では心房からの刺激が心室に伝わる過程に異常があるために、心室の興奮が通常より遅れたり、欠落したりしてしまい(これを心房‐心室間の伝導ブロック、房室ブロックという)、脈が遅くなります。

原因は何か

 急に起こる房室ブロックの原因として、心筋梗塞(しんきんこうそく)、異型狭心症(いけいきょうしんしょう)、心筋炎(しんきんえん)などの心臓病、薬剤性(β(ベータ)遮断薬など)、高カリウム血症、過度の迷走神経亢進状態などがあります。慢性あるいは再発性の房室ブロックの原因としては、冠動脈疾患、心筋症心サルコイドーシス、膠原病(こうげんびょう)、先天性ブロックなどが知られています。

症状の現れ方

 ブロックは起こり方によって、持続性のものと時々現れるもの(一過性、間欠性)があります。一過性、間欠性の場合には房室ブロックが現れた時にのみ徐脈(じょみゃく)になります。持続性房室ブロックでは、補充収縮(後述)の出現回数の程度により症状もさまざまですが、徐脈の持続により心不全(息切れ、浮腫など)に至ることもあります。

検査と診断

 心電図の波形から3つに分けられます(図23‐C、D、E)。心房→心室の伝導時間が病的に長い第Ⅰ度ブロック、心房→心室への刺激の一部が心室に伝わらない第Ⅱ度ブロック、心房→心室への伝導が完全になくなってまったく心室に伝わらない第Ⅲ度ブロックです。第Ⅰ度ブロックでは徐脈にはなりませんが、第Ⅱ度・第Ⅲ度ブロックでは脈が遅くなり予備の刺激中枢から発生する刺激により心臓が興奮します。これを補充調律といいます。

 一過性、間欠性ブロックの診断には、長時間の心電図記録(ホルター心電図検査・植込型ループレコーダー)が必要になります。心臓電気生理学的検査では、刺激伝導システム内のどこで房室ブロックを起こしているかがわかり、重症度の判定に有用です(コラム)。

治療の方法

 薬物・電解質異常・虚血(きょけつ)などの原因の明らかなものはそれを取り除きます。アダムス・ストークス症候群(後述)などによる緊急時には、一時的に心臓を体外から刺激する(ペーシングする)方法が確実です。静脈から電極カテーテルを右心室に入れて、1分間に60回以上刺激します。β(ベータ)刺激薬やアトロピンの投与はペーシング実施まで行える方法です。

 一般的には、第Ⅰ度ブロックは治療不要です。第Ⅱ度・第Ⅲ度ブロックで脳の虚血症状があれば、脈拍数を増やす治療が必要です。徐脈が続く場合には、恒久的にペースメーカーを植え込む必要があります(コラム)。

病気に気づいたらどうする

 高血圧や頻脈性(ひんみゃくせい)不整脈の治療のために房室ブロックを来す可能性のある薬剤を内服している場合には、薬剤内服法について主治医に至急指示をあおぐ必要があります。また、ペースメーカー治療などについては、循環器専門医の診察を受けることが必要です。

図23 種々の心電図の波形
心臓電気生理学的検査

 心腔内心電図(しんくうないしんでんず)

 心臓の電気的興奮を体の表面に置いた電極から記録したものが、(体表)心電図です。心電図は循環器疾患の診断には大変有用ですが、不整脈の詳細な診断には少し大ざっぱなところもあります。

 心臓の内側に2つの小さな電極を直接接触させると、その2つの電極の間にある心房(または心室)の電気的興奮が直接記録できます。それを心腔内心電図といいます。

 電気刺激

 心腔内心電図を記録できる電極に外部から微弱な電流を流すと、心腔内のその場所を興奮させる(電気刺激する)ことが可能です。太い静脈や動脈を経由して先端に電極のついたカテーテルを心臓の特定の場所に置いた状態で、いろいろなタイミングで電気刺激を加えたり、電気的興奮を記録することにより、徐脈(じょみゃく)の診断が可能です。また、心臓の壁の内に興奮の波がグルグルと同じところを回る回路をもつ頻脈(ひんみゃく)(リエトリー性頻脈という)は、この電気刺激によって誘発することができるので、頻脈の確定診断も可能です。

 このように、心腔内心電図を記録しながら電気刺激を加えることによって、不整脈の診断、評価をする検査を心臓電気生理学的検査といいます。

平尾見三

ペースメーカー

 ペースメーカーは、電池・心拍の感知部品・電気刺激生成部品からなる本体と、心臓と本体を結びつける電線部分(リード)とから構成されます。徐脈が現れた時のみ心臓を刺激することによって心拍数を適正化し、高度徐脈による症状の出現を予防します。

 適応(選択)

 ペースメーカー植え込みの医学的適応決定に際しては、症状の強さおよび徐脈との因果関係を考慮します。

 植え込みの適応については、2001年に日本循環器学会が作成したガイドラインのクラスⅠ‥「有益であるという根拠があり、一般に同意されている」を、引用します。

 ・洞不全(どうふぜん)症候群‥脳虚血(のうきょけつ)や心不全症状があり、それが洞機能低下などによることが確認された場合

 ・房室(ぼうしつ)ブロック‥徐脈(じょみゃく)による明らかな症状を来す第Ⅱ度、第Ⅲ度房室ブロック

 このほかに、徐脈性心房細動(しんぼうさいどう)、2枝および3枝ブロック、過敏性頸動脈洞(けいどうみゃくどう)症候群・神経調節性失神に対してもペースメーカー植え込みの適応となる場合があります。

 種類

 心臓のどこを刺激するかによって、すなわちペーシング用リードを心臓のどこに入れるか(右心房、右心室、右心房と右心室、冠静脈洞)によってペースメーカーの種類が異なります。

 また、ペースメーカーからの刺激が出始める設定最低心拍数を60/分などに固定するタイプや、人の活動を感知して、体の動きに応じて刺激心拍設定数が自動的に上昇するようなレート応答型のタイプもあります。

 方法

 X線装置が備わった手術室(あるいは心臓カテーテル検査室)において、鎖骨の下方にある静脈にリードを挿入します。先端部を右心房や右心室の壁に留置固定し、リードの他の端を本体に接続し、本体を胸壁の皮下に作成したポケット部に収めて終了です。

 植え込み後

 植え込んだ後は、6~12カ月の間隔で外来でペースメーカーの機能に不調がないか、電池の残量は十分かなどについてチェックします。電池の寿命が尽きかけたら入院のうえ、ペースメーカー本体のみ交換を行います。

平尾見三

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