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循環器の病気:先天性の心臓の病気

心房中隔欠損症

しんぼうちゅうかくけっそんしょう、Atrial septal defect

里見 元義

どんな病気か

 心臓には右心房(うしんぼう)、右心室(うしんしつ)、左心房(さしんぼう)、左心室(さしんしつ)という4つの部屋があります。本症は、右心房と左心房の間を隔てている心房中隔という壁に生まれつき孔(あな)が開いている病気です(図13)。

原因は何か

 胎児期の初めに心臓ができる時、心房中隔は心房の上下の壁から発育してきて、生まれた時には孔は閉じているのが普通ですが、これが閉鎖しないままの状態がこの病気です。

症状の現れ方

 普通、10代では無症状です。しかし、手術をしないでそのまま年齢を重ねると20代後半~30代にかけて症状が現れてきます。

 最初の症状は、動いたあとの息切れや疲れやすさなどで、そのうちに心房細動(しんぼうさいどう)などの不整脈や、むくみ(浮腫)や動悸(どうき)などの症状が次第に強くなってきます。

検査と診断

 聴診器で聴診するだけでもわかることもありますが、まだ無症状の時期に健診などで早期に発見するには心エコー検査が極めて有力です。断層心エコーで心房中隔を示す箇所に断裂像が認められます。これが欠損孔を意味します。カラードプラー法を併用すると、この欠損孔をとおって左心房から右心房へと血流が短絡する様子が観察されます。

 学校健診などでは、心電図の不完全右脚ブロックの所見と聴診所見を併せて本疾患が疑われる人を絞り込み、心エコー検査で確定診断をします。

治療の方法

 手術による治療法とカテーテル治療法があります。手術では人工心肺を用いて開心術を行い、直視下に孔を縫って閉鎖します。

 カテーテル治療(カテーテルを用いた閉鎖術)とは大腿(もも)の血管から心房まで閉鎖器具を装着したカテーテル(細いチューブ)を入れ、そのカテーテルを右心房から心房中隔欠損の孔をへて左心房にまでとおし、最初に左心房のなかで円盤を広げ、次にカテーテルを引き抜いて右心房で2個目の円盤を広げ、2つの円盤で心房中隔をはさむようにして器具を固定することで孔を閉じる方法です。うまく留置できたあとは閉鎖器具からカテーテルを切り離して大腿部から抜き、止血して終了です。この方法では胸に手術創はつかないのですが、心臓の中に留置した器具の長期予後についてはいまだ明らかではありません。

病気に気づいたらどうする

 本症が診断された場合には、信頼できる循環器の専門医に相談することです。心房中隔欠損症でも乳児期に見つかった孔で非常に小さい場合には、2歳までに自然に閉じることもあります。しかし、直径8㎜以上の孔は普通、自然には閉じません。心臓の負担の程度を踏まえたうえで、手術またはカテーテル治療を行って閉じることがすすめられます。

関連項目

 カテーテルによる治療(コラム)

図13 心房中隔欠損
先天性心臓病のカテーテルによる治療

 先天性心臓病を、できれば手術せずに治したいと思うのは患者さん本人のみならず、親、医療従事者の願いでもありましょう。それが可能になったのは、約20年前からで、以来さまざまなカテーテルや治療材料が開発され、今日を迎えています。

 以下に主なものについて述べます。

 ①肺動脈弁狭窄症(はいどうみゃくべんきょうさくしょう)

 肺動脈弁狭窄症に対する外科的治療は、カテーテル治療に取って代わられ、今日では手術はほとんど行われなくなっています。

 ②肺動脈末梢狭窄症(はいどうみゃくまっしょうきょうさくしょう)

 肺動脈末梢狭窄症には、肺動脈が先天的に狭い場合や手術後の癒着によるものなどがあります。治療は、カテーテルにつけたバルーンで拡大したり、ステントという金属の金網状の支えをカテーテルで留置したりします。カテーテル治療ができなければ、再手術がなされることもあります。

 ③大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)

 以前は外科的弁切開術や弁置換術が行われましたが、最近ではカテーテルによるバルーン拡大術を行うことが増えてきました。しかし、バルーン拡大術は一時的には有効ですが、一生続くものではありません。筆者は、まずカテーテル治療を行い、後年、必要に応じて弁置換術ないし自己肺動脈弁の移植術(ロス手術)をすすめています。

 ④大動脈縮窄症(だいどうみゃくしゅくさくしょう)

 手術未施行の本症に対する治療方針は、施設により異なります。手術を行う施設とカテーテル治療を行う施設とがあります。筆者は、狭窄が強い場合には手術をすすめています。

 手術を行ったあとに再び狭くなることがありますが、そのような場合にはバルーン形成術が行われます。またステントで拡大することもあります。

 ⑤動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)

 動脈管の径が2㎜以下の小さな動脈管に対しては、コイルを用いた動脈管閉鎖術が行われます。2㎜以上の動脈管はアンプラッツァー閉鎖栓で閉じます。

 新生児や乳児期早期に症状があったり、よほど大きな動脈管でない限り、カテーテル治療が可能です。

 カテーテル治療には、短期間の入院ですむ、手術創がつかないという利点があります。

 ⑥心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)

 カテーテルによる心房中隔欠損症の治療は、笠を右心房(うしんぼう)と左心房(さしんぼう)の両方でそれぞれ広げて、その2つの笠で欠損孔をはさむ方式、すなわちアンプラッツァー閉鎖栓と呼ばれる方法が行われています。

 ほかにも世界各国で実際に使用されている閉鎖栓がありますが、日本で使用できる閉鎖栓はアンプラッツァー閉鎖栓のみです。

 この閉鎖栓による治療は、心房中隔欠損のなかで、辺縁の中隔がない欠損を除いて、二次孔欠損のほとんどの場合で可能といえます。手術を選択する患者さんの数は激減しているのが現状です。

 手術に対する最も大きな懸念は、人工心肺に関係する危険と、人工心肺が成長発達に与える影響への懸念です。手術に伴う死亡率は1%以下であるとはいえ、依然として0%ではありません。

 手術とカテーテル治療を比較して、合併症はカテーテル治療のほうが7%で手術の24%に比べ低く、重大な合併症もカテーテル治療では1.6%で、手術の5.4%に比べ低かったという報告があります。手術とカテーテル治療の利点と欠点を主治医とよく話し合って治療法を決めるのがよいと思います。

中西敏雄

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