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家庭の医学

うつなど、心の病気:生理的な要因による行動障害

性機能障害

せいきのうしょうがい、Psychosexual dysfunction

阿部 輝夫

 性に関する種々の障害のことです。泌尿器科、婦人科、心療内科などがこの問題に対応しています。

勃起障害(ぼっきしょうがい)

 勃起力(硬さ)と持続力に障害がある状態です。原因は、心因性のほかに血管性、神経性、内分泌性の勃起障害があり、さらに薬物、アルコール、たばこなどによる外因性勃起障害もみられます。

 心因性のなかで多いのは、「今夜はうまくいくだろうか」という予期不安です。失敗が繰り返されることで、性交場面になるとこの不安が毎回同じように出現し、条件反射的に勃起を損なってしまうタイプです。

 治療法には、大きく分けて①心理療法、②行動療法、③薬物療法、④外科的療法があります。

性欲低下障害(せいよくていかしょうがい)

 性行動に対する、興味と行為の減退がみられる障害です。原因は、過労、ストレスなどの慢性疲労状態や、無意識的な性への葛藤、異性敵視などがあげられます。男性ホルモン低下が原因の場合もあります。

 性欲が低下していると、男性ならたいてい勃起障害を併発しています。治療には時間がかかります。性的空想や感覚集中訓練法、不安を徐々に減らすための脱感作(だつかんさ)療法を用いたり、抗うつ薬を併用することもあります。まず、マスターベーションができるようになることを目標にして治療を始めます。

性嫌悪障害(せいけんおしょうがい)

 性的雰囲気になるのを嫌ったり、性的接触を極端に嫌悪し回避します。女性の場合、パートナー間での仲のよし悪しは半々ですが、男性では大半が夫婦仲がよいにもかかわらず、セックスレスの状態になっています。

 最近急増している男性の性嫌悪症は、ある時からパートナーとだけは性交できないのですが、マスターベーションはできているので、恐怖症に類似しています。

 原因は、愛情の質の変化にあるようです。つまり、従来の男女の愛から家族愛や肉親愛に変化したため、パートナーが性の対象でなくなってしまい、性的状況になると近親姦恐怖が生じて、生理的に拒否してしまうのです。

 治療法は性欲低下障害と同じです。治療は成功率が10~30%と困難です。

早漏(そうろう)

 最近の定義では、「射精のコントロールが苦手で、本人が望む以前に射精が起こる場合」とされています。重症度はさまざまで、挿入前に射精してしまうものから、2~3回のピストン運動で射精してしまうものまであります。

 深層原因が何であれ、性感覚の過敏症という直接原因を変化させなければ、治ることはありえません。

 治療には、ストップ・スタート法が有用です。このほかにスクウィーズ法、コンドーム・マス法などがあります。いずれも射精直前の独特の感覚を察知して刺激を止め、射精反射をコントロールするコツをつかむことにあります。重症の患者さんには薬物療法も併用します。

腟内射精障害(ちつないしゃせいしょうがい)

 マスターベーションでは射精できるのに、腟内ではできない障害をいいます。

 原因は、マスターベーションをシーツに擦りつけて行うなど、手指を使わない方法によるものがいちばん多くみられます。その他の原因を頻度の多い順にあげると、強すぎるグリップ、側に誰かいるとできない、包茎術(ほうけいじゅつ)後、ピストン運動でない方法、などがあげられます。

 治療法には、長年にわたる固定した方法によってしか作動しなくなってしまった射精反射を、パートナーとの性交で機能できるように考案された「コンドーム・マス法」があります。つまり、「コンドームの内側に潤滑剤をたらして、腟内のヌルヌルした状態に似せて、軟らかいグリップで、ピストン運動で射精に至る」方法です。

性交疼痛症(せいこうとうつうしょう)

 女性で性交に関連した性器の痛みがある症状です。原因は、過去の性的トラウマや解剖学的誤解、妊娠・中絶・出産に関わる外傷体験、ある時の疼痛体験などがあげられます。

 治療にあたっては、初めに婦人科的な障害の有無を確認しておくべきです。器質的疾患がなければ、心理的外傷の受容と軽減のための心理療法は欠かせず、性教育が必要になることもあります。

 まず、手鏡による性器の自己観察から始めます。そのあとに行動療法としての腟への挿入練習に入り、抵抗のないものから始めて徐々に太さを増して、最後はノン・エレクト法(非勃起状態のペニスの挿入)で性器の接触と浅い挿入練習に移ります。

 本症の痛みは心因痛なので、表面麻酔薬は使うべきではありません。

腟(ちつ)けいれん

 指の挿入はできるのに、ペニスを挿入しようとすると「はね返される」「ポンと出てしまう」という状態です。腟入口部のれん縮が認められることもあります。

 性交疼痛症を合併していることが多いのですが、性交に対して不安や恐怖を自覚していないにもかかわらず、条件反射的に腟口を閉じてしまう場合もあります。

 治療法は性交疼痛症と同じですが、「咳をしながらの挿入訓練(指を挿入して咳をして腟口が締まり、そしてゆるむ時のタイミングを体得する)」を併用します。

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